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きみの靴の中の砂

ほとんど団子のようになってやって来る





 鎌倉駅から歩いて数分のところにある長興山妙本寺に、一年を通して過ごし易い日の午前中、ぼくはしばしば散歩に出掛ける。境内で四季折々の花を観賞できることから、趣味人の間では花のお寺として知られているようだ。しかし、近隣にあの鶴岡八幡宮があるので、観光客は粗方ほとんどそちらへ吸い寄せられて行ってしまう。あちらが十二時方向とするとこちらは三時方向だから大通りを渡ると突如多勢に無勢となり、結果、それが妙本寺の境内に観光客が少なく静かな時間を過ごせる理由であり、言わば地理的怪我の功名とでも言っていいだろう。

 本堂の裏手を上ったところに墓所がある。そこを知る人もまた行く人も少ないが、そこに戦後に始動した詩人達のなかで現状一番のビッグネーム・田村隆一の墓がある。詩人の墓石の写真をどこかで見たことがあるだけで、実際ぼくも墓前に参ったことはない。どことなく墓前に立つのが生意気な気がして、精々下の本堂あたりから手を合わせているのが身分相応だと思っている。

 田村隆一の命日だけ忘れないのは、彼の命日とぼくの誕生日は残暑のさ中に二日違い ------ クソ暑さと詩人の命日とぼくの誕生日は、毎年、ほとんど団子のようになってやって来る。




【The Critters - Mr. Dieingly Sad】

 

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