
■[泉大津]鮨(すし) 一二郎(いちじろう)
2010年3月8日

泉州特産大渡り蟹

住宅地の中、鮨一二郎は忽然(こつぜん)と現れる。玄関には店名を記した小さな壺(つぼ)があるのみ。通行人にはまず鮨屋とは気づかれまい。大将の人懐こい笑顔が客をカウンターにいざなう。
鮨は料理のみならず、器や鮨職人の所作の美しさ、コミュニケーション能力が複合した総合芸術である。店主の宮井誠一郎さんは温かき人格でカウンターエリアの時空を自在にコントロールする。客の腹具合や会話のタイミングなどをさりげなく見切って四季折々の料理が出される。
泉州の地魚や旬の野菜なども駆使した料理は、創作性が豊かだ。皮をはずしていったん揚げたあとに再度戻して焼く、手の込んだ甘鯛(あまだい)は松かさのように反り返った鱗(うろこ)の見栄えと食感が秀逸である。そして、ずっしりと重みのある直球勝負の泉州特産大渡り蟹(がに)。よくある茹(ゆ)でや蒸しでなく焼き蟹で供す。焼きの香ばしさと半なまに仕上げられた内子(うちこ)(甲羅のなかの赤色の「子」の部分)が織りなす香りと口当たりのハーモニーは、泉州の海を感じさせる。
〈はし休め〉
一二郎という名は経営と調理のパートナーである弟の泰二郎さんの名前を併せた。泉大津の南、岸和田のだんじり祭りは蟹祭りとも呼ばれ、泉州は渡り蟹が盛んに食べられる。
(大阪まんぷく会会員・岸和田盈進会病院院長 石川秀雄)
鮨 一二郎
大阪府泉大津市昭和町10の27。
南海泉大津駅より徒歩5分ほど。
営業は午後5時~午後11時。定休日は日・月曜。
カウンター10席、座敷は4人掛けが2テーブル。
予約がベター。
料理はおまかせだと8千円ぐらい。
電話0725・33・0078。
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