
イタリアの古都では、夜空に鮮やかなネオン・サインが瞬くことはない。
石造りの家並みを吹き抜けていた秋の風が止んで、街が夜の訪れを知る頃ともなると、あちらこちらのレストランのテーブルに着いた客達の人なつっこい顔また顔が想像される。
給仕等は、その晴れやかな宴がうねりはじめるのを待つ間、スピーカーから低く流れる古いカンツォーネのバイオリンの調べを聞きながら、しばしの退屈を持て余す。
今宵は、めずらしく温かい夜になると予感しながら、わたしは異国の旅の空の下、とある街角にたたずみ、ふと、そんなことなど思い巡らすのだったが...。
【The Hollyridge Strings / The Long And Winding Road】