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杉並という都会の迷路を,BMWがネズミのように走る

2000年07月12日 | 日々のアブク
 大都会の住宅事情について,蛇足めいたことを少々。

 先日,東京都杉並区をめぐる与太話をウダウダと開陳したが,あのような個人的感想は,私が杉並という土地を「川」を基準に眺めたことに強く影響されている。これが,井の頭通り,方南通り,五日市街道,青梅街道,人見街道,環七,環八など「街道」を基準にして杉並という土地を眺めたのであれば(司馬遼太郎かいな),それはそれでまた違った光景として映じ,違った感想を持ったと思う。

 例えば,JR阿佐ヶ谷駅から杉並区役所へと続く「中杉通り」のケヤキ並木,あれなどは実に見事としか言いようがない。あのような道のある街に暮らし,その並木の下を日々歩くといった喜びは何物にも代え難いものだろう。一部の偏狭な環境保護団体が好んで使用する「コリドー」なんて歯の浮くような横文字コトバは,まさしくああいう場所にこそ使われるべきではないか?

 区内のあちこちの幹線道路をクルマで縦横に走っていると,まるで「オノボリさん」のようにさまざまな発見があった。おや,かつての名門校のナレノハテ(?)都立西高がこんなところにある。竹下景子で有名な淑女の館(古い!)東ン女などがある。その昔の山の手・下町ゴミ戦争のこれもまたナレノハテ,杉並清掃工場のでっかい煙突がデデーンとある。さらにまた,おお,こちらにもデデーンと,リッショーコーセーカイのダイセードーなんてぇのもある。いやいや,車窓に次々に展開する風景群を眺めているとまったく飽きることがない。

 ファミレス関係では「ジョナサン」が至る所にある。関川夏央大兄が御贔屓の「ロイヤルホスト」もあちこちにある。逆に「ガスト」や「デニーズ」や「カーサ」などは少なく,『山田うどん』なんぞはどこにも見当たらない。杉並というチューサン階級住宅地を舞台としたファミレス業界の姑息な戦略構造が垣間見られるようでなかなか面白い。

 一方,主要街道からひとたび住宅街の奥深くに入り込むと,居住地域内部の道路網はそれこそメチャクチャの極みである。自然発生的,多様性に富んだ,人間味のある,などと形容すれば聞こえはいいが,チューサン階級(しつこい!)を基本としつつも,その上層サイドと下層サイドとが,おのがじし,積み重なるように折り重なるように,あわよくば他人を払いのけようとするかのように,この地域の土地土地をくまなく占拠していった結果の,これまたナレノハテでありましょう。「高級」という言葉を冠するには少々語弊があるとしても,一応は「歴史ある」「由緒ある」住宅街といってよいのだろう。それなりに立派な門構えの家がちらほら散見される。しかし,いかんせん単位当たりの土地面積が狭い。それ以上に道路の幅員が狭~い!

 個々の住宅のガレージを拝見すると,あるいは狭苦しい町中の道を走っているクルマを見ると,ガイシャがかなり多いことに驚く(もっとも私のホームタウン,神奈川県西部地方のイナカ町と比較しての話であるが)。なかでも,別項でキーワードとして示したようにBMWがやたらと目に付く。メルセデス・ベンツもそれなりに少なくはない。しかし,ベンツのSクラスなど,隘路と行き止まりと一方通行とが満載のこの迷宮住宅都市の内部をどのようにして上手にくぐり抜けてゆくのだろうかねぇ。A地点からB地点へと移動する場合,どれだけの順列組み合わせが発生するのだろうか。考えただけでアタマが痛くなる。

 実際のところ,BMWやベンツSクラスよりも軽自動車なんぞの方がよっぽどお似合いの町並みではある。住民の大部分も内心では恐らくそのことを重々承知しているのだろうが,いかんせん,もう誰も引き返せない。多分はそれが文化の爛熟ってもんなんだろう(といって,ベンツのAクラスなどが大増殖したら,それはそれでまた気持ちが悪いけどね)。

 かくして,お洒落なBMWがまるで『都会のネズミ』のように,あるいは『Game Rally X』(by NAMCO)のように,迷路のなかをチョコマカと走りまわる。ま,一種の変態願望ですかな?
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