Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんイギリス

2020-04-28 14:43:04 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月22日(月)寝待月の夜 イギリス

風さんはルーモが大好きでした。
ルーモを背中に乗せて旅するのが嬉しくてたまりません。
いろんなところをたくさん見せてあげたいし、いろんなことを体験させてあげたい。
そして、風さんがルーモに一番見せたかったのは風さんの故郷でした。
それはイギリスにあるネス湖という湖でした。

ネス湖にはネッシーという恐竜がいるといわれています。

ネス湖はイギリスで一番大きな湖で、細長い形をしており最も深いところは230メートルもあります。まわりは深い森と山に囲まれた美しい湖です。そのそばには半分崩れていますが、アーカート城というお城もあります。昔、ここに王様やお姫様が住んでいたのでしょう。

ルーモと風さんはアーカート城の岬の北の端に残るグラント・タワーの頂上に立ちました。
湖が見渡せてとてもいい気持ちです。

風さんは言いました。
「ルーモ、ここはぼくの故郷。ぼくの家族を紹介するね」

すると風さんはぐるぐる回りはじめ、しだいに竜巻になりました。竜巻は湖の水面をざわざわと動かし、水を空へと吸い上げます。周りが水しぶきで白く霧のようになり、あちらこちらに小さな虹ができました。とても素晴らしい水のイリュージョンにルーモはぱちぱちと手を叩き喜びました。

すると、その竜巻の中から、恐ろしくも神々しい龍が現れました。細長い体には鋭い爪を持った手足があり、尻尾は身体と同じくらいの長さで先端がぐるりと丸まっています。顔はとがって大きな口の周りには長いひげ、黄金に光る大きな鋭い目は恐ろしく光っています。頭には目と同じ色の黄金の角が生えてまばゆいばかりに輝いていました。ルーモはお話の中で龍やドラゴンという生き物のことを聞いたことがありますが、本物を見たのは初めてでした。

その龍は、湖の上を雲のようにゆるゆると漂ってこちらを伺っているようです。気がつくと風さんはもとの風さんにもどって、ルーモのそばにいました。そして、言いました。
「あれが僕のお父さんだよ」
風さんは龍の息子だったのです。

すると、その大きな龍はあっという間にルーモのそばにやってきてルーモを黄金の目で見つめました。その目の迫力に、ルーモは全身をくまなく見通されたような気がしました。

龍の鼻息がルーモをあっという間に背中に乗せました。龍は一度天空に飛び上がり、真っ逆さまに湖にダイブしました。ルーモは落とされないよう必死で龍の背中に生えた無数のひげにしがみつきました。どこまで潜ったかわからないほど深く深く沈み、そして時間を超えました。もう、意識もなくなり眠りそうになった頃、あたりが少し明るくなりました。ぼんやりと周りを見てみると、そこにはお父さん龍と同じくらいの龍が何匹もいて、ルーモと風さんを優しく見つめていました。いくつもの黄金の目に囲まれるのは不思議な感じでした。

それは風さんのお父さん、お兄さん、お姉さん、おじいさん、おばあさんでした。皆からとても穏やかで力強く、優しいパワーがルーモに流れ込んできました。そこで、ルーモとみんなは魂の交流ができました。
「よく来たね、これからもよろしくね」
といった温かい気持ちに満たされました。言葉はありません。光と音に包まれたような気もします。その時間は長いような短いような説明のつかいない時でした。気づくともう龍さんたちの姿はありませんでした。そこにいるのは、ルーモと風さんだけでした。


さっき、風さんのお母さんがいなかったことに気づいたルーモは聞きました。
「風さんのお母さんはどこなの?」
とルーモが聞くと、
「僕のお母さんは春風だから、いつも世界のどこかに春を届けているのさ」
と言いました。
風さんは、
「それより大丈夫だった?お父さんったら、あんな猛スピード出して!ルーモが振り落とされるんじゃないかってハラハラしたよ」
「がんばってしがみついたから、大丈夫だった!」
2人は笑いました。

ネス湖の湖底、龍の住処。
そこは、水の中なのに虹色の光にあふれて、なにかいい香りのするとても心地いい場所でした。

風さんが湖底のあちこちを案内してくれました。

美しい人魚の住む街、水の中に生きる妖精や魔物の街、人間に似た生き物の住む人口的な建物の街、朝日と夕日がいつも替わりばんこに繰り返し夜のない海辺・・・。こんな不思議な場所がここにはたくさんあるのだそうです。

そして、ルーモと風さんは金と銀の泡でできたサイダーのように爽やかなベンチに座り、一休みしました。

風さんは話してくれました。
「ぼくはもう少し大きくなったら、風のままでいるか、龍になるかを選ぶことができるんだ」
ルーモはだまって聞いていました。
「どちらを選んでもかまわない。お父さんのような立派な龍になってネス湖を守るか、このまま風としてお母さんのように世界中に風を届けるか。ぼくは決めなきゃならない」
ルーモは言いました。
「どちらも素敵ね」
風さんは、ルーモを見つめて言いました。
「その時は僕のお嫁さんになってくれる?」

いきなりの風さんの申し出に、ルーモは驚きました。
この旅のいろんな体験は、ルーモを6歳の女の子から13~4歳の少女へ、そして、今は、18歳の女性に成長させていました。

風さんも初めは10歳くらいの風の子でしたが、今は素敵な青年に成長し、プロポーズもお似合いの二人です。

ずっと優しくしてくれた風さんをルーモは信頼していました。
ルーモは、微笑んで風さんをみつめて言いました。
「こたえは、この旅が終わる時でいいかしら?」



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