ミドルネーム「アマデウス」の由来
今年は生誕250年ということでモーツァルトが注目を集めている。生まれは1756年1月27日。フルネームはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)。あらためての説明は不要だが,最も有名なクラシック音楽の作曲家の一人であり,また,ハイドン,ベートーヴェンと並ぶウィーン古典派三巨匠の一人される。オーストリアのザルツブルクで生まれ,ウィーンで1791年に死亡した。
個人的にはモーツァルトといえば映画「アマデウス」が思い出される。1984年(日本では1985年)に公開されたこの映画は第57回のアカデミー作品賞を獲得している。受賞は全部で8部門に及び,監督賞(ミロス・フォアマン),主演男優賞(F・マーリー・エイブラハム)などを獲得した。
この映画はF・マーリー・エイブラハム演じるアントニオ・サリエリを中心として,トム・ハルス演じるモーツァルトの物語を描いたもの。モーツァルトの才能を妬み殺害したと語る年老いたサリエリの回想というスタイルをとっている。
この映画の原作・脚本を担当したのはもちろんピーター・シェーファー。映画の原作となった舞台「アマデウス」の戯曲を執筆した。1979年にロンドンのオリヴィエ劇場で初演されたている。この作品は翌年には米国へ渡り,ブロードウェイで上演され,1981年のトニー賞で戯曲部門を受賞した。
舞台「アマデウス」は日本でも翻訳版が上演された。1982年の初演時は松本幸四郎(九代目)がサリエリ,江守徹がモーツァルトの配役で上演。90年代からはモーツァルトを市川染五郎が演じ,再演を重ねている。初演以来ずっとサリエリを演じている松本幸四郎の上演回数は400回に達し,当たり役となっている。
映画や舞台のタイトルにもなった,ミドルネームのアマデウスはいまやモーツァルトの別名のようにもなっている。
このアマデウスは洗礼名に由来する。モーツァルトの洗礼名はJohannes Chrysostomus Wolfgangus Theophilus Mozart。「Theophilos」はギリシア語で「神に愛された」などの意味で,Theophilusはそのラテン語形。
当時,イタリアの音楽家がもてはやされていたこともあり,モーツァルト自身がTheophilosをラテン語で意訳したAmadeus(アマデウス)を通称として用いた。イタリア語風の「Amadeo(アマデーオ)」,フランス語風の「Amade(アマデ)」,ドイツ語風の「Gottlieb(ゴットリーブ)」 も用いたとされる。
モーツァルトの父親はザルツブルクの宮廷作曲家,ヴァイオリニストであったレオポルト。
父レオポルトは息子の才能を見出し,幼時から英才音楽教育を施した。父と共にザルツブルクの大司教ヒエロニュムス・コロレドの宮廷に仕えながらも,親子でウィーン,パリ,ロンドンなどに演奏旅行に出かけた。よりよい就職先を求めるためだったが,どこの宮廷にも職を得られなかった。
モーツァルトは25歳の時(1781年),ザルツブルグからウィーンに移った。コロレドとの対立もあり,解雇されそのままウイーンに定住する。以降はフリーの音楽家として,演奏会,オペラの作曲,レッスンなどで収入を得た。
一時期,ピアニストとして評価されたものの,晩年の数年間は収入が減り,生活苦を余儀なくされた。1787年以降,ヨーゼフ2世から「宮廷作曲家」の称号を与えられたものの,死ぬまで公的な地位に就くことはなかった。
没したのは1791年,35歳の若さだった。ウィーンでレクイエムの作曲中のことだったという。ウィーン郊外の共同墓地に葬られた。
モーツァルトは妻コンスタンツェとの間に四男二女をもうけたが,そのうち成人したのはカール・トーマスとフランツ・クサーヴァーだけで,残りの4人は死亡した。成人した2人はどちらも子供を残さなかったため,モーツァルトの直系の子孫はいない。
モーツァルトの曲が副交感神経に作用
短い生涯ではあったが,モーツァルトが残した作品数は700曲以上に及ぶ。あらゆるジャンルで作曲しており,オペラや歌曲などの声楽曲,交響曲,協奏曲,ピアノソナタなどの器楽曲の両分野にも多数の作品が残されている。
作品の識別にあたっては通常,植物学者のルートヴィヒ・フォン・ケッヘルが分類した作曲順の目録であるケッヘル番号(K.+数字)が使われる。ケッヘル番号は何度か改訂されており,最新のものは第8版。
モーツァルトの作品はほとんどが長調だ。軽快で優美な曲が多い。これは,当時の音楽の流行を反映したもので,ロココ様式あるいはギャラント様式と呼ばれる。晩年に向かうにつれて,長調の作品であっても深い哀しみを帯びた作品が増える。短調作品は少ないものの,人気が高いという。
近年,モーツァルトの曲は音楽療法に用いられていることでも知られている。テレビ番組などでも盛んに取り上げられている。
音楽には通常,交感神経の緊張をほぐし心身を休ませる音の特性が組み込まれている。中でも人間の耳殻の構造上,敏感に感じ取れる約4000ヘルツ以上の高い周波数の音が,穏やかなゆらぎを伴って豊富に存在している。
和音が豊富なために音と音の衝突により,高い周波数を生み出す効果もある。副交感神経にうまく作用して,血管が拡張して血行がよくなるのだという。血液の循環が良くなることで,冷え性の予防や改善に効果があるという。
音楽療法に詳しい,和合治久・埼玉医科大学短期大学教授によると「モーツァルトの曲にそうした効果が生まれる理由の一つは,高い周波数の音が含まれているということ。
脳にダイレクトに刺激を与えるのは聴覚(耳)からの刺激によるところが強く,しかも音域は高いほど延髄から自立神経を司る視床下部への反響があるからです。
モーツァルトの曲にはリラックス状態を導く「1/fゆらぎ」がバランス良く入っているなどさまざまな要素があり,これらの複合的な働きで副交感神経に作用し,活性酸素が減少したり,リンパ球の機能が増強したり,加えて血行が良くなることで,ガンや感染症,アレルギーの予防や抑制につながるのです」としている。
2006/07/21
日経BP 総合 セカンドステージ
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