恋は遠い日の花火ではない

けさ方、とても居心地の良い夢の途中。現実世界でアラームが鳴り響き、夢に後ろ髪を引かれる暇もなく僕は叩き起こされた。
出勤までにはまだ時間があったので、夢のストーリーを復習する事に‥。夢というものは、その場で復習をしておかなければ記憶の彼方に固く封印され、そのまま二度と思い出す事ができなくなるものだ。

夢の復習をするのに最も効果的な姿勢とは、目覚めたときの体勢、すなわち仰向けである。（ときどき横向きのときもある。）

それが災いし、今日は二度寝した。

二回目に起きた時間は遅刻ぎりぎりだったし、夢の内容もすっかり忘れていた。そして誤ってネクタイピンをトイレに流した。実際には手を突っ込んで拾おうかどうか迷ったが、どうせ道で拾ったものなので、すぐにあきらめがついた。トイレのレバーをひねった時はすでに鼻歌だった。三年ものあいだ愛用していた大切なピンだったが、思い出、かげろう。儚いものだ。恋は遠い日の花火ではない。