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灼熱の地アリゾナ州スコッツデールから「寒い」親父ギャグを連発し、少しでも地球温暖化現象に歯止めをかけようと日々奮闘中。

蒲田駅の足踏みおじさん

2006-09-22 00:35:48 | 思い出話
もう20年も前の話。

その日、仕事が終わって同期の奥田と夕飯を一緒に食おうということで蒲田の駅で降りた。構内は、電車の音やアナウンスやラッシュアワーのざわめきやらがごちゃ混ぜになって、かすかにエコーがかかったいかにも駅らしい騒音に満ちている。

だが、この日は何かが少しだけ違っていた。いつもの喧騒の奥の方に、まるで場末の歓楽街から聞こえる有線放送の演歌のような音がまじっている。それも、ぴんから兄弟のようなだみ声なのだ。ホームの出口に向かうほど、その違和感に満ちた声が大きくなる。

どう考えても誰かが大声で歌っているとしか考えられない。何の曲だか分からないけれど、とにかく駅中に響くような大声でがなりたてているのだ。演歌のような気もするが、浪曲にも聞こえる。

一刻も早くこの場違いで異質な音源をこの眼で確かめたくて、ついつい早足になる。音のする方に、まるで街灯の光に吸い寄せられる蛾のように、ふらふらと足が向いてしまう。そしてついに人ごみの向こうに、かすかに上下する誰かの頭が見え始めた。リズムを取りながら足踏みをしているようにも見える。だみ声は、確かにそのあたりから聞こえてくる。

おー、い、いたっ!通路の端で、拍子を取りながら足踏みをしているおじさんを発見。宙の一点を見すえて大声で歌っている。完全に自分の世界に浸りきり、駅の構内中に響く自分の声にうっとりしているようにも見える(ちょっとヤバイ?)。

身なりは普通のサラリーマン。40代前半だろうか。ちょっと疲れたスーツに、色あせたネクタイをしている。

通り過ぎる人々は、この異様な状況を気にとめるふうでもない。そして、駅員も困った顔さえ見せていないのだ。いったいどうしてこんな公の場で、こんなことが許されるのだろうか。そして、この人はなぜラッシュアワーに、わざわざ蒲田駅の構内で歌っているのだろうか。そんなことを考えているうちに、人の波に押されて外にでる。

外はすっかり暗くなり、駅前の勇ましいネオンや電光掲示板が夜空を明るく照らしている。後に分かったのだが、彼は蒲田駅の名物男で、もう長いことああして歌っているとのこと。

足踏みおじさんの姿とだみ声が、20年経った今でも強烈に脳裏に焼きついて離れない。

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4 コメント

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Unknown (ハイソな街蒲田の旧住人)
2006-09-22 19:12:23
場所を間違えているのでは??旧蒲田住人として憤りを感じます!!

蒲田はこんな変なところ・・・・でしたね。このオヤジが歌う歌は、何を歌っても同じようにしか聞こえなかった。笑 そう言えば変なおばあちゃんも駅前にいたよね。毎晩アパートに帰る途中、必ずポン引きの兄ちゃんに『社長、カワイイ子いますよ。寄っていって下さい。』うるさいっちゅうねん!!一度兄ちゃんに『毎晩通っているだろ、いい加減顔を覚えろ!』と言ったら、『店に来てくれたら、憶えますよ!!』う~~兄ちゃんに座布団一枚!!!





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Unknown (管理人)
2006-09-23 08:03:58
蒲田は永遠に不滅です。
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20年も前と言えば (ポン太)
2006-09-23 11:47:49
 まっとさん、20年前といえば、ポン太は羽田ではなくて成田空港に転勤してましたが、大学卒業して、まずは羽田空港に勤務していました。会社の寮が東糀谷にありましてね。蒲田はよく出かけましたよ。遅くまで飲んで終電間に合わず、蒲田から東糀谷まで線路の上を歩いて帰った事もありましたっけ。その名物おじさんの噂聞いたことがあるように思います。20年よりもまだずっと昔の話になりますけどね。妙なところで繋がりますね、まっとさんとポン太は・・・・
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あっという間の20年 (まっと)
2006-09-24 01:27:35
ポン太さん、コメントありがとうございました。

時の経つのは早いもので、20年なんて本当に

あっと言う間ですよね。

なにか、共通の話題があると楽しいですよね。

これからも宜しくお願いします。
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