いつもご覧下さり、誠に有難うございます。
荒川選手の金メダルに触発されて、
イナバウアー的姿勢に挑戦してひっくり返っている人が、
日本中で少なくとも数千人はいるんじゃないかと思う、今日この頃。
私も背中を痛めましたが、スベることに関しては自信があります。
さて、寒くなったところで本日のネタ。
イナバウアーとは全く関係ない、日本航空。
タイトルは当社のキャッチコピーDREAM SKYWARDをパロってみました。
内紛で大揺れですけど、
公表情報からこの会社の問題点を今一度確認してみましょう。
①重い退職給付制度
まずは、昨年の有報注記
http://ir.eol.co.jp/EIR/9205?task=download&download_category=yuho&id=803977&a=b.pdf
のp.9 をご覧下さい。
05/3末の退職給付未償却債務3,556億円(未認識数理差異などの合計)。
連結株主資本が1,947億円ですので、2倍弱もあるってことです。
よくマスコミが「積立不足」と表現しているものでして、
今後この会計上の債務を償却していかなくてはなりません。
償却費用は退職給付費用として販管費で計上されます。
05/3期では315億円。償却には12年かかる計算です。
しかも05/3期には制度変更による費用減少分513億円を
一括で退職給付費用と相殺する、というやや強引な処理をして、
退職給付費用は前年同期比▲513億円の180億円。
結果として連結営業利益561億円の大半をこの制度変更で
稼いだってことが言えます。
とにかく連結営業利益を黒字にしたかったんでしょう。
でもこの効果が切れる06/3期は、同費用が513億円増加するって訳です。
②この巨額の退職給付債務。一気に処理するとどうなるか。
株主資本-退職給付未認識数理差異等×(1-税率)がいくらになるかって
試算しますと、 1,947億円-3,556億円×60%=▲187億円。
05/3末で実質債務超過ではないかと指摘されても不思議ではない状況かと
思われます。
③さっぱりわからん損益計算書
http://ir.eol.co.jp/EIR/9205?task=download&download_category=yuho&id=803975&a=b.pdf
連結損益計算書の事業収益と事業費。
セグメントの事業別で多少開示しているが、事業費の内訳については
さっぱり分からない。こんなに内容の乏しい有報をよくも認めたものだ。
④05/3期機材関連報酬額484億円
これは航空機を買ったときにメーカーから受けるリベートと聞いております。
これを計上するっていうのも考えものです。
おそらくこの報酬は値引きの性格が強いですから、
航空機勘定から差し引いて計上すべきではないででしょうか。
JALの場合は、航空機勘定を嵩上げして、将来割高な減価償却費を
計上することになります。
要は、計上できる利益はなりふり構わず前倒しで取っている、ということです。
ただし、06/3期は第3四半期まで見る限り、まだ計上していないようです。
⑤06/3期連結決算について
原油高、運行トラブル等、散々な状況である中、必死のコスト削減策(通期
▲570億円)を講じても
http://www.jal.com/ja/ir/management/pdf/setsumei_060206.pdf
会社計画では営業利益▲340億円、
経常利益▲570億円
当期利益▲470億円
と一段と厳しい決算見通し。
で、このコスト削減策のうち給与10%カットが引き金になって、
内紛が起きているってことなんでしょう。
でもこのままいくと05/3末の退職給付債務を考慮した実質的な株主資本は
05/3末▲187億円+06/3期当期利益▲470億円+06/3期数理差異償却×60%
(05/3期実績315億円×60%)=▲468億円
と悪化が進むこととなるでしょう。
元はといえば、従業員への厚遇もひとつの原因となっている、脆弱な財務内容。
他にも、マイル引当金未計上の問題(←これは私が勝手に注目)など
まだまだ不透明な点は多い。
ですから、内紛なんてしている場合ではない。
財務上の危機感が全社に共有されていないのでしょう。
一体どういう風に収拾されるのか要注目です。
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てなことをある方に申し上げたら、「航空会社のサービスは食事ではなく、安全だ。にもかかわらず安全でこれだけエラーを出しているJALを選ぶことは大変リスキー。私ならば他の航空会社を選ぶ。」といわれ、はっと目が覚めた思いでした。
確かに品質を軽んじるこの会社、BS,PLがよくわからない素人の僕でもアブナイ感じがしてしまいます。
cheif様、たすく様
コメント有難うございます。
私があと気になっているのが、
ハインリッヒの法則。
「1件の重大災害(死亡・重傷)が発生する背景に、
29件の軽傷事故と300件のヒヤリ・ハットがある。」という警告です。
<参考:拙稿 昨年11/9付>
「ハインリッヒの法則」は航空業界にも当てはまるのか?
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/ceebf74f9b28c6441a4f1c91bb95ef98
この法則、航空業界にだけは
当たって欲しくないですね。
おかしくないのに、よくものんきに
内紛なんてやってやがるなぁーとの
感想を持っていたものです。
ご意見、まったく同感です。
いつも拝見し、勉強させて頂いております。
私は親のすねかじりから抜け出して初めて自費で飛行機に乗ったときに
JALを使ったのがきっかけで、以来JALを使ってマイルを貯めておりますが、
昨今のJALの不祥事および内紛劇には開いた口が塞がりません。
今回のエントリからすると、このままではかなり財務内容に地雷が
埋まっていて、それをうまく処理していかなくてはならない感じですね。
その過程で、どのような犠牲が払われていくのか、注目したいと思います。
これからも楽しいエントリをよろしくお願い致します。
実は毎日読んでおりますので。