加齢する脳のための栄養素
どんな年齢層にも共通する
栄養の基礎知識はたくさんあります。例えば、新鮮な野菜と果物をたっぷり食べ、糖分・脂肪分を摂りすぎないようにすることは、年齢に関係なく、体によいことです。それは皆さんもご存知のことでしょう。
一方では、加齢の影響で変化しやすい部位で特に必要性の高くなる栄養素も存在します。いつまでも若々しい気持ちでいるために、どんな栄養素の摂取を心がければよいか、知っておきたいと思いませんか。
フリーラジカルは時間の経過とともに体内に蓄積されていきます。抗酸化物質の豊富な食べ物を日常的に食べていないと、酸化ストレスが引き起こされてしまいます。そして、酸化ストレスによるダメージを受けやすい部分が集中攻撃を受けてしまいます。なかでも脳は加齢とともにフリーラジカルと戦う抗酸化物質が減ってしまうため、注意が必要です。
年齢を重ねると肌にしみやそばかすが出てくるのはよくあることで、皆さんも、特に珍しい現象だとは思わないでしょう。実は脳にもしみ・そばかすと同様のことが加齢によって起こります。これを知っている人は少ないのではないでしょうか。脳のしみは、フリーラジカルの激しい攻撃を受けた時に生じます。その頻度を減らし、フリーラジカルの蓄積を防ぐには、ビタミンEなどの脂溶性の抗酸化物質の摂取が有効であるとされています。
ビタミンEもビタミンC、A、Kも、強力な抗酸化物質です。
新鮮な野菜と果物をたっぷりと含む食事をしていると、体に様々な抗酸化物質が行き渡り、フリーラジカルの蓄積を防ぐために活躍してくれます。強力な抗酸化物質のなかでも、特に優れているのは、OPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン)と呼ばれる化合物です。OPCの効力はビタミンEの50倍、ビタミンCの20倍に相当することが分かっています。
名前を挙げておきたい抗酸化物質は他にもあります。ALA(アルファリポ酸)も、加齢とともに生じがちな酸化ストレスから脳を守るうえで重要な役割を果たす栄養素です。
ALAは、脂溶性、水溶性の両方の性質を兼ね備えている数少ない抗酸化物質のひとつで、全身に浸透して抗酸化物質のネットワークを再生してくれます。
認知能力のサポートと保護が目的であれば、1日にたった20分〜30分、屋外で過ごすか、ビタミンDをたっぷり配合したサプリメントを毎日摂取するだけでも役に立ちます。最近の研究で、体内のビタミンD量と認知能力には密接な関係があることが明らかにされています。ある研究で注意力の継続状態と脳内の情報処理速度に関する3種類の異なるテストを行ったところ、体内のビタミンDの多いグループが一番良い成績を出しました。また、結果をさらに詳しく分析すると、特に60才を超える年齢層においてその傾向は顕著に現れていたということです。従って、ビタミンDの重要性は特にシニア世代で高いと言うことができます。
現在、高齢者について一般的に推奨されているビタミンD摂取量は1日600IUです。しかしながら、新たな研究結果を再検討してビタミンDの重要性を考えた場合、多数の医師が2000IUを上限に毎日摂取するべきとしています。
最後になりましたが、もうひとつ、大切な栄養素を確認しておきましょう。それは、オメガ3系脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)です。この数年間、DHAに関しては膨大な情報が探り出されました。その結果、脳に良い影響をもたらすことも明らかになっています。DHAの研究は、情緒不安定や知能、手と目の連携など、様々な角度から進められています。その契機となった研究は、DHAの摂取がアルツハイマー症の発症リスク低減に有効であることを立証したものでした。アメリカの国立衛生研究所では現在、アルツハイマー症に対するDHAの作用を最大限活用するために、大規模な研究が行われています。脳内の脂質の大部分はDHAです。高齢になっても認知能力を維持したいと思う人なら誰でも、その進捗状況は気になるはずです。
世界保健機構では、週に2サービング以上、脂肪分の多い魚を食べることを推奨しています。特に、水温の低い海で獲れるサケやサバ、マグロ、オヒョウなどは、DHAが豊富です。
ただし、養殖ものの場合は、餌の種類によって本来あるべきオメガ3系脂肪が低量になってしまうことがあるので、買う時は天然ものであることを確認する必要があります。
特定の栄養素を必要とする部分は脳だけではありません。いつまでも若々しく生きていくには、その時々の必要性と目的に合った栄養摂取の方法を知ることが大切です。