春のドッペル・ゲンガー

多摩川の土手に雀を埋めてやった
そうしたら、俺の目から雀の涙ほどの涙が出たような気がした

エターナル・クエスト勝手に公式外伝1~浮子豚伝説(金髪女とマック)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●いち●

661 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 01:48:17
ウキブタ デターwwヘ√レvv~(゜∀゜)─wwヘ√レvv~ーーーーーーーー!
本当に浮いてた。
噂通り動作がキョドってる。

662 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 02:03:12
>>661 
kwsk
(まさか映画「デビルスピーク」の話題ジャマイカ?)

663 名前: 661 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 02:04:46
解説しよう。
ウキブタとは、オンラインゲーム「エターナル・ケスト」内
ツータックスという土地に出没する、謎のw怪力キャラ。
初期設定の装備のうえに、安物の武器を重装して劇重。
ジャンプすると、空中浮遊状態。

664 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 02:13:43
×=エターナル・ケスト
○=エターナル・クエスト

おそらく、ウキブタユーザーはPCのスペック低杉
処理できてないんやん。

665 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 02:49:19
重すぎると、浮くという現実世界との違いw

666 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 02:59:20
拙者のプロファイリングの結果報告。

ウキブタ
年齢/40歳後半/男/中年太り/中学生の子供あり
職業/下町の旋盤工
PC/iMacボンダイブルー

668 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 03:03:06
>年齢/40歳前半/男/中年太り
キャラ見たまんまやんw

>PC/iMacボンダイブルー
マカーもできるの?!
公式にはねぇんだが。

669 名前: モロチン Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 03:08:06
>マカーもできるの?!
どうも、ちまたのエロい人が開発したらしい。
os9版もあるとのこと。
ソースなし。

670 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 Mail: sage 投稿日: 2006/10/22(日) 03:08:06
オメーラ、板違い
ゲー板かオチ板に帰れ、つか、もう寝れ。

●one●

モニターの画面は黒とグレーのモザイクで覆われている。
男は、もう40分も同じような模様を見続けている。
どこまで進んだのかわからないのでマップを出す事にした。
マップは40分前から同じ場所を指している。
Dのキーを押すと、等高線がつぶれるように動いて、土地の断面図になった。

ようやく惑星の半分まで到達しようとしていた。

男はマップを消し、再びツール選択画面からシャベルを選んで
無心にスペースキーをたたき始める。


そして物語は数ヶ月前に戻る。


●01●

…最近の塾は、成績をネットで発表しているらしい。
ヨメが中3の息子のために新しいPCを買った。
なんでも、XPとかでないと見れないそうだ。
ばからしい。
しかし、その事で古いマッキントッシュが寝室の床の間にやってきたのだ。
「お父さん、ネットサーフィンもほどほどにね」
気前よくネットの配線をしてくれた息子は、
妙にいやらしい目付きをして捨て台詞をはいて自分の部屋にもどった。
ふん、こんなややこしい配線おぼえるくらいなら、文法のひとつでもおぼえやがれってんだ。

「なんだ、古いつっても使えるじゃねぇか」

悔しいが、息子の予言通り、俺はネットに溺れた。エロスの波にときめいた。
俺がこれほどまでに意志が弱いとは。
もし学生の頃こんなモノを知っていたら…おお、恐ろしい恐ろしい。
しかし、ときめいたと同時に自分の使っている機械が本当に「古い」というのがわかった。
まず、動画が出ない。時間をかけて落としても30秒で終わったり
「このデータ形式は処理できません」と言われたり…
会社の若い兄ちゃんに聞いてみたら、俺のマックのシステムでは再生できないものも多いらしい。

そして、まぁ、あれだ、よくある話なんだが
その晩もヨメが寝るのを待ってから、チマチマとキーをたたいて、
あ~、その時は、海外の金髪サイトで画像を見ていたんだ。
(「画像程度にしときなよ」と兄ちゃんの教えにしたがった)
これが、毛穴まで見えるほどの大きな画像で、重たくて
ゆっくり出てくるのを、座椅子で、腕組みをして待っていたわけだ。
ようやく、メロンのごときパイオツがドンドーンと半分まで出現したところで
背後に気配を感じて後ろを振り向いたんだ。
…小便に起きたヨメが、シラ~っとした顔をして見ていたよ。
何か言われるかと思って、首をすくめたんだが
ヨメは、その冷たいツラのままショウベン行って、帰ってきて、無言のままフトンに戻ったのよ。
そんじょそこらの怪奇映画より怖かったねぇ。

それ以降は、な、わかるだろ。
ま、そういうことだ。


●02●

「最近マックつかってんすか?」
「いんや」
「あ、例の一件がまだ尾をひいてる、と」
「辰よぉ、女はしつこいぞ」
「それも『愛情の裏返し』ってやつでしょ」
「気持わりい事言うなよ」
「ところで、オンンラインゲームってやったことあります?」
「なんだい、それ」
「ネットを介して、知らない人とゲームをやるんです」
「お、面白そうだな。囲碁とか将棋とかあるのか?」
「ありますよ、けどそれよりもっと面白いのがあるんですよ…」

 (つづく)

エターナル・クエスト勝手に公式外伝2~浮子豚伝説(雑魚キャラ)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●03●

トップページを見た時は、ワクワクしたねぇ。
次には面倒くさい登録を済ませて(これは、本当に面倒臭かった)ログインだ。
ログインつったら、つまり、暗証番号を打ってその世界の扉をあけるこった。
勇壮な音楽が流れて…ところが、いつまでたっても、次の場面が出てこなかった。
「LOADING.....」の文字が出たままちっとも進まねえんだ。
15分ほど腕組みをして待っていたんだが、うんともすんともいわねぇ。
前と同じように後ろからヨメがのぞいたことも解らんほど、集中してたのによ。
とうとう、兄ちゃんに電話をかけて聞いたのさ。
「それ、プラグインにバグが出てたって報告あったすよ、掲示板に。メザニンスロットの関係でボンダイだけ受け付けんって」
「ふあぁ?!で?!できんのか?がんばって登録した俺の苦労は全て無駄だったと?!」
「いやいや、改良版がもう出回ってましたんで、落として送りますね。解凍ソフトもってますか?」

●壱●

俺が選んだ土地の名前は「ツータックス」
昔のマイナーなプログレバンドと同じ名前だ。
企画側に同世代がいるのだろう。
その土地はうっそうとした森のど真ん中にある。
選んだキャラは「ストロンガル」、小山のような怪力男だ。
初期設定ではシャベルしか持っていないので、これでザコをたたき潰していくことになった。

ん?なんだって?口調が違うって?
あったりめぇだ、せっかく違う世界で遊んでるんだから、ずっぽりその世界にはまりたいってことよ。
駅前の大型レコード店で買ったツータックスのデビューアルバムをヘッドホンでガンガンに聞きながら
今夜もこの森に降り立つのよ。
(マックでCDを回しながらゲームをすると、どちらも止まってしまうので、ラジカセで聞いてるが)

「ヒタヒタヒタ…」
そらやってきた。ザコの代表格モスマンのいやらしい足音。
蝶の羽根のように大きく広げた耳二つの真ん中に長い鼻、申し訳程度の目と口
その鼻の穴からタイツをはいた足をニョキリと出している。
その姿たるや、それこそ「イエローサブマリン」のアニメに出てきそうな奴だ。
木々の向こうから足跡が聞こえてくる。
きた!
しかし、襲ってきたのは木の上から
のっぺりとした青空をバックに(雲の描写のチェックを外している)
羽根をひろげて毒の鱗粉を散らしながら落ちてくる。
あわてて後ろにとびすさったが、いつものごとく、空中に浮いたままに。
辰曰く「まだバグが残ってるらしいすよ」
後ずさると、3回に1度は高くジャンプしてしまうのである。
しかもジャンプという動作は、処理が重いらしい。
「ちっ」
俺=ストロンガルは、ゆっくり落ちながらシャベルを構え直す。
モスマンはまるで掃除機に吸い込まれるようにシャベルに落ちてきてグサリと刺さった。
ザコがザコと呼ばれる所以はこの弱さにある。
霧消していくモスマンの体に「-2」の数字が浮かんで消えた。

数週間の間、俺はこのモスマンや、ショウジョウ、ナミキリバエなどのザコ相手に森の探索にいそしんだ。
俺のマックのスペックではこの程度の奴らしか相手にできんらしい。(「スペック」の使い方はこれであってるのかいな?)
たしかにこれだけでも面白い。面白いのだが、あとから説明を読むと
自分のレベルに合わせて「クエスト」を選び冒険をしていくのが本来のゲームであって、
クエストを選ばない限り、ただの『訓練生』だそうだ。
一度全部消去して、もう一度はじめから登録しなおすと、他の土地も選ぶ事ができる。
この森以外にも沢山の土地と冒険があるらしい。

なるほど、奥深いもんだ。


●に●

103 名前: ネトゲ廃人@名無し Mail: sage 投稿日: 2006/11/25(水) 17:43:55

小遣いなくて、さっそく豚狩りした。

104 名前: ネトゲ廃人@名無し Mail: sage 投稿日: 2006/11/25(水) 17:48:49
>>103
人w
けど、豚はどうしてあの土地に執着してんのかな?

105 名前: ネトゲ廃人@名無し Mail: sage 投稿日: 2006/11/25(水) 17:52:13
約束の場所だからさ。

106 名前: ネトゲ廃人@名無し Mail: sage 投稿日: 2006/11/25(水) 17:48:49
>>105
松本零士に通報しますた

(つづく)

エターナル・クエスト勝手に公式外伝3~浮子豚伝説(リセットボタン)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●弐●

ゲームをはじめて1週間ほどたったころ、森の中で二人の剣士達と出会った。
これが初めての他人のキャラとの出会いだった。

おずおずと、会話モードのボタンを押したのだが(キーボードは未だに苦手だ)
相手は会話を拒否、かわりにいきなり剣を抜いて切り掛かってきた。
逃げようとしたが、いつものごとく空に浮いてしまい、
空中に浮いたままの俺は、なぶり殺しの目にあった。
自分の体から「-120」の文字が浮かんで画面が白くなった。
…愕然とした。
何なんだ、この世界は?
はじめの頃はモスマンなどにも倒されたことも多かったのだが
ここまでショックは大きくなかった。
ソフトの中のモンスターより、人の操るキャラの方が邪悪なのか。

相手は、自分と同じように「人があやつっているキャラ」ならば、このような無礼を欠く行動はいかがなものか?
怒りとともにその夜は布団にもぐりこんだ。
次の夜、ツータックスの森に降り立つと、昨夜2人だった剣士が4人に。それと水晶玉をもった魔法使いも一人。
俺を待っていたのだ。
俺は森の中をしばらく逃げ回ったが、彼らの足は早く
10分後には昨夜と同じように八つ裂きにされ、魔法使いに雷まで落とされてしまった。
薄れて行く画面が、群がってくる影で覆われていく。
まるで、屍肉を食らう餓鬼のごとき姿。


●04●

「4日続けてリンチにあったよ。しかも日増しに増えてきた。
正直なところ俺は、人というものが信じられなくなった」
「…口調変わってますよ」
「うるせぇ」
「う~ん、たかがゲームにですか?案外おぼこい方っすねぇ」
「辰よぉ、人間誰でも、一皮むけば獣なのかねぇ」
「デフォルトのキャラでも一人殺せばポイントが120、ツールも奪える。確かにいい餌食になってますね。
よし、ちょっとアンパンのところまで行って、調べてみましょう」
俺たちは、アンパンというあだ名のついた事務員のデスクのところへ行き
色黒丸顔の彼女が昼飯から帰ってくるまでに、ちょいとPCをいじらせてもらうことにした。
(これが社内で唯一のPC。下町の工場ってこんなものさヨ)
「さて、これがネトゲの掲示板ですよ。『エタクエ』スレは…あ、これ、場所も同じだしキャラの感じからして…」


103 名前: ネトゲ廃人@名無し Mail: sage 投稿日: 2006/11/25(水) 17:43:55
小遣いなくて、さっそく豚狩りした。


「ぶ、豚狩り?!」
「ネトゲ民の間であだ名がついてますよ『ウキブタ』だって」
「ひでぇや!あいつら『ゾンビ』のくせに!志の無い奴らは
いくら盗品で飾り立ててる剣士でも、腐った『ゾンビ』じゃねぇか!」
「出没ポイントから、時間帯、逃走のクセまで調べられている。
ポイントの高いザコキャラみたいな扱いになってますよ」
「…」
「あははは、このプロファイリングすげぇ!ぴったりあってるよ!」
そのとき俺たち二人の耳が引っ張られ、後ろからいつもよりどす黒いアンパンの顔がぬうっと出てきた。
「仕事に使うものを私用で使わないでください!故障したら責任とってくださいね!」
アンパン相手に、シャベルの一撃で倒せるか計算してみた。…だめだ。


辰はストロンガルをやめて、別の土地からはじめることをすすめたのだが
俺は、今のままでいいと言った。
変えたくなかったのだ。

考えても見ろ、現実の世界でいじめられたからといって、すぐに家を変わることができるか?
苦労して持った家をすぐに手放すことができるか?
そのまえにまず、抵抗してみるだろう。
俺は、他人の都合で自分の人生を曲げる事を許さない。
小さな工場つとめだからといっても、自分の持ち場を守り続けている。
しかし、架空の世界ならそこまでの意地をはらなくてもいいかもしれない。
リセットボタンひとつで、今までの悩みは解決。まっさらの人生を再び。
多くの人はそう思うだろう。
けど思い出してほしい。子供がはじめて「たまごっち」を死なせてしまった時のことを。
本気で、怒って泣いていたではないか。
そのあとで親がリセットボタンを押した瞬間
もしかしたら、そうもしかしたら
子供の心の中にある何か別の「大切なもの」を殺してしまったのではないだろうか。
もちろん、自分自身も「エターナル・クエスト」ではじめて殺されたとき(ショウジョウごときに)
「リプレイ」選択画面を見て、迷わず「リプレイ」ボタンを選んだ。
それ以降毎日そのボタンを押しておきながら「たまごっち」云々を言うのはおかしいかもしれない。
けど、不死の命を与えられたのなら、せめて
意思と意地は貫いておきたいのだ。
…もっともいくら語ろうが、こんなものは親父のへ理屈でしかないんだが。

辰曰く
「ならばファミコンの『マリオブラザース』を、ザコ1匹も倒さず一面完走するようなスキルを持つしか無い」
…俺は『マリオ』ってのもしたことはないが、要するに、
点数で競うのではなく、知恵と技で競ってみてはどうか?ということだった。
ゾンビみたいな奴らを相手に?

風呂からあがり、最近開けたばかりの「鬼火」をすこしすすりながら
読みかけの本をすこし進め、11時半をすぎた頃
すこし、精神統一がわりに深呼吸をして、
マックの電源を入れる。

(つづく)


エターナル・クエスト勝手に公式外伝4~浮子豚伝説(GMと志)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●参●

空からツータックスの森に降りていく。
視界のエリア内に、盗品で飾り立てたゾンビ達の姿が見えた。
きらびやかに見えても心が腐っている奴は、腐臭が漂う。
その中、木上に座っている道化師だけが会話モードを開いていた。

「タツ:ブタガリ11人、キヲツケテ」
「ストロンガル:テヲダスナヨ」

つま先が地につくやいなや、俺はシャベルをかかえたまま駆け出した。
今夜は戦わずに、逃げるだけ逃げてみようと決めていた。
木陰からワラワラと飛び出してくるゾンビを間一髪で避けながら足を速める。
しかし、俺ほどこの森の事を知っている奴は居ない。
これなら、一面完走も夢じゃ無い!!

でもこのゲームはどこがゴールなのだ?

勝手知ったる森の中を、土着モンスターをもよけながら走り、
とうとう南の崖までたどりついた。
手前には手抜きののっぺりした砂漠が広がっている、というか張り付いている。
この崖は、まだ一度も飛び降りた事が無い。

飛べるのか?

背後に迫るゾンビ達を感じながら、足を空に投げ出した!
飛び出してから(後ろ向きに飛べばバグって飛べたのに)と後悔したのだが、もう遅い。
みるみる地面が近づいて、近づいて…ドスン!
左上のライフゲージが一気に赤エリアに落ちた。
ストロンガルはしばらく、真っ赤に染まって(ダメージをうけた表現)
ブルブルとふるえたまま動かない。
その間に、ゾンビ達が、スルスルと崖をおりてきて、
体の自由が利かないストロンガルをあっというまに囲んだ。

そこに、馬に乗ったキャラクターが登場した。ゾンビの親玉登場か…
深紅のマントを、ベニヤ板のごとくぎこちなくひるがえしている。
(ぎこちないのは、こちらのマシンのせい)
他のゾンビ達も動きをとめて、馬の男をみている。
白馬に乗った王子様ならぬ、黒馬に乗ったゾンビ、焼酎漬けの死人だな。
しかし、スモールマップに出ている点が
どうしてコイツだけ赤なんだ?横に光っている「GM」の文字とは?

男は馬から降り、剣の柄を握ってこちらに向かってきた。


●05●

「でよ、
ああもうイライラするなぁ。そこで画面が固まっちまったのよ。
キャラの数が多すぎて、マックが悲鳴をあげたんだろな。
ようやく動き始めたら、俺のまわりで死んでたんだよ。11人とも」
「どうせそんなところだろうと思いました。
殺されたゾンビの一人が掲示板で書き込んだ事で話題になってました。
その時の動画もようつべであがってたんですよ。変換して持ってきましたよ、ほら」
「ようつべ?なんだそれ、ああ、イポッドか。こんなちいせぇ画面で見えるかよ…」

その画面には、Cの字に開いたゾンビ達の真ん中にストロンガル=俺が居て
馬の男がやってくところからはじまった。
男は素早く剣を抜き、襲いかかってくるゾンビを無駄な動きもなく切り倒し続け、最後の一人の腹を貫くのに4秒とはかからなかった。

「…」
「桑畑三十郎か『勇敢な仕立屋さん』並み!
まさに ネ申 って感じ。
ギルドマスターの称号であるマントはつけていますけど、まだ無地だな…。
どうしてマスターのくせに、こんなところに一人いたんだろ?
しかもやっつけちゃったゾンビ達のツールを取得しなかったから
いまでもあそこに落ちてるままっすよ。」

…俺は、この男に惹かれるものを感じた。
自分と同じような志(こころざし)を感じたのだ。

(つづく)

エターナル・クエスト勝手に公式外伝5~浮子豚伝説(いじめ)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●page1●

(「エターナル・クエスト」企画会社カキニゲ・海岡社長インタビューより抜粋)
---自然の作り込みが素晴らしく凝ってますね。
海岡:「たとえば、木ひとつ石ひとつにしたって要素を変えたものを最低十数種類は作っています。季節によって色もかわるようにしてます。
ここまで作っておけば、あとはユーザー達が何かを考えてくれるかもと思ったんです。プログラマーは泣いてましたけどね」
----それは大変でしたね。
海岡:「実際、このゲームは選んだ『クエスト』を遂行するのがメインなんですが、別のルールを作って遊んでいる人も居るんですよ。それでもいいんです。というかそれこそが、私が狙っていたものなんです。」


●06●
めずらしく、家族全員そろって晩飯を食った。
息子の口元が紫に腫れている。
何があったのか聞くべきなんだろうか。
どうせ、何も言わないんだろうな。そんな年頃なんだよ。
静かな食卓に、箸の音だけが聞こえていた。

今夜も10分もせずに惨殺されてしまった。
大きくため息をついて、目頭をマッサージ。
グラスの焼酎ひとくち。
ツマミがないんで、寝ているヨメの鼻でもつまんでやろうかとしばらく寝床をぼーっとみていた。

「親子ともどもイジメラレッコか」

…あの男ならどうするだろう。そんなことをふと考えた。
ネット上にある巨大掲示板サイトでは、あの馬に乗った「ギルドマスター」に関しての情報が拾えた。
どうやら、数々のクエストで奇跡的な勝利をあげてきたらしい。
「すげぇ奴もいたもんだ」
この男の私生活ってどんなものなんだろう。
ここまで英知に長けているのなら
現実でもきっと多くの人の上に立ち、有能なブレインを動かして一線を歩んでいるのだろうな。
「俺とは大違いだ」
俺が、このゲームにのめり込んでいるのは、自分でも気がついていなかったが
現実の生活になんらかの不満があるからなんだろう。
たとえば、さっきの息子の様子を見ても、普通の親ならもう少し悩むのかもしれない。
俺は、そんなことからも目をそむけて、またもや座椅子に座っている。
逃げているんだろうな。
しかし、現実でも架空の世界でも、相変わらず弱者のままの自分に嫌気がさす。
「ギルドマスターの爪の垢でも飲みたいもんだ」

あの後一度も会う事は無かったが、
あのとき、自分の中で何かのヒントがつかめかけたような感じがして
あいかわらず殺され続けているものの、毎晩森に通い続けていた。
…もう一度ログインしてみよう。


●四●

意外な事といえば、俺が一度殺されると森にゾンビ達は来ないらしい。
おそらく「死亡通知」が掲示板にまわって、その日は「おしまい」だと。
「そういえば、俺自身、一晩に2回も来た事なかったな」
久々に静かな森の中を散策した。もちろんザコモンスターは居るので、シャベルを振り回していたが
ゾンビ達とくらべると、かわいらしいもんだ。
以前読んだ本の中の「ウイルス自体は悪意を全く持たず、純粋で美しい生き物なんです」という言葉を思い出した。
ショウジョウを逃したシャベルが木に当たり、木が折れて倒れた。
ショウジョウは6本の足を巧みに動かして逃げる。
俺は追いかけようとして、その折れた木につまずいてしまった。
もう、ショウジョウの姿は見えない。
立ち上がって、折れた木を見つめる。
少し大きな石を拾った。(拾える石と拾えない石があるようだ)
上に投げてみて、わざと自分の頭に落としてみた。
体が赤く染まって、ライフゲージが一つだけ減った。
森を見回した。
「…いけるかもしれんぞ」

●index01.html●

(ブログ・「昼行灯プログラマー・Mr.スナウトの憂鬱」より)
2007年3月3日
ひな祭りだけど、娘ももうそんなに喜ぶトシでもない。
オヤジは今日もモニターの前。
けど、ひなチョコあられくらいは買ってやるか。(余ったらワシが食う)

「エタクエ」ファンに新しいコネタをひとつ。
『魚捕り網』でショウジョウを生け捕りできるようにしました!
ただし、顔を狙って網をなげること。地面や木に縛り付ける事が出来ます。
外せるのは、投げた本人のみ。
これは、あるユーザーのみにあてた『愛』ですら。

生きれ!
生き残れ!


●さん●

515 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/22(日) 21:03:57 ID: YePI2rVC0
いまさらながら、なんでここにウキブタスレがあるのか、と

昨日のバトルみたか?大木切って迷路作ったぞ。

516 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/22(日) 22:13:30 ID: 8qsFKLbF0
>>515
ネトゲ板に書けば、アンチに荒らされるよう!ヽ(`Д´)ノ

迷路すげー!
そのまえの「モスマン動物園」も凄かったな。

517 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/22(日) 22:36:07 ID: ED75xCQE0
かといって、アイドル画像板に立てる必要が本当にあったのかと?
じきに削除依頼出されるぞ。

518 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/22(日) 23:19:46 ID: DlCvuVqE0
ウキブタがアイドルであって何が悪い?!
そんな私はデブ専~

  _  ∩
( ゜∀゜)彡 オッパイ!オッパイ!
 ⊂彡

>>モスマン動物園?

519 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/23(月) 00:23:39 ID: OKMxPspS0
リア・ディゾンおばんくさ。
520 名前: 萌える名無し画像 Mail: sage 投稿日: 2007/04/23(月) 00:25:55 ID: OKMxPspS0
↑誤爆スマソ
>モスマン動物園
モスマン4匹を木で囲った中に閉じ込めて、剣士を放り込んだ。
「ハンニバル」の殺人ブタを思い出したよ。

(つづく)

エターナル・クエスト勝手に公式外伝6~浮子豚伝説(遠すぎるゴルゴダ砦)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●五●

「黒馬」を一杯のんでからログインし、森に降り立つと
そこらじゅうの木々に多くのキャラ達が座っていた。
観客である。
6人だけが下で待っている。それぞれの武器を地面に突き刺して。
俺のマシンの都合で6人が一番対等だと、自然にルールが出来たようだ。
俺のつま先が地面に降り立つのが合図なのは、リンチの頃と同じ。
しかし、俺は学んだ。そして抵抗した。
他のユーザーにとっては、俺こそがゾンビに見えただろう。
一部では「蠅の王」などという訳の分からないあだ名までついてるが
未だに「ウキブタ」のほうが通っている。
そして俺は、この森にやってくる剣士や魔法使い達を「ゾンビ」呼ばわりしない。
何かひかれるものがあるこそ、ここにやってくるのだろう。

俺は走り出した。
6人が武器を抜いて追いかけてくる。
すでに森の外郭は大木が倒されて逃げ出せないようにされているので森の中でのみのバトルである。
ショウジョウが木の上から襲ってきた。
「シャッ!」
素早く魚獲り網で顔を狙って、木に縛り付ける。
次に近くの木々を何度かシャベルで傷つけておいて、一撃で一定方向に倒れるようにし(敵の退路を断つため)
ショウジョウの張り付いている木の後ろにまわり、6人の誰かがくるのを見計らって網を外すのを待った。

今夜のバトルも負ける気がしない。


●06●

「おい、辰よぉ」
「はい?」
「謁見ってなんだ?」
「あ~、簡単にいうと、職員室に呼び出されたんですよ」
「おいおい、俺なんか悪い事してたっけ?」
「職務怠慢ですかね。本来のクエストを行っていないすから」
「行くべきかな?」
「…行ってみたら?」


●六●

ツータックスは、ユーザーの間で「煮炊王国」あるいは「鍋物屋」と呼ばれている。
その王女に謁見せよとの命令がくだり、その晩は、8時半にログインした。
(ヨメには「とうちゃんもご熱心なこと」と皮肉られたが、よその女に会うんだから、
結構ヨメの勘もするどいのかもしれない。)

「ニキイタ:ココニキテモライマシタノハ、アナタヲ、ツータックスノチョスイチニハイチガエシタイトオモッタカラデス。」
貯水池にも多くのゾンビ達がやってきて(王女はサンゾクと言ってた)乱暴をはたらくのだそうだ。
俺は、あの森から出たくなかったのだが、王女は腕を買ってくれているらしい。
今、俺がしている事とにているクエストをわざわざ探してくれたのだ。
俺は、断りの言葉を打ち始めたが、いまだキーボードが苦手で、ダラダラと時間がたってしまった。
そのうちに、王女に電報のようなものが届いた。
「ニキイタ:ギルドマスターガゴルゴダ砦ニムカッタヨウデスネ」
…あの男が、難攻不落のゴルゴダ砦を…

あわてて掲示板の方を立ち上げると、容量オーバーで「エターナル・クエスト」の画面が消えてしまった。
きっとストロンガルも王女の前で、煙のように消えてしまったんだろう。


●two/七●

世界中に散らばる「エタクエ」住人の多くが注目している対戦。
その戦況が刻一刻と実況掲示板に書き込まれる。
しかし、どうやらマスター側の「不利」らしい。

飲み物をつくりに階下におりた。
風呂上がりの息子が、洗面台のところで口を開けて歯を見ている。
頬に大きな痣があった。
「おい」
息子がこちらを見た。顔が少し変形しているのが痛々しい。
学校か友達の間で何かあったのだろう。
知らん顔して、俺の横を通り過ぎようとする息子にもう一度声をかける。
「なんとかやってけるか?親は必要ないのか?」
彼は背中を向けたまま立ち止まり、
「…いまはいいよ。なんとかするから。…自分のことなんだ、なんとかなると思う」
そうつぶやいて、階段を上がり自分の部屋に入った。
俺も寝室にもどり、座椅子にすわってグラスに口をつけた。

掲示板では、悲鳴を上げるもの、あざ笑うもの、沢山の人たちの言葉が流れ続けた。
今度こそ、ギルドマスターの伝説も終わりに近づいたということか…
そのあと、また「リプレイ」ボタンを押して、復活するんだろう。
ギルドマスターの「リプレイ」ボタンと
俺の「リプレイ」ボタンの重さは同じなんだろうか。

現実と架空の差とは何だろう。

…たかが一人がふえたところで戦局が変化するわけでもないし。

結局、ログインした。
森には、時間が早すぎるためかだれも居なかった。
どこかで戦火があがろうが、ここには影響が無い。
ここからゴルゴダ砦まではあまりにも遠すぎるのだ。
マップを見ればわかるが、ゴルゴダ砦は球状の世界の反対側にある。
そう、森の怪力男は無力だ。
手も貸す事も出来ない。


いやまてよ。

(つづく)


エターナル・クエスト勝手に公式外伝7~浮子豚伝説(イバラメサソリ)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●page2●

(「エターナル・クエスト」企画会社カキニゲ・海岡社長インタビューより抜粋)
---「エターナル・クエスト」の世界ではいくつか魅力的な伝説が産まれてますね。
海岡:「『ゴルゴダ砦の奇跡』などは有名ですが、私が個人的に一番好きなのは、なんといっても『ウキブタ伝説』ですね」
---教えてください。
海岡:「ストロンガルという怪力キャラクタを初期設定のまま活躍させていたユーザーがいましてね」
---それはすごい。
海岡:「ツータックスという土地の森の中で先ほど言ったように、独自のルールをつくってバトルを展開していたんです」
---ああ、それは聞いた事があります。ものすごい知恵者が居るって
海岡:「そのストロンガルが例の『ゴルゴダ砦』の時にギルドマスターを助太刀したんですよ。戦乱のどさくさだったのであとから解ったんですけどね」
---でも、ツータックスとゴルゴダ砦は正反対の位置にあるはずでは?
海岡:「奴はやったんですよ、歴史に残る偉業をね」
----それは?

海岡:「世界の反対側までシャベルで掘ったんですよ」



●three/八●

寝室から飛び出して、息子の部屋に飛び込んだ。
保冷剤で頬を冷やしてた息子が、椅子の上で飛び上がった。
「おい、お前のパソコン立ち上げてくれ!」
ブラウザで実況掲示板を出すように指示して読むと、
やはり、次々とギルドマスター側のメンバー数が激減していることが書かれている。
「くそ、お前は戦況に変化があったら、教えてくれ!」
寝室に再び戻って、無心にシャベルを動かし続けた。
と、グレイと黒のモザイクが、いきなり曇天の空に変わった。

反対側に出たのだ!

もし、本当にその場に立てたのなら、凄まじい血の臭いに吐き気を催しただろう。
戦場には、ギルドマスター側の剣士の死体が累々と血を覆い尽くすように横たわっていた。

「父さん!イバラメサソリってのが4匹出てきて、ギルド側って方の『最後の仕上げ』をしてるって!
父さんこれに参加してるの?!」
息子がドアの方から叫んでいる。




例の男が深紅のマントをひるがえしながら、巨大なイバラメサソリと対峙しているのがみえた。
男は大きなハサミを巧みによけてはいるが、後ろからやってくるもう一匹のイバラメサソリには気づいていない。
俺は迷わず走った。
サソリのほうが先に気づいたが、かまわん。黒い巨体の前でストップすると、フェイントをかけて後ずさり。
いつものバグで、高く飛び上がりざま、大きなハサミは地面に突き刺さる。
砂塵舞い上がる中イバラメサソリの動きが止まった瞬間を狙い、シャベルを奴の額にむけて放つ。
それと同時に、イバラメサソリのしっぽのトゲが俺の背中から腹に突き抜けた。
紫に光ってイバラメサソリは霧消し、俺は地面に叩き付けられた。
ライフゲージは0に。
薄れて行く視界の中で、ギルドマスターのマントに
金色の「E」と「Q」の文字があらわれるのが見えた…

(つづく)

エターナル・クエスト勝手に公式外伝終章~浮子豚伝説(真の英雄)

2006年11月02日 | EQ公式外伝
●index02.html●

(ブログ・「昼行灯プログラマー・Mr.スナウトの憂鬱」より)
2007年4月15日
ギルドマスターのマントは、仲間の信頼度、犠牲度によって変わる。
今宵ウキブタは、ゴルゴダ砦で、飛んだ。
ギルドマスターを守って戦い倒れた。
マスターのマントに輝く文字は、お前の勲(いさお)だ。

お前は誰にも知られずに死んだが。
まことに見事な、戦いっぷりだったよ。

お前の仕草から、お前のPCがどんなものかは想像がついた。
俺は社長に掛け合って、非力なマシンのユーザーでもクエストに出かける事が出来るよう
プラグインを開発した日曜プログラマーを探し当て、話をつけて
プロジェクトを提出したよ。
お前のような未知なる才能をもった戦士が出てくることを期待して。

…しかしなぜか、おまえはあの世界に戻ってこないような気がする。
現実の世界に帰って、普通の生活を歩んでゆくのだろう。
その生活は平凡かもしれないし、誰も褒めてくれないものかもしれない。
お前が選んだ「クエスト」はそこにあるのだろう。
それでも、俺は、俺だけは、讃え続ける。

お前こそ、真の英雄だ。


豚乙。

(エターナル・クエスト勝手に公式外伝~浮子豚伝説 完)