Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんキューバ㉖

2020-04-24 14:48:43 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月26日(金)有明月の夜 キューバ

メキシコ湾、北大西洋、カリブ海に囲まれた島、キューバ。
海が美しい島です。

約500年前スペイン人が支配する前は、シボネー族という昔からの人たちが住んでいました。シボネー族の呼び名であるクバナスカンから、キューバという名になったそうです。シボネー族は絶滅し、アフリカ人の奴隷やスペイン人たちが暮らすようになりました。

国としては、スペインのものであったり、アメリカのものにならないかといわれたり、だれのものでもなくキューバとして独立したいという思いから、何度も戦争や国どおしのいざこざを続けてきました。そして、今この国は変わろうとしています。これまで入らなかったアメリカのお金が入るようになるからです。そうすると、いろんなものが急速に変わるでしょう。多分、昔なつかしいものがなくなっていくことになるのです。

この国に来たのは、風さんのわがままです。風さんは、この国のクラシックカーが見たくてルーモにお願いしました。

「僕は車が好きなんだ。あのピカピカ光るボンネット、がっしりしたバンパー、長い車体、それがエンジン音をブルブルならして悠々と道路を走る。あの乗り物、しかも、古くて昔の匂いのする車が好きなんだ。あの車が見れなく前に一度キューバにいかなくちゃ」

風さんに道先案内をしてもらっているルーモは、もちろんOKしました。
車には全く興味はありませんでしたが、

「どうぞ、風さんの行きたいところに行ってちょうだい。これまでいろんな所に連れて行ってもらったもの。今度は風さんの番よ」
「ありがとう。ルーモには綺麗な海と昔ながらの美しい自然に案内するね」

そういって、風さんはクラシックカーを見に街へ、ルーモは自然の綺麗な場所を見に海へと分かれました。

ルーモは本当に何色ものブルーがグラデーションする美しい海と白い砂浜にびっくりしました。白いビーチパラソルの下で海を眺める男性がいたので、そばにスッとたちますと、その人は歌を作る音楽家でした。今、素敵な歌詞を考えているところです。ルーモは少しお手伝いしたくなってちょっとだけ魔法をかけました。

すると海の精のインスピレーションがその人のこめかみからハートに入りはじめ、あっという間に素敵な海の歌ができました。海の美しさ、その強さ、深さ、優しさ、豊かさを称えた歌です。その人はとてもうまい歌詞が思い付いたので嬉しくなって海に飛び込みました。ルーモもその嬉しさと一体になって一緒に海と戯れました。

人の喜びや嬉しさがルーモの心に光を灯します。そのとき、海の精が教えてくれました。

~心が大きくなるとはこういうことだよ、きみはこの旅で哀しみ、寂しさ、儚さを知ったね。それが土台になって喜びや楽しさも深く強く感じることができるようになったろう。何度も何度もそそれを繰り返して、心がどこまでも大きくなっていくんだ~

ルーモは、ネパールのエベレストで山男が言っていたことを思い出しました。妖精には心がない、心が豊かになることもないと。でも、私は心を持ち、それは今大きくなっている。私は、妖精とはちょっと違ってきてるみたい。そして、海の精に質問しました。

「妖精が心を持ったらどうなるの?」

~次は人間に生まれ変わるのさ~

「どうすれば人間になれるの?」

~本当になりたいなら、強く、強く、願ってごらん。願いを持つことからすべては始まる~

素晴らしいブルーのグラデーションの海の上にぷっかり浮かんで、ルーモは自分が人間になることを夢みました。

人間になったら、あのポルトガルのカステラやコンフェイトが食べられるのかな。
人間になったら、スペインで見たあのフラメンコという踊りが踊ってみたいわ。
人間になったら、友達が欲しい。
人間になったら、中国の二胡っていう楽器が弾けるといいな。
人間になったら、鎧さんを怖いと思ってドキドキするのかな。
人間になったら、誰かと恋もしてみたい。
そうして、誰かと結婚して、私にも赤ちゃんができるのかしら?
そうしたら、その赤ちゃんに私はお話を語るのかしら?

ルーモの想像はとめどなく、海の波のようにゆらめいていました。



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