東日本外来小児科学研究会

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第11回東日本外来小児科学研究会(平成14年10月20日(日):東京コンファレンスセンター

2002-10-31 15:34:47 | 研究会集会
第11回東日本外来小児科学研究会および第1回日本外来小児科学会アドボカシー委員会主催シンポジウム(平成14年10月20日(日):東京コンファレンスセンター

プログラム

8:30 受付開始

9:00 1部 一般演題 1演題につき質疑応答を含めて12分 座長:宝樹真理(医 東京都渋谷区)

1)広野優子 ER・テレフォン・クリニック(他 千葉県船橋市)
「医師と患者にとって望ましい時間外対応システム」~電話診療アシスタントの導入とその成果~

医療を受ける側のニーズに適った救急医療体制を考える手がかりとして「電話診療アシスタント」を導入した小児科医院の例を報告した。その結果、臨時休診の多い月で65%、通常では90%強が即日の診療を伴わずに問題を解決でき、24時間の小児医療に対するニーズは「受診」だけでなく「経過の共有」にもあること、電話という診療以外の手段も有効であることなどが分かった。質の高い電話対応を導入することで、親は不安や疑問を分かち合い、問題解決の選択肢を、「受診」だけから「待つ」ことや「様子を見る」ことへと増やすことができる。これは親の自立と治療への主体的な参加を促し、こどもへのケアの質も高めると考えられる。一方、医師は経過を共有することで診療の振り返りができ、過剰な負担を負わずにかかりつけ医としての身近な存在をアピールできると言える。

2)松永貞一 松緑会永寿堂医院 (医 東京都葛飾区)
    「小学校における校医の責務と権限の問題点」

私が校医を勤めるある公立小学校では、都職員、区職員、人材派遣会社職員の3種類の雇用形態の教職員が勤務している。しかし、校長と学校医にはこのうち都職員に対してのみ直接の健康管理上の権限が認められているだけで、 その他の職員に対しては権限が無く校医による積極的健康管理は困難な状況にある。この現状を明らかにするため、都道府県、県庁所在都市、都下教育委員会にアンケート調査を私的に行った。都合54.77%の教育委員会から何等かの解答を得た。この調査から、小学校の健康管理体制は自治体毎に大きな差異があることがわかった。また、日本の小学校における健康管理体制の現状にはまだまだ改善する余地が多々あると感じられた。今
後、産業医の手法や考え方なども勘案し、小学校の健康管理体制の改善に向けて努力すべきであると考える。【参考文献】松永貞一;日児誌105巻131~134,2001

3)内海裕美   吉村小児科 (医 東京都文京区)
 「絵本の中に描かれている子どもから学ぶ発達心理臨床」

少子化の時代に育った子どもたちが親になっている。子どもがわからない大人が増えている。正常の発達の過程ですら正常か異常か、問題なのか問題でないのか悩みの種になっている。絵本には子どもたちの発達の様子(仕草、気持ち、表情、反応など)が非常に細やかにしかも的確に描かれている作品が多い。子どもにかかわる人(保護者だけでなく小児科医もふくめて)の子ども理解に非常に有用だと考えている。わたしは子育て支援の一環として絵本の読み聞かせやブックトークを続けてきた。絵本の中に描かれている子どもたちからどのように子どもの発達を理解していくか、それをどう親に伝えるか、さらにそれを子育ての現場で、さらに育児支援にどのように活かせるかを臨床上の経験も交えて発表した。

4)原 朋那   はらこどもクリニック (医 埼玉県所沢市)
 「クリニックでは麻疹ワクチン接種をいつ受けているか-10年間の経験から」

小児科医が最も強力に薦めてきた筈である、麻疹ワクチン接種の効果を接種を受けた子どもの数、月齢、月別の数などから検討してみた。1995年から2001年までの自施設の内容をみると、周辺の医療機関の増加に伴い経年的に接種を受ける子どもの数は減少してきていたが、’01年_施設を移転し、予防接種専用の場を確保したこともあって増加していた。ポリオ、BCGが集団で行われる時期には麻疹の接種者が減少している。この数年は、インフルエンザの接種が増加して、自施設での予防接種を行った数は著増しているが、その期間は麻疹の接種を受ける子どもの数は減少していた。接種を受けた月齢は誕生月までに接種を受けていたのは8.5%が39.2%へ15ヶ月までに受けた例が26.4%から71%へ18ヶ月までが52.8%が83.5%_ヘ、2歳までが75%が90%へと接種を受ける月齢が早くなっていた。接種を受ける月齢が早くなっていることは運動の効果は出ていると判断した。

5)峯 真人   峯小児科 (医 埼玉県岩槻市)
 「重症麻疹全国調査報告、日本小児科医会の調査から」

6)草刈 章   くさかり小児科 (医 埼玉県所沢市)
 「電子カルテ導入の課題」

ここ数年のハード、ソフトの進歩によって、電子カルテの導入は現実味のある課題となり、平成12年12月、ある情報処理エンジニアと電子カルテ導入の支援について契約した。各種ソフトを比較検討するなかで、操作性、拡張性、セキュリティ、カスタマイズの自由度、ORCAとの接続などについて優れている鎌倉市佐藤病院小児科医、高橋 究 氏の作成した電子カルテソフト「WINE」を導入することにした。平成13年1月から同ソフトを当院の診療事情に合致するようにカスタマイズし、10月から試験運用を開始した。導入には1年以上の準備期間、専門家のサポート体制、ハードの調達と環境設定、事務室の改装、従業員の教育などを必要とした。また費用はソフト代、サポート料、ハードの調達など300万円以上の費用を必要とした。

10:15-10:25 休憩

10:25-10:55 日本外来小児科学会電子カルテ検討会の報告 座長:五十嵐正紘 (医 東京都練馬区)

1)WS「使い勝手の良い電子カルテをみんなで作りませんか」のアンケート結果
 清水 健   しみず小児科 (医 奈良県天理市)

電子カルテ使用者と未使用分けてアンケートを行なった。未使用者の導入時の問題は、入力の問題、トラブル時の対応、電子カルテの将来性、今までのデーターはどうする、費用の問題、などがあった。しかし、電子カルテを導入して良かったと、ほとんどの使用者が答えており、解決できることが多いと思われた。使用者の電子カルテの利点は、いつでもどこでもカルテが見られる、検索が優れている、トラブルが減った、カルテの検索や保存問題、処方が楽などがあった。電子カルテ使用上我慢できないこととして、速度、レセプト機能、小児科対応でない事、真正性の問題等があった。価格、サポートは現状で概ね問題なしと考えられ、電子カルテの機能はカスタマイズを希望する人が多かった。予防接種、健診も別画面が必要と思われた。これらを参考にして電子カルテ検討会で新しい電子カルテを作る予定である。

2)外来小児科が電子カルテに求めるもの
 片岡 正    かたおか小児科クリニック (医 神奈川県川崎市)

2001年4月より外来小児科学会電子カルテ検討会(五十嵐正紘会長)で「小児科外来で使う電子カルテ」について、求める機能、実現の可能性を検討してきた。その結果を集積して仕様を決定し、「外来小児科学会が推薦する」電子カルテをプロダクトとして実現する事を目標とした。ワークショップやメーリングリストで会員からのアイデアや要望をくみあげ、電子カルテが実現した際の著作権は外来小児科学会が持つこと基本とした。日医ORCAプロジェクトと連携し、OSに依存しないシステムが望ましいと考える。基本コンセプト、臨床研究に使うための機能、医療判断の質の向上を図れる機能、患者満足度の向上を図れる機能、小児科として使い勝手をよくする機能、医療事務の効率化を図れる機能などについて検討した。

10:55-11:45 特別講演 座長:草刈 章 (医 埼玉県所沢市)
 
「電子カルテの現状と未来(仮)」 高橋 究 先生 鎌倉市佐藤病院 (医 神奈川県鎌倉市)

11:45~13:00 昼休み

13:00~16:00 アドボカシー委員会主催シンポジウム

1)基調講演:社会的課題を実現するためには?
 講師:田中尚揮先生(NPO事業サポートセンター)

2)国会議員に話したこと
 横田 俊平先生(横浜市立大学小児科)
 山田 至康先生(六甲アイランド病院)
 崎山 弘 先生(崎山小児科)
 内海 裕美先生(吉村小児科)

3)パネルディスカッション