竹林亭白房

花緑「試し酒」★落語

□本日落語一席。
◆柳家花緑「試し酒」(衛星劇場『衛星落語招待席』)。
紀尾井小ホール、令和5(2023)年7月15日(紀尾井らくご「柳家花緑独演会」)。
今回、花緑がマクラで語ったことで興味深いことが二点。一つは、「試し酒」が新作落語であるということ。これについて、自分は、この落語がもと小噺でそれをふくらませてできたものだろうと思っていた。

あらためて、川戸貞吉『落語大百科』と『増補 落語事典』で確認すると、昭和初期に落語速記者で研究家だった今村信雄の手になるものだとわかったが、前者によれば、もとは中国の笑話だとか、明治の初代快楽亭ブラックがビールで演じたものがあるなどとも指摘されていて、後者でももとは中国の笑話だとあった。
もともと小噺だという認識は誤りではなかったようだが、今のような形に成したのが今村信雄だというのは確かなようである。気になるのは、もとの中国の笑話が何かというのが知れなかったことである。これはまた時間のあるときにでもさがしてみよう。

興味深い話の二点めは、花緑の師匠で祖父の五代目柳家小さんが生涯で最後に覚えたネタがこの「試し酒」だったということ。生涯でといっても、花緑の言によると、だいたい六十代のころだったらしい。持ちネタが二百席ほどもある五代目小さんとのことだが、その最後が「試し酒」だった由。

五代目小さんの「試し酒」については、川戸貞吉『落語大百科』に作者今村信雄『落語の世界』の引用がある。今村曰く、「試し酒」は七代目三笑亭可楽がみごとに演じたが、それは五代目小さんにひき継がれていると。そして、また、川戸に言わせれば、五代目小さんは七代目可楽に「試し酒」を教わったのだから、それはあたり前で、ただ演出は三代目桂三木助の演った形にかえられているとのことである。
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