奈良千三百年ものがたり | |
すずき たみこ,国立博物館奈良国立博物館= | |
思文閣出版 |
著者のすずきたみこさんによる奈良の歴史満喫ガイド。
彼女は平成9年に奈良国立博物館が解説ボランティア制度を導入した時の第一期生で、分かりやすい解説が人気で彼女の解説を楽しみに来られるお客さんもいるそうです。
ボランティアですが、多くの人に支えられそして「人気ガイド」と呼ばれる彼女の志の高さ、責任感の強さ、サービス精神、探究心etcが本書を通して感じられます。
歴史や文化、宗教、文化財などの専門家ではありませんが、博物館の展示を見に来る人に少しでも良い解説をするべく勉強をしてこられた彼女の書く文章はまとまっていて読みやすく、私はさらに奈良の魅力にとりつかれてしまいました。
この本で一番感じたこと
「もっと博物館に行こう!」ということ。
1000年以上も前の人がこんなに素晴らしいものを作っていた、それが今まで残されているのは素晴らしいことであると、やっとその価値に気づかされました。歴史は授業で一方的に教えられて楽しく感じたことはありませんでしたが、難しいことを抜きにして昔の人の偉業に感心しているうちにもっと知りたくなり、そうなると自然と歴史的なことにも目が向いていくものです。
この本での新発見
博物館新館入口の「奈良国立博物館」という看板文字が聖武天皇の字であるということ。「博」の字以外は正倉院に残る書物から一字一字ピックアップされているそうです。こんな粋な事(?)をしている博物館は他には無いそうです。奈良ならではです。昨春に訪れた時、偶然にもその入口を写真に収めていました。「意外と空いていた入口の写真」を撮ったのですが、「貴重な写真」へ一気に格上げされました。
その聖武天皇といえば「奈良の大仏さん」ですが、天平の時代には人災や自然災害などの責任はすべて君主にあると考えられていたそうです。
「善を行う王は諸天に護られる。しかし王が正しい政治を行わなければ諸天の怒りを招く。人災や天災が起こり、疫病や飢饉が起こり、戦いが起こりやがて国が滅びる」と経典に残されています。国王は相当な決意を持って政治をしなくてはならなかったようです。
飢饉や干ばつ、大地震などの災いが続くなか聖武天皇は、この頃頻発する天変地異は私の政治が悪いからである。「責めは予(われ)一人に在り」と言ったそうです。
そして疫病や飢饉から国民を救うために仏の力をかりようということで、奈良の大仏さんを造るに至ったそうです。
これを聞くと、近年の大雪・温暖化・猛暑・ゲリラ豪雨などの気象の異変や火山の噴火の原因は、、、なんて考えてみたりもします。
この本は奈良のおすすめ歴史鑑賞ガイドです。
見所をしっかりと教えてくれます。
お寺に行って、行事を見学して、博物館に行ってどういうポイントで見るべきか、参考になりました。
難しい歴史書でも観光ガイドでもありません、あしからず。