森会長の発言を実証してしまったご様子。
日本第一党・桜井誠氏18万票の衝撃~2020東京都知事選、右派界隈に何が起こったのか~
古谷経衡 | 作家/文筆家/評論家
7/6(月) 7:03
1】桜井誠氏、18万票獲得の衝撃
2020年の東京都知事選挙はふたを開けてみれば大方の予想通り、現職小池百合子氏が前回(2016年)の得票を大幅に上回る350万票以上を得て圧勝した。立憲・共産・社民から支援を受けた宇都宮健児氏は健闘したものの、約83万票と伸び悩んだ。れいわ新選組代表・山本太郎氏も健闘したが基礎票とみられる約66万票を固めたものの、こちらもやや伸び悩んだ展開だったことは否めない。
そんな中、私が最も注目したのは、前回都知事選に出馬し、約11万4000票を獲得した日本第一党党首で、在日特権を許さない市民の会(在特会)元会長の桜井誠氏が前回を6万票以上上回る約17万8000票を獲得して、22人の候補者のうち得票数で5番手につけたことだ。今回の東京都知事選の投票率が55%と、前回を約5%弱下回る投票率だったのにもかかわらず、この票の伸びは無視できない。
桜井氏は海外報道でも「極右」と名指しされ、長年在日コリアンへの「優遇(と彼らが主張するもの)」撤廃や、在日外国人への過激な排外的主張を訴え続けてきた。今回都知事選でも、新型コロナウイルスを「武漢肺炎」と呼び、中国人を「シナ人」、中国政府を「中共」と呼び変え、新型コロナウイルス感染阻止のためとして、中国人観光客の入国拒否や徹底的排斥を呼び掛けて選挙戦に臨んだ。
間違いなく桜井氏は、ゼロ年代から発生したネット右翼の中でも最も過激な「行動する保守」の中心人物であった。であるがゆえに、彼の得票は少なくとも東京における極右・排外主義者の動向を示すバロメーターと同一であると言って差し支えない。今回、桜井氏が約18万票を集めたことは衝撃といえる。
結論から先に言えば、桜井氏の約18万票得票は、東京において極右勢力が伸長した結果ではない。それまで「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に包摂され、まるで「自治政府」のように承認されてきた極右が、「内紛」の結果「保守界隈・ネット右翼界隈」から分離し、純化した結果、彼らの投票行動がより鮮明にあぶり出されたものである。
さてこの背景には何があるのだろうか。
2】4年前と今回における保守界隈・ネット右翼界隈の投票先の変遷
まず、桜井氏18万票得票の背景を読み解くには前回都知事選(2016年)における「保守界隈・ネット右翼界隈」の投票動向と今回都知事選(2020)の違いを点検する必要がある。前述したとおり、桜井誠氏を支持する極右層は、元来的にこの「保守界隈・ネット右翼界隈」に包摂される関係である。つまり巨大な「保守界隈・ネット右翼界隈」(筆者はその数を全国で200~250万人と推定している)があり、その中でも最も過激で排外主義的傾向を強固に持つものが「行動する保守」と呼ばれる存在である。
この二者は韓国や中国、在日コリアン等に極めて歪んだ差別的偏見を持つことについて共通しているものの、その濃淡には違いがある。つまり比較的薄い部分である「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に、濃い「行動する保守」がモザイク状に分布している状態であると理解していただきたい。
しかし後述するが、今回の都知事選挙では、この「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が、内紛の結果ほぼ完全に分離されたことにより、「行動する保守」が純化され、彼らがより主体的に投票行動として桜井氏に投票したことで、18万票という票数が出来上がったのだ。これを図にすると以下のようになる。
筆者制作
2016年の前回都知事選挙に於いて、「行動する保守」を含んだ「保守界隈・ネット右翼界隈」は、図にあるように自民党と、一時期ネット右翼から絶大な支持を得た「旧次世代の党」の事実上の継承政党である「日本のこころを大切にする党」が支援する増田寛也氏を強く支援し投票した。一方、小池百合子氏に対する敵愾心は旺盛だったものの、保守界隈の論客としても知名度の高かった中山恭子・中山成彬夫妻が小池氏率いる希望の党(当時)に入党したように、小池氏に対しても一定の票が流れたとみる。元来小池氏は改憲論者で核武装論をぶったこともあり、自民党の下野時代(2009-2012)には、頻繁に右派系市民団体の集会に顔を出していた。
一方、この「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に内包されていた最右翼の「行動する保守」は、その信条として桜井誠氏に投票する場合が多かったものの、「保守界隈・ネット右翼界隈」の主要支持先であった増田氏にも流れたと見る。このように、2016年都知事選挙では、「保守界隈・ネット右翼界隈」とその中に内包された「行動する保守」は、増田・小池・桜井に投票先が三分され、その厳密な鑑別は難しかった。
しかし今回の都知事選挙では、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が分離したことにより、「行動する保守」の投票先が桜井氏一本に絞られたとみるべきである。無論、「保守界隈・ネット右翼界隈」からも多少の流入はあったとみるべきではある。また今回の都知事選挙では、自民党が事実上小池氏を支援したために、反小池の旗色を鮮明にした「保守界隈・ネット右翼界隈」は投票すべき候補を見いだせず、一部が小池氏、一部が維新の会が支持する小野氏か、あるいは棄権に回ったのではないかと考えることもできる。
ちなみに2016年都知事選挙でも2020年都知事選挙でも立候補している立花孝志氏は、2019年における私の論考”『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?”の通り、「NHKから国民を守る党(今回選挙ではホリエモン新党)」は、ネット右翼的傾向は弱く、それよりもYouTubeでの話題性、政見放送の奇抜性のみに興味を示す「政治的非常識層」がその支持の中心であると考えられるため、この図に入れていない(またその得票数も、前回3万票弱、今回4万票強とおおむね泡沫の域を出ていない)。
3】なぜ「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」は分離したのか
ではなぜ「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」は分離したのだろうか。本稿冒頭で示した通り、元来強烈な差別意識と排外主張を持った極右「行動する保守」は、相対的にやや弱い差別意識や排外主義的傾向を持つ「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に内包されていた。
その関係性はまるで「保守界隈・ネット右翼界隈」という巨大な連邦国家の中に、「行動する保守」という極右が高度な自治権を持つ自治政府として承認されているのに似ている。よってこれまで「保守界隈・ネット右翼界隈」は、あまりにも過激で、時として刑事事件にまで発展したヘイトスピーチやヘイトクライムを起こした「行動する保守」を微温的には承認するものの、例えば彼らの集会やイベントや抗議活動には同席しない、できるだけ対談を避ける、SNS上では「思想的には共感できる部分はあるが、やり方には賛同できない」などの微温的であいまいな共存関係を続けてきた(―勿論、いわゆる「保守論客」の中には、ストレートに在特会や日本第一党や桜井誠氏への支持を表明する者もいる)。
一方「行動する保守」側も、自らが「保守界隈・ネット右翼界隈」を苗床として発展してきた歴史的経緯を無視できないため(―例えば桜井氏は、その登場時期、右派系ネット放送局の『日本文化チャンネル桜』の常連であった)、彼らの生ぬるい言論だけのヘイトスピーチを「きれいごと保守」などと言って唾棄する姿勢を見せもするが、基本的には緩やかな連携状態にあった。事実、保守系雑誌『WiLL』『歴史通』(共にWAC)は、桜井氏に原稿を依頼し、記名原稿やインタビューが掲載されていることからも、この関係性は一目瞭然であろう。
しかし両者の微妙な関係性は決定的に瓦解した。現在となっては、「保守界隈・ネット右翼界隈」の中で圧倒的な影響力を持つ株式会社DHCが運営する動画チャンネル『虎ノ門ニュース』(以下DHCチャンネル)の生放送中に、都知事選に立候補中の桜井氏が、選挙カーで抗議活動を行い、たちまち出演者である保守系経済評論家(上念司)らが桜井氏に猛反発。事実上の「決定的な分裂・分離」が行われたのである(2020年6月24日)。これが「内紛」の簡単な概要である。
これにより、この期に及んで安倍政権支持の姿勢を鮮明にするいわゆる『DHCチャンネル』と、「シナ人を入国拒否しなかった安倍政権のせいで1000人もの日本人がコロナで死んだ」と主張し、歪んだ(?)安倍政権批判を鮮明にする『行動する保守』の関係は真っ二つに割れた。
4】「共通の敵」を失ったすえの分裂劇
炎のイメージ。(フォトACより)
もちろん、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、この桜井氏による「DHC”虎ノ門ニュース”生放送中の抗議活動」という、界隈を震撼させた事件だけが原因ではない。むしろこの事件は結果に過ぎないのである。そのもっと以前から、足掛け8年近く継続されている第二次安倍政権への評価をめぐって、保守界隈は「親安倍」と「反安倍」に分裂傾向が進んでいる。
「親安倍」は前述したとおり、動画再生回数やSNSでの引用回数で群を抜いて圧倒的に寡占的な『DHCチャンネル』で、この主張は第二次安倍政権誕生以前から一貫して変わらない安倍政権へのほぼ無批判な支持と追従である。一方、2010年代後半にCS放送部門から撤退して動画再生回数では『DHCチャンネル』に劣後する状況となった前掲『日本文化チャンネル桜』は、第二次安倍政権の進める(事実上の)移民政策(と彼らが主張する)をやり玉にして、「安倍晋三は日本を救う救世主」と謳っていたものを「安倍政権はグローバリズムに日本国家を売り渡す愚宰」と猛烈に批判して、現在では番組全体が完全に「反安倍」に「転向」した。
さらにその外縁部では、沖縄における反基地活動家らを無根拠に呪詛するいわゆる「沖縄保守」の内部で民事訴訟が乱舞するなど、こちらも事実上の内紛・分裂状態に至っている。
このような「保守界隈・ネット右翼界隈」の分裂劇は、第二次安倍政権が誕生するまでは全く無風であった。麻生政権が2009年の総選挙で惨敗して民主党(当時)の鳩山由紀夫内閣が誕生すると、「保守界隈・ネット右翼界隈」も「行動する保守」も、皆こぞって「打倒民主党政権」ののろしを上げ、一致連帯していた。その結束力は強力で、正しく毛利元就が言ったとされる「三本の矢」であった。
ところが第二次安倍政権が長期政権の様相を呈してくると、「共通の敵」を失った「保守界隈・ネット右翼界隈」はたちまち分裂する。すなわち、その中に包摂されていた高度な自治政府である「行動する保守」が、「保守界隈・ネット右翼界隈」と分離するのも当然の成り行きである。
民主党政権打倒のみを旗印にして、一致結束していた「保守界隈・ネット右翼界隈」は、実際のところE・バークの保守主義に傾倒するものから、憲法9条改正論者、反自虐史観(反東京裁判史観)、対米自立という比較的保守本流に近いもの。果ては単なる陰謀論者、差別主義者、在日コリアンに的を絞って嘲笑を繰り返すもの、基礎教養が何もないがデマを動画やSNSに垂れ流すことにより売名を図るもの。あるいはビジネスの為に保守業界に入り込んだもの、という本来到底一致団結することが不可能な(言い方は悪いが)烏合の衆だったのである。それが「共通の敵」である民主党政権を失ってほどなく、分裂や内紛を繰り返すようになったのは何も不思議なことではない。
このように、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、共通の敵を失った烏合の衆の内紛が原因であり、結果としてそれにより遠心分離器にかけられるかの如く「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が分離したことにより、より強い差別性と排外性を持った「行動する保守」が可視化され、その投票先が桜井誠氏一本に絞られたことにより、今回の18万票という数字が出来上がったのである。
この数字だけを表面上なぞると、いかにも東京で極右勢力が伸長しているかのように思えるが、実際はそうではない。彼らの背景にある離合集散の歴史を考えるとき、桜井誠氏の18万票は一過的には衝撃とはいえ単なる内紛の結果に過ぎないのである。
古谷経衡 | 作家/文筆家/評論家
7/6(月) 7:03
1】桜井誠氏、18万票獲得の衝撃
2020年の東京都知事選挙はふたを開けてみれば大方の予想通り、現職小池百合子氏が前回(2016年)の得票を大幅に上回る350万票以上を得て圧勝した。立憲・共産・社民から支援を受けた宇都宮健児氏は健闘したものの、約83万票と伸び悩んだ。れいわ新選組代表・山本太郎氏も健闘したが基礎票とみられる約66万票を固めたものの、こちらもやや伸び悩んだ展開だったことは否めない。
そんな中、私が最も注目したのは、前回都知事選に出馬し、約11万4000票を獲得した日本第一党党首で、在日特権を許さない市民の会(在特会)元会長の桜井誠氏が前回を6万票以上上回る約17万8000票を獲得して、22人の候補者のうち得票数で5番手につけたことだ。今回の東京都知事選の投票率が55%と、前回を約5%弱下回る投票率だったのにもかかわらず、この票の伸びは無視できない。
桜井氏は海外報道でも「極右」と名指しされ、長年在日コリアンへの「優遇(と彼らが主張するもの)」撤廃や、在日外国人への過激な排外的主張を訴え続けてきた。今回都知事選でも、新型コロナウイルスを「武漢肺炎」と呼び、中国人を「シナ人」、中国政府を「中共」と呼び変え、新型コロナウイルス感染阻止のためとして、中国人観光客の入国拒否や徹底的排斥を呼び掛けて選挙戦に臨んだ。
間違いなく桜井氏は、ゼロ年代から発生したネット右翼の中でも最も過激な「行動する保守」の中心人物であった。であるがゆえに、彼の得票は少なくとも東京における極右・排外主義者の動向を示すバロメーターと同一であると言って差し支えない。今回、桜井氏が約18万票を集めたことは衝撃といえる。
結論から先に言えば、桜井氏の約18万票得票は、東京において極右勢力が伸長した結果ではない。それまで「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に包摂され、まるで「自治政府」のように承認されてきた極右が、「内紛」の結果「保守界隈・ネット右翼界隈」から分離し、純化した結果、彼らの投票行動がより鮮明にあぶり出されたものである。
さてこの背景には何があるのだろうか。
2】4年前と今回における保守界隈・ネット右翼界隈の投票先の変遷
まず、桜井氏18万票得票の背景を読み解くには前回都知事選(2016年)における「保守界隈・ネット右翼界隈」の投票動向と今回都知事選(2020)の違いを点検する必要がある。前述したとおり、桜井誠氏を支持する極右層は、元来的にこの「保守界隈・ネット右翼界隈」に包摂される関係である。つまり巨大な「保守界隈・ネット右翼界隈」(筆者はその数を全国で200~250万人と推定している)があり、その中でも最も過激で排外主義的傾向を強固に持つものが「行動する保守」と呼ばれる存在である。
この二者は韓国や中国、在日コリアン等に極めて歪んだ差別的偏見を持つことについて共通しているものの、その濃淡には違いがある。つまり比較的薄い部分である「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に、濃い「行動する保守」がモザイク状に分布している状態であると理解していただきたい。
しかし後述するが、今回の都知事選挙では、この「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が、内紛の結果ほぼ完全に分離されたことにより、「行動する保守」が純化され、彼らがより主体的に投票行動として桜井氏に投票したことで、18万票という票数が出来上がったのだ。これを図にすると以下のようになる。
筆者制作
2016年の前回都知事選挙に於いて、「行動する保守」を含んだ「保守界隈・ネット右翼界隈」は、図にあるように自民党と、一時期ネット右翼から絶大な支持を得た「旧次世代の党」の事実上の継承政党である「日本のこころを大切にする党」が支援する増田寛也氏を強く支援し投票した。一方、小池百合子氏に対する敵愾心は旺盛だったものの、保守界隈の論客としても知名度の高かった中山恭子・中山成彬夫妻が小池氏率いる希望の党(当時)に入党したように、小池氏に対しても一定の票が流れたとみる。元来小池氏は改憲論者で核武装論をぶったこともあり、自民党の下野時代(2009-2012)には、頻繁に右派系市民団体の集会に顔を出していた。
一方、この「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に内包されていた最右翼の「行動する保守」は、その信条として桜井誠氏に投票する場合が多かったものの、「保守界隈・ネット右翼界隈」の主要支持先であった増田氏にも流れたと見る。このように、2016年都知事選挙では、「保守界隈・ネット右翼界隈」とその中に内包された「行動する保守」は、増田・小池・桜井に投票先が三分され、その厳密な鑑別は難しかった。
しかし今回の都知事選挙では、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が分離したことにより、「行動する保守」の投票先が桜井氏一本に絞られたとみるべきである。無論、「保守界隈・ネット右翼界隈」からも多少の流入はあったとみるべきではある。また今回の都知事選挙では、自民党が事実上小池氏を支援したために、反小池の旗色を鮮明にした「保守界隈・ネット右翼界隈」は投票すべき候補を見いだせず、一部が小池氏、一部が維新の会が支持する小野氏か、あるいは棄権に回ったのではないかと考えることもできる。
ちなみに2016年都知事選挙でも2020年都知事選挙でも立候補している立花孝志氏は、2019年における私の論考”『NHKから国民を守る党』はなぜ議席を得たのか?”の通り、「NHKから国民を守る党(今回選挙ではホリエモン新党)」は、ネット右翼的傾向は弱く、それよりもYouTubeでの話題性、政見放送の奇抜性のみに興味を示す「政治的非常識層」がその支持の中心であると考えられるため、この図に入れていない(またその得票数も、前回3万票弱、今回4万票強とおおむね泡沫の域を出ていない)。
3】なぜ「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」は分離したのか
ではなぜ「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」は分離したのだろうか。本稿冒頭で示した通り、元来強烈な差別意識と排外主張を持った極右「行動する保守」は、相対的にやや弱い差別意識や排外主義的傾向を持つ「保守界隈・ネット右翼界隈」の中に内包されていた。
その関係性はまるで「保守界隈・ネット右翼界隈」という巨大な連邦国家の中に、「行動する保守」という極右が高度な自治権を持つ自治政府として承認されているのに似ている。よってこれまで「保守界隈・ネット右翼界隈」は、あまりにも過激で、時として刑事事件にまで発展したヘイトスピーチやヘイトクライムを起こした「行動する保守」を微温的には承認するものの、例えば彼らの集会やイベントや抗議活動には同席しない、できるだけ対談を避ける、SNS上では「思想的には共感できる部分はあるが、やり方には賛同できない」などの微温的であいまいな共存関係を続けてきた(―勿論、いわゆる「保守論客」の中には、ストレートに在特会や日本第一党や桜井誠氏への支持を表明する者もいる)。
一方「行動する保守」側も、自らが「保守界隈・ネット右翼界隈」を苗床として発展してきた歴史的経緯を無視できないため(―例えば桜井氏は、その登場時期、右派系ネット放送局の『日本文化チャンネル桜』の常連であった)、彼らの生ぬるい言論だけのヘイトスピーチを「きれいごと保守」などと言って唾棄する姿勢を見せもするが、基本的には緩やかな連携状態にあった。事実、保守系雑誌『WiLL』『歴史通』(共にWAC)は、桜井氏に原稿を依頼し、記名原稿やインタビューが掲載されていることからも、この関係性は一目瞭然であろう。
しかし両者の微妙な関係性は決定的に瓦解した。現在となっては、「保守界隈・ネット右翼界隈」の中で圧倒的な影響力を持つ株式会社DHCが運営する動画チャンネル『虎ノ門ニュース』(以下DHCチャンネル)の生放送中に、都知事選に立候補中の桜井氏が、選挙カーで抗議活動を行い、たちまち出演者である保守系経済評論家(上念司)らが桜井氏に猛反発。事実上の「決定的な分裂・分離」が行われたのである(2020年6月24日)。これが「内紛」の簡単な概要である。
これにより、この期に及んで安倍政権支持の姿勢を鮮明にするいわゆる『DHCチャンネル』と、「シナ人を入国拒否しなかった安倍政権のせいで1000人もの日本人がコロナで死んだ」と主張し、歪んだ(?)安倍政権批判を鮮明にする『行動する保守』の関係は真っ二つに割れた。
4】「共通の敵」を失ったすえの分裂劇
炎のイメージ。(フォトACより)
もちろん、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、この桜井氏による「DHC”虎ノ門ニュース”生放送中の抗議活動」という、界隈を震撼させた事件だけが原因ではない。むしろこの事件は結果に過ぎないのである。そのもっと以前から、足掛け8年近く継続されている第二次安倍政権への評価をめぐって、保守界隈は「親安倍」と「反安倍」に分裂傾向が進んでいる。
「親安倍」は前述したとおり、動画再生回数やSNSでの引用回数で群を抜いて圧倒的に寡占的な『DHCチャンネル』で、この主張は第二次安倍政権誕生以前から一貫して変わらない安倍政権へのほぼ無批判な支持と追従である。一方、2010年代後半にCS放送部門から撤退して動画再生回数では『DHCチャンネル』に劣後する状況となった前掲『日本文化チャンネル桜』は、第二次安倍政権の進める(事実上の)移民政策(と彼らが主張する)をやり玉にして、「安倍晋三は日本を救う救世主」と謳っていたものを「安倍政権はグローバリズムに日本国家を売り渡す愚宰」と猛烈に批判して、現在では番組全体が完全に「反安倍」に「転向」した。
さらにその外縁部では、沖縄における反基地活動家らを無根拠に呪詛するいわゆる「沖縄保守」の内部で民事訴訟が乱舞するなど、こちらも事実上の内紛・分裂状態に至っている。
このような「保守界隈・ネット右翼界隈」の分裂劇は、第二次安倍政権が誕生するまでは全く無風であった。麻生政権が2009年の総選挙で惨敗して民主党(当時)の鳩山由紀夫内閣が誕生すると、「保守界隈・ネット右翼界隈」も「行動する保守」も、皆こぞって「打倒民主党政権」ののろしを上げ、一致連帯していた。その結束力は強力で、正しく毛利元就が言ったとされる「三本の矢」であった。
ところが第二次安倍政権が長期政権の様相を呈してくると、「共通の敵」を失った「保守界隈・ネット右翼界隈」はたちまち分裂する。すなわち、その中に包摂されていた高度な自治政府である「行動する保守」が、「保守界隈・ネット右翼界隈」と分離するのも当然の成り行きである。
民主党政権打倒のみを旗印にして、一致結束していた「保守界隈・ネット右翼界隈」は、実際のところE・バークの保守主義に傾倒するものから、憲法9条改正論者、反自虐史観(反東京裁判史観)、対米自立という比較的保守本流に近いもの。果ては単なる陰謀論者、差別主義者、在日コリアンに的を絞って嘲笑を繰り返すもの、基礎教養が何もないがデマを動画やSNSに垂れ流すことにより売名を図るもの。あるいはビジネスの為に保守業界に入り込んだもの、という本来到底一致団結することが不可能な(言い方は悪いが)烏合の衆だったのである。それが「共通の敵」である民主党政権を失ってほどなく、分裂や内紛を繰り返すようになったのは何も不思議なことではない。
このように、「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」の分離は、共通の敵を失った烏合の衆の内紛が原因であり、結果としてそれにより遠心分離器にかけられるかの如く「保守界隈・ネット右翼界隈」と「行動する保守」が分離したことにより、より強い差別性と排外性を持った「行動する保守」が可視化され、その投票先が桜井誠氏一本に絞られたことにより、今回の18万票という数字が出来上がったのである。
この数字だけを表面上なぞると、いかにも東京で極右勢力が伸長しているかのように思えるが、実際はそうではない。彼らの背景にある離合集散の歴史を考えるとき、桜井誠氏の18万票は一過的には衝撃とはいえ単なる内紛の結果に過ぎないのである。
インドネシアには「ジョヨボヨ王の予言」という伝承があります。
12世紀前半、東ジャワのクディリ王国のジョヨボヨ王が宮廷詩人に命じて書き残したもので、インドネシアを苦しめる“白い人びと”を、北からやってきた“黄色い人びと”が追い出してくれるという次のような「予言」です。
【ジョヨボヨ王の予言】
我が王国は、どこからか現れる白い人びとに何百年も支配されるだろう。彼らは魔法の杖を持ち、離れた距離から人を殺すことができる。
しかしやがて、北の方から白い衣を身に着けた黄色い人びとが攻めてきて、白い人びとを追い出してくれる。
黄色い人びとは我が王国を支配するが、それは短い期間で、トウモロコシの花の咲く前に去っていく…
この「予言」はオランダ植民地時代にインドネシアの民衆の間に広まり、深く信じられるようになっていました。17世紀初頭から300年の長きに亘って続く“白い人びと”、すなわちオランダの支配に苦しめられていた民衆は、予言に示された解放者の出現を待ち望んでいたのであります。一部で独立を求める運動も起きましたが、オランダはこれを厳しく弾圧、インドネシア人の集会を禁止し、道ばたで3人以上が話しただけで処罰するほどでありました。
このオランダの支配を打ち破ったのが、北からやってきた“黄色い人びと”、すなわち日本軍だったのです。
落下傘部隊の空から舞い降りる姿は、あたかも黄色い人びとが白い衣(落下傘)を纏って降りてくる様に見えて、インドネシアの人々は、予言のとおり、神の兵隊が降りてきたと言って驚喜したと伝えられています。
1942年3月1日、ジャワ島に上陸した今村均中将率いる第16軍は、僅か9日間でオランダ軍を制圧、“白い人びと”を追い出してくれたのであります。
インドネシア民衆は「ジョヨボヨ王の予言が実現した」と歓喜し、各地でメラプティ(後にインドネシア国旗となる紅白旗)を振って日本軍を迎え入れました。
その後、仁将として名高い今村中将による軍政統治が行われますが、それは、“白い人びと”の支配とは明らかに異なっていました。
日本軍はまず、流刑されていたスカルノやハッタら独立運動の指導者を解放し、迫害されていたイスラム教の存在を認めて宗教活動を自由としました。
また、オランダによる愚民政策を廃し、民衆の教育制度を充実し、農業指導や軍事指導にも努めました。
それまで公用語として強制されていたオランダ語と英語を廃し、多くの言語に分かれていたインドネシアに共通語を定めて、民衆の意思統一を図ることにも力を入れました。
そして1945年8月15日、三年半にわたる“黄色い人びと”の支配は終わりました。
800年前にジョヨボヨ王が予言した通り、日本軍が耕しインドネシア人が種を蒔いた畑に、トウモロコシが育つまでの短い期間でありました。
12世紀前半、東ジャワのクディリ王国のジョヨボヨ王が宮廷詩人に命じて書き残したもので、インドネシアを苦しめる“白い人びと”を、北からやってきた“黄色い人びと”が追い出してくれるという次のような「予言」です。
【ジョヨボヨ王の予言】
我が王国は、どこからか現れる白い人びとに何百年も支配されるだろう。彼らは魔法の杖を持ち、離れた距離から人を殺すことができる。
しかしやがて、北の方から白い衣を身に着けた黄色い人びとが攻めてきて、白い人びとを追い出してくれる。
黄色い人びとは我が王国を支配するが、それは短い期間で、トウモロコシの花の咲く前に去っていく…
この「予言」はオランダ植民地時代にインドネシアの民衆の間に広まり、深く信じられるようになっていました。17世紀初頭から300年の長きに亘って続く“白い人びと”、すなわちオランダの支配に苦しめられていた民衆は、予言に示された解放者の出現を待ち望んでいたのであります。一部で独立を求める運動も起きましたが、オランダはこれを厳しく弾圧、インドネシア人の集会を禁止し、道ばたで3人以上が話しただけで処罰するほどでありました。
このオランダの支配を打ち破ったのが、北からやってきた“黄色い人びと”、すなわち日本軍だったのです。
落下傘部隊の空から舞い降りる姿は、あたかも黄色い人びとが白い衣(落下傘)を纏って降りてくる様に見えて、インドネシアの人々は、予言のとおり、神の兵隊が降りてきたと言って驚喜したと伝えられています。
1942年3月1日、ジャワ島に上陸した今村均中将率いる第16軍は、僅か9日間でオランダ軍を制圧、“白い人びと”を追い出してくれたのであります。
インドネシア民衆は「ジョヨボヨ王の予言が実現した」と歓喜し、各地でメラプティ(後にインドネシア国旗となる紅白旗)を振って日本軍を迎え入れました。
その後、仁将として名高い今村中将による軍政統治が行われますが、それは、“白い人びと”の支配とは明らかに異なっていました。
日本軍はまず、流刑されていたスカルノやハッタら独立運動の指導者を解放し、迫害されていたイスラム教の存在を認めて宗教活動を自由としました。
また、オランダによる愚民政策を廃し、民衆の教育制度を充実し、農業指導や軍事指導にも努めました。
それまで公用語として強制されていたオランダ語と英語を廃し、多くの言語に分かれていたインドネシアに共通語を定めて、民衆の意思統一を図ることにも力を入れました。
そして1945年8月15日、三年半にわたる“黄色い人びと”の支配は終わりました。
800年前にジョヨボヨ王が予言した通り、日本軍が耕しインドネシア人が種を蒔いた畑に、トウモロコシが育つまでの短い期間でありました。
2020年3月1日(日)
「スーパーシティ」法案個人情報一元化進む恐れ
安倍政権が今国会での成立を目指す「スーパーシティ」法案(国家戦略特区法改定案)。人工知能(AI)やビッグデータなど最先端の技術を活用し、未来の暮らしを先行実現する「まるごと未来都市」をつくるといいます。しかし、取材を進めると深刻な問題点が見えてきました。(藤原直)
域内の完全キャッシュレス化や
マイナンバーカードへの決済機能のひもづけ、
ネットを通じた遠隔医療、
ドローンによる薬の配送、
地域交通の自動走行化、
習熟度に応じた遠隔教育の本格的導入…。
内閣府の資料に示されたスーパーシティでの取り組み案です。
政府は、スーパーシティとは、複数の先端的サービスを域内で同時に実現し、「社会的課題の解決を図る生活実装実験」だと説明しています。
やりたい放題に 内田聖子さん
住民を巻き込んだ「実験」に問題はないのでしょうか。
「大いにあります」。アジア太平洋資料センターの共同代表・内田聖子さんは強調します。なかでも、複数の主体からデータを収集し、先端的サービスの実現を支える「データ連携基盤」の整備事業がスーパーシティ構想の「核」だと指摘します。
「国や自治体、警察、病院、企業が、いまは別々に持っている情報がありますよね。例えば、納税の状態や既往症、位置・移動情報や商品の購買歴といった個人情報です。これらの情報の垣根が壊され、一元化が進む恐れが強いと思います」
法案には、基盤整備事業の実施主体となった民間企業などが、国や自治体に、それらの機関が保有するデータの提供を求めることができるという規定も盛り込まれています。
「あらゆる行動が追跡できてしまう時代です。『安全に管理するから大丈夫』と政府は言いますが、それ以前の問題として、あらゆるデータが一元的に収集されること自体を問題とすべきです。市民の側もよく議論を深めておかないと企業や権力のやりたい放題になってしまいます」(内田さん)
日本共産党の清水忠史衆院議員も「大量の個人情報と顔認証、マイナンバーとの結びつきが強化されれば、住民に対する管理・監視にもつながり、プライバシーや人権の視点から非常に問題があります」と指摘。「官民から漏えいが相次いでいる個人情報も、保護の強化こそ求められます」と話します。
総理案件で緩和
内田さんが法案に盛り込まれた、もう一つの危険な仕組みとしてあげるのが、首相のトップダウンで包括的な規制緩和を進める仕組みです。
国の選定を受けた自治体が民間企業や内閣府と「区域会議」を設け、構想の実現に必要な規制緩和などの計画案を策定。提案を受け取った首相が、関係省庁に特例措置の検討を要請したり、首相が議長を務める特区諮問会議からも勧告を行ったりします。
「『総理案件』として各省にまとめてプレッシャーをかけるわけです。計画には住民の意向を踏まえるとしていますが、それをどう保障するのかはまったく示されていません」(内田さん)
昨年6月、内閣府が大阪市で開いたスーパーシティ関連フォーラムには200社を超える企業が参加。竹中平蔵・パソナグループ会長が基調講演に立ちました。同氏は2018年10月、座長を務める政府の有識者懇談会で、スーパーシティでは「国・自治体・企業で構成するミニ独立政府」を運営主体とすべきだとする「原則」を示しています。そこでは、主権者である住民は「参画」の機会が与えられるにすぎない存在におとしめられています。
本質から目そらす幻想
自治体政策に詳しい奈良女子大学の中山徹教授の話 スーパーシティは、国際競争の中での先端技術での遅れに焦る日本の財界と政府が新たな収益源の開発を狙って推進している都市戦略です。そこでは、住民が自治能力のある市民としてではなく、企業と行政から生活を管理され、消費を引き出される対象と位置付けられています。政府は、先端技術の発達だけで人口減少や少子高齢化などの社会的課題が解決するかのように描いていますが、問題の本質から目をそらす幻想です。まずは第1次産業の振興や子育て支援など当たり前の政策を進める中で、先端技術は、市民生活に役立つよう使うべきです。
>問題の本質から目をそらす幻想です
そりゃ、警察監視対象である共産党からは都合の悪い法案でしょう。お金の動き、警察情報も個人情報に紐づけされれば監視強化になりますし。
住民の情報がしっかり守られるのか、とか、企業や行政に生活を管理される、などと言う事こそ、問題の本質から目をそらす幻想ですよ。
こんな自己都合を公益にすり替えて提言するから、どこまでも信頼されない。また、それを自己客観視できないのが日本の野党です。
「スーパーシティ」法案個人情報一元化進む恐れ
安倍政権が今国会での成立を目指す「スーパーシティ」法案(国家戦略特区法改定案)。人工知能(AI)やビッグデータなど最先端の技術を活用し、未来の暮らしを先行実現する「まるごと未来都市」をつくるといいます。しかし、取材を進めると深刻な問題点が見えてきました。(藤原直)
域内の完全キャッシュレス化や
マイナンバーカードへの決済機能のひもづけ、
ネットを通じた遠隔医療、
ドローンによる薬の配送、
地域交通の自動走行化、
習熟度に応じた遠隔教育の本格的導入…。
内閣府の資料に示されたスーパーシティでの取り組み案です。
政府は、スーパーシティとは、複数の先端的サービスを域内で同時に実現し、「社会的課題の解決を図る生活実装実験」だと説明しています。
やりたい放題に 内田聖子さん
住民を巻き込んだ「実験」に問題はないのでしょうか。
「大いにあります」。アジア太平洋資料センターの共同代表・内田聖子さんは強調します。なかでも、複数の主体からデータを収集し、先端的サービスの実現を支える「データ連携基盤」の整備事業がスーパーシティ構想の「核」だと指摘します。
「国や自治体、警察、病院、企業が、いまは別々に持っている情報がありますよね。例えば、納税の状態や既往症、位置・移動情報や商品の購買歴といった個人情報です。これらの情報の垣根が壊され、一元化が進む恐れが強いと思います」
法案には、基盤整備事業の実施主体となった民間企業などが、国や自治体に、それらの機関が保有するデータの提供を求めることができるという規定も盛り込まれています。
「あらゆる行動が追跡できてしまう時代です。『安全に管理するから大丈夫』と政府は言いますが、それ以前の問題として、あらゆるデータが一元的に収集されること自体を問題とすべきです。市民の側もよく議論を深めておかないと企業や権力のやりたい放題になってしまいます」(内田さん)
日本共産党の清水忠史衆院議員も「大量の個人情報と顔認証、マイナンバーとの結びつきが強化されれば、住民に対する管理・監視にもつながり、プライバシーや人権の視点から非常に問題があります」と指摘。「官民から漏えいが相次いでいる個人情報も、保護の強化こそ求められます」と話します。
総理案件で緩和
内田さんが法案に盛り込まれた、もう一つの危険な仕組みとしてあげるのが、首相のトップダウンで包括的な規制緩和を進める仕組みです。
国の選定を受けた自治体が民間企業や内閣府と「区域会議」を設け、構想の実現に必要な規制緩和などの計画案を策定。提案を受け取った首相が、関係省庁に特例措置の検討を要請したり、首相が議長を務める特区諮問会議からも勧告を行ったりします。
「『総理案件』として各省にまとめてプレッシャーをかけるわけです。計画には住民の意向を踏まえるとしていますが、それをどう保障するのかはまったく示されていません」(内田さん)
昨年6月、内閣府が大阪市で開いたスーパーシティ関連フォーラムには200社を超える企業が参加。竹中平蔵・パソナグループ会長が基調講演に立ちました。同氏は2018年10月、座長を務める政府の有識者懇談会で、スーパーシティでは「国・自治体・企業で構成するミニ独立政府」を運営主体とすべきだとする「原則」を示しています。そこでは、主権者である住民は「参画」の機会が与えられるにすぎない存在におとしめられています。
本質から目そらす幻想
自治体政策に詳しい奈良女子大学の中山徹教授の話 スーパーシティは、国際競争の中での先端技術での遅れに焦る日本の財界と政府が新たな収益源の開発を狙って推進している都市戦略です。そこでは、住民が自治能力のある市民としてではなく、企業と行政から生活を管理され、消費を引き出される対象と位置付けられています。政府は、先端技術の発達だけで人口減少や少子高齢化などの社会的課題が解決するかのように描いていますが、問題の本質から目をそらす幻想です。まずは第1次産業の振興や子育て支援など当たり前の政策を進める中で、先端技術は、市民生活に役立つよう使うべきです。
>問題の本質から目をそらす幻想です
そりゃ、警察監視対象である共産党からは都合の悪い法案でしょう。お金の動き、警察情報も個人情報に紐づけされれば監視強化になりますし。
住民の情報がしっかり守られるのか、とか、企業や行政に生活を管理される、などと言う事こそ、問題の本質から目をそらす幻想ですよ。
こんな自己都合を公益にすり替えて提言するから、どこまでも信頼されない。また、それを自己客観視できないのが日本の野党です。
“日本一の親不孝者” 籠池佳茂氏は 森友事件を何も知らない
相澤冬樹 | 大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)3/20(金) 10:37
森友学園の籠池前理事長夫妻の長男、籠池佳茂氏。彼がツイッターで大騒ぎしています。森友事件で命を絶った財務省近畿財務局職員、赤木俊夫さんの遺書と手記が公表され、数多の新事実が明らかになったから。何ら真相解明が行われていないこと、遺族が真相解明を望んでいることが明らかになったからです。ところが、その騒ぎ方があまりにもけしからんのです。
「この話は解明されている。今更蒸し返す話ではない」と書いた上で、あろうことかこんなことを書いています。「故人は既に労災認定されている」…赤木さんは公務員だったので労災ではなく公務災害の認定ですが、まあそれは彼の知識がないだけだからよしとしましょう。それより彼は、赤木さんが公務災害と認定されたから、妻が補償金をもらったから、もういいだろうと言いたいのでしょうが、そんな発言が許されますか?
そもそも妻の昌子さん(仮名)はお金がほしくて裁判を起こしたのではありません。俊夫さんがやらされた森友事件の公文書改ざんを巡る真相を知りたいからです。訴状にもそう明記されていますし、報道もされています。彼は訴状はもちろん、ろくに記事も読んでいないとしか思えません。
改ざんを迫られ命を絶った赤木俊夫さんと遺族への冒涜だ(妻提供)
さらに彼はこんなことを訴えています。「本当に森友の真相究明をするなら私を国会に呼んで下さい。事の経緯を全て話します」…もはや看過できないレベルに達しています。
彼のツイッター画面には「森友学園騒動は朝日新聞社の捏造報道が発端です。総理夫妻に責任はありません。左翼に洗脳された両親を救い出したい」と書かれています。私が「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」という記事を3月9日、Yahoo!ニュースに出した際、複数の方から「佳茂氏に話を聞くべきだ」という趣旨のツイートを頂き、それに何人もの方が「いいね」やリツイートをしています。
でも、佳茂氏は森友事件について何を語れるというのでしょう?
佳茂氏は森友事件を語る資格はない
そもそも彼は長らく両親と絶縁していました。森友事件の焦点となる国有地の取り引きと不当な値引きが行われた頃は一切関わっていませんから、その実態を知るよしもありません。
彼が両親の元に戻ってきたのは3年前。朝日新聞の報道が端緒になって森友事件が政治問題になり、森友学園が小学校の認可申請を取り下げた時です。朝日新聞の報道は彼が言うような“捏造”ではもちろんなく、朝日新聞はその後、森友事件をめぐる公文書改ざんの報道で新聞協会賞を受賞しています。その改ざんを近畿財務局で無理矢理やらされたのが赤木俊夫さんでした。
佳茂氏が両親の元に戻ってしばらくして、籠池前理事長が国会で証人喚問されます。関係者が集まって事前に対応を協議しましたが、彼は話にちっとも加わろうとしなかったと、協議に参加した人が証言しています。学園の運営も理事長を継いだ長女の町浪さんが中心で、彼はまったくタッチしていません。
つまり佳茂氏は森友事件の真相、国有地値下げの経緯を何も知らないし、森友学園の内情も知りません。森友事件について「総理夫妻に責任はありません」と断言できる根拠は何もないし、「この話は解明されている」と言える根拠も何も知らないはずです。知らないのに知っているかのような本を出すのは読者への裏切り行為、もっと言えば“詐欺商法”と非難されても仕方ないでしょう。彼は語る資格のないことを語っているのです。
安倍首相夫妻と森友学園の関わりは…
安倍首相の妻の安倍昭恵さんが問題の国有地に建つ小学校の名誉校長に就任していたことは紛れもない事実です。昭恵夫人付きの政府職員がこの国有地をめぐり財務省に連絡を取ったことを示すFAXがあるのも間違いなく事実です。
安倍昭恵首相夫人は何度も森友学園を訪れ小学校の名誉校長を引き受けた(関係者提供)
籠池前理事長は「昭恵夫人を通して小学校について安倍首相にも相談していた。昭恵夫人が『安倍晋三からです』とはっきり言いながら100万円を寄付してくれたこともある」と証言しています。安倍首相はこれを否定していますが、真相は藪の中です。
これだけの状況があるのですから、「責任はない」と言い切るにはそれなりのきちんとした根拠が必要です。しかし佳茂氏はその根拠を示していません。
両親支持から180度態度を変えた
私は佳茂氏に一度お会いしたことがあります。籠池夫妻が補助金事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され約300日間も拘置所に勾留されていた時。彼は大阪地検前で支持者の人たちと抗議行動に参加。「両親をすぐに出せ!」と声を上げました。
この時、私はNHKの記者として取材にあたっていました。抗議行動後、彼と短時間ですが話す機会があり、名刺をお渡ししました。当時、彼はまだ両親の側に立って安倍政権を批判していました。その後、態度を180度変えて、安倍首相支持、両親批判に回ったのです。
もっとも籠池夫妻自身、もともと安倍首相シンパだったのが、事件をきっかけに安倍首相に切られたとして180度態度を変え、今では安倍首相批判の急先鋒に立っているわけですが。
佳茂氏から対談の申し込みはない。逃げているのは彼の方
私が3月9日にYahoo!ニュースに出した「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」という記事に対し、「佳茂さんが対談を申し込んでいるのになぜ応じないのか?」という趣旨のツイートを頂きました。同趣旨のツイートはこれまでも頂いているのですが、私は彼から直接対談の申し入れを受けたことはありません。
彼はツイッターで、東京新聞の望月衣朔子記者、朝日新聞の南彰記者(現新聞労連委員長)と私の3人との対談を提案したことがあるようです。しかし私は対談について彼から何も受け取ったことはないし、電話でもメールでも申し出を受けたことはありません。接触もありません。にも関わらず私が「対談から逃げた」と思っている方が多いようです。
対談に限らず、他人に何かを依頼したり提案したりする場合は、直接相手に申し入れるのが社会人の常識というものです。彼はそういう常識を持ち合わせないのでしょうか? あるいは本当に対談に応じられると困るから、彼の方こそ逃げているのでしょう。
佳茂氏は両親に巨額の借金を返すべき
佳茂氏にはさらに重大な疑問があります。籠池前理事長は2月、補助金詐欺事件の一審判決を前にライターの赤澤竜也氏と共に「国策不捜査」という本を出しました。その本によると、そもそも籠池夫妻が佳茂氏と絶縁したのは彼が事業名目で夫妻に借りた2500万円を返済しなかったから。森友事件が起きて彼が戻ってからも、夫妻が将来、補助金事件の保釈金にあてようと預けた現金のうち900万円を使い込んでしまったというのです。
これが事実なら佳茂氏は一刻も早く両親に返済すべきです。両親は保釈金や裁判費用の工面で苦労しているのですから。違うというならきちんと反論すべきですが、彼がこの件で反論したという話は聞いたことがありません。
親に“たかる”「日本一の親不孝者」
ですが実際に彼がしているのは「両親は安倍首相に謝れ」と言い募ること。象徴的だったのは安倍首相が去年の参議院選挙の応援で大阪に街頭演説に来た時。籠池夫妻が演説会場を訪れると、佳茂氏は「おい、籠池!「安倍さんに謝れ!」長男・佳茂より」というプラカードを掲げて、両親が演説を聞くのを妨害しました。両親を呼び捨てにするプラカードを掲げて…
籠池夫妻については、今のスタンスを評価する声、かつての教育方針や言動を批判する声、様々にあります。それについて私の考えはYahoo!ニュースに出した先の記事に書いた通りです。以下にリンクを貼りますが、一言で言うと「どちらにもくみせず、あくまで籠池夫妻への捜査や裁判が不当なものでないかという視点で取材する」というものです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20200309-00166759/
長男、佳茂氏について私が籠池前理事長に尋ねると、ぽつりと「お恥ずかしい限り。不徳の致すところです」という答えが返ってきました。自らを恥じ入るばかりで長男を責める言葉はありません。親として我が子を悪くは言いたくないという思いがにじんでいました。
一方、佳茂氏の言動は、両親に借りたお金を返さない、預かった資金を使い込む、両親が“洗脳されている”と公然と批判する、両親を貶める形で名前を使って本を出す…これらのことが事実なら「親にたかっている」と言われても当然の行為ではないでしょうか? 違うと反論しないのなら事実だとみなされても仕方ないでしょう。
そんな佳茂氏には謹んで“日本一の親不孝者”という称号を贈りたいと思います。いささか時代がかっていますが、これほど彼にふさわしい言葉はないでしょう。佳茂氏は恥じ入って発言を慎むべきです。もっと言えば、あなたを信じて本を買った皆さんにおわびして返金すべきです。少なくとも印税収入で早く両親に返済すべきです。
それでも、彼が謝ってくれば、籠池夫妻はまた受け入れるのでしょう。親心で。
【執筆・相澤冬樹】
相澤冬樹
大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)
1962年宮崎県生まれ。1987年NHK記者に。山口、神戸、東京、徳島、大阪で勤務。神戸で阪神・淡路大震災を取材。大阪でJR福知山線脱線事故を取材。大阪司法記者クラブ担当の2017年に森友事件に遭遇して取材を進めるが、2018年記者を外されてNHKを退職。この時の経緯を「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)という本にまとめた。現在、大阪日日新聞に務めながらYahoo!ニュースをはじめ日刊ゲンダイや週刊文春など様々な媒体で記事を書いている。
後に、籠池夫妻は長男の説得で左翼の洗脳から解けている。
動画
相澤氏の心中はいかばかりか。
相澤冬樹 | 大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)3/20(金) 10:37
森友学園の籠池前理事長夫妻の長男、籠池佳茂氏。彼がツイッターで大騒ぎしています。森友事件で命を絶った財務省近畿財務局職員、赤木俊夫さんの遺書と手記が公表され、数多の新事実が明らかになったから。何ら真相解明が行われていないこと、遺族が真相解明を望んでいることが明らかになったからです。ところが、その騒ぎ方があまりにもけしからんのです。
「この話は解明されている。今更蒸し返す話ではない」と書いた上で、あろうことかこんなことを書いています。「故人は既に労災認定されている」…赤木さんは公務員だったので労災ではなく公務災害の認定ですが、まあそれは彼の知識がないだけだからよしとしましょう。それより彼は、赤木さんが公務災害と認定されたから、妻が補償金をもらったから、もういいだろうと言いたいのでしょうが、そんな発言が許されますか?
そもそも妻の昌子さん(仮名)はお金がほしくて裁判を起こしたのではありません。俊夫さんがやらされた森友事件の公文書改ざんを巡る真相を知りたいからです。訴状にもそう明記されていますし、報道もされています。彼は訴状はもちろん、ろくに記事も読んでいないとしか思えません。
改ざんを迫られ命を絶った赤木俊夫さんと遺族への冒涜だ(妻提供)
さらに彼はこんなことを訴えています。「本当に森友の真相究明をするなら私を国会に呼んで下さい。事の経緯を全て話します」…もはや看過できないレベルに達しています。
彼のツイッター画面には「森友学園騒動は朝日新聞社の捏造報道が発端です。総理夫妻に責任はありません。左翼に洗脳された両親を救い出したい」と書かれています。私が「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」という記事を3月9日、Yahoo!ニュースに出した際、複数の方から「佳茂氏に話を聞くべきだ」という趣旨のツイートを頂き、それに何人もの方が「いいね」やリツイートをしています。
でも、佳茂氏は森友事件について何を語れるというのでしょう?
佳茂氏は森友事件を語る資格はない
そもそも彼は長らく両親と絶縁していました。森友事件の焦点となる国有地の取り引きと不当な値引きが行われた頃は一切関わっていませんから、その実態を知るよしもありません。
彼が両親の元に戻ってきたのは3年前。朝日新聞の報道が端緒になって森友事件が政治問題になり、森友学園が小学校の認可申請を取り下げた時です。朝日新聞の報道は彼が言うような“捏造”ではもちろんなく、朝日新聞はその後、森友事件をめぐる公文書改ざんの報道で新聞協会賞を受賞しています。その改ざんを近畿財務局で無理矢理やらされたのが赤木俊夫さんでした。
佳茂氏が両親の元に戻ってしばらくして、籠池前理事長が国会で証人喚問されます。関係者が集まって事前に対応を協議しましたが、彼は話にちっとも加わろうとしなかったと、協議に参加した人が証言しています。学園の運営も理事長を継いだ長女の町浪さんが中心で、彼はまったくタッチしていません。
つまり佳茂氏は森友事件の真相、国有地値下げの経緯を何も知らないし、森友学園の内情も知りません。森友事件について「総理夫妻に責任はありません」と断言できる根拠は何もないし、「この話は解明されている」と言える根拠も何も知らないはずです。知らないのに知っているかのような本を出すのは読者への裏切り行為、もっと言えば“詐欺商法”と非難されても仕方ないでしょう。彼は語る資格のないことを語っているのです。
安倍首相夫妻と森友学園の関わりは…
安倍首相の妻の安倍昭恵さんが問題の国有地に建つ小学校の名誉校長に就任していたことは紛れもない事実です。昭恵夫人付きの政府職員がこの国有地をめぐり財務省に連絡を取ったことを示すFAXがあるのも間違いなく事実です。
安倍昭恵首相夫人は何度も森友学園を訪れ小学校の名誉校長を引き受けた(関係者提供)
籠池前理事長は「昭恵夫人を通して小学校について安倍首相にも相談していた。昭恵夫人が『安倍晋三からです』とはっきり言いながら100万円を寄付してくれたこともある」と証言しています。安倍首相はこれを否定していますが、真相は藪の中です。
これだけの状況があるのですから、「責任はない」と言い切るにはそれなりのきちんとした根拠が必要です。しかし佳茂氏はその根拠を示していません。
両親支持から180度態度を変えた
私は佳茂氏に一度お会いしたことがあります。籠池夫妻が補助金事件で大阪地検特捜部に逮捕・起訴され約300日間も拘置所に勾留されていた時。彼は大阪地検前で支持者の人たちと抗議行動に参加。「両親をすぐに出せ!」と声を上げました。
この時、私はNHKの記者として取材にあたっていました。抗議行動後、彼と短時間ですが話す機会があり、名刺をお渡ししました。当時、彼はまだ両親の側に立って安倍政権を批判していました。その後、態度を180度変えて、安倍首相支持、両親批判に回ったのです。
もっとも籠池夫妻自身、もともと安倍首相シンパだったのが、事件をきっかけに安倍首相に切られたとして180度態度を変え、今では安倍首相批判の急先鋒に立っているわけですが。
佳茂氏から対談の申し込みはない。逃げているのは彼の方
私が3月9日にYahoo!ニュースに出した「近畿財務局職員の三回忌に森友事件の本丸を考える」という記事に対し、「佳茂さんが対談を申し込んでいるのになぜ応じないのか?」という趣旨のツイートを頂きました。同趣旨のツイートはこれまでも頂いているのですが、私は彼から直接対談の申し入れを受けたことはありません。
彼はツイッターで、東京新聞の望月衣朔子記者、朝日新聞の南彰記者(現新聞労連委員長)と私の3人との対談を提案したことがあるようです。しかし私は対談について彼から何も受け取ったことはないし、電話でもメールでも申し出を受けたことはありません。接触もありません。にも関わらず私が「対談から逃げた」と思っている方が多いようです。
対談に限らず、他人に何かを依頼したり提案したりする場合は、直接相手に申し入れるのが社会人の常識というものです。彼はそういう常識を持ち合わせないのでしょうか? あるいは本当に対談に応じられると困るから、彼の方こそ逃げているのでしょう。
佳茂氏は両親に巨額の借金を返すべき
佳茂氏にはさらに重大な疑問があります。籠池前理事長は2月、補助金詐欺事件の一審判決を前にライターの赤澤竜也氏と共に「国策不捜査」という本を出しました。その本によると、そもそも籠池夫妻が佳茂氏と絶縁したのは彼が事業名目で夫妻に借りた2500万円を返済しなかったから。森友事件が起きて彼が戻ってからも、夫妻が将来、補助金事件の保釈金にあてようと預けた現金のうち900万円を使い込んでしまったというのです。
これが事実なら佳茂氏は一刻も早く両親に返済すべきです。両親は保釈金や裁判費用の工面で苦労しているのですから。違うというならきちんと反論すべきですが、彼がこの件で反論したという話は聞いたことがありません。
親に“たかる”「日本一の親不孝者」
ですが実際に彼がしているのは「両親は安倍首相に謝れ」と言い募ること。象徴的だったのは安倍首相が去年の参議院選挙の応援で大阪に街頭演説に来た時。籠池夫妻が演説会場を訪れると、佳茂氏は「おい、籠池!「安倍さんに謝れ!」長男・佳茂より」というプラカードを掲げて、両親が演説を聞くのを妨害しました。両親を呼び捨てにするプラカードを掲げて…
籠池夫妻については、今のスタンスを評価する声、かつての教育方針や言動を批判する声、様々にあります。それについて私の考えはYahoo!ニュースに出した先の記事に書いた通りです。以下にリンクを貼りますが、一言で言うと「どちらにもくみせず、あくまで籠池夫妻への捜査や裁判が不当なものでないかという視点で取材する」というものです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/aizawafuyuki/20200309-00166759/
長男、佳茂氏について私が籠池前理事長に尋ねると、ぽつりと「お恥ずかしい限り。不徳の致すところです」という答えが返ってきました。自らを恥じ入るばかりで長男を責める言葉はありません。親として我が子を悪くは言いたくないという思いがにじんでいました。
一方、佳茂氏の言動は、両親に借りたお金を返さない、預かった資金を使い込む、両親が“洗脳されている”と公然と批判する、両親を貶める形で名前を使って本を出す…これらのことが事実なら「親にたかっている」と言われても当然の行為ではないでしょうか? 違うと反論しないのなら事実だとみなされても仕方ないでしょう。
そんな佳茂氏には謹んで“日本一の親不孝者”という称号を贈りたいと思います。いささか時代がかっていますが、これほど彼にふさわしい言葉はないでしょう。佳茂氏は恥じ入って発言を慎むべきです。もっと言えば、あなたを信じて本を買った皆さんにおわびして返金すべきです。少なくとも印税収入で早く両親に返済すべきです。
それでも、彼が謝ってくれば、籠池夫妻はまた受け入れるのでしょう。親心で。
【執筆・相澤冬樹】
相澤冬樹
大阪日日新聞編集局長・記者(元NHK記者)
1962年宮崎県生まれ。1987年NHK記者に。山口、神戸、東京、徳島、大阪で勤務。神戸で阪神・淡路大震災を取材。大阪でJR福知山線脱線事故を取材。大阪司法記者クラブ担当の2017年に森友事件に遭遇して取材を進めるが、2018年記者を外されてNHKを退職。この時の経緯を「安倍官邸vs.NHK 森友事件をスクープした私が辞めた理由」(文藝春秋刊)という本にまとめた。現在、大阪日日新聞に務めながらYahoo!ニュースをはじめ日刊ゲンダイや週刊文春など様々な媒体で記事を書いている。
後に、籠池夫妻は長男の説得で左翼の洗脳から解けている。
動画
相澤氏の心中はいかばかりか。