デスペラード日記

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立法不作為に対する違憲審査について論じなさい。

2010-07-26 00:51:56 | Weblog
1.日本の違憲審査の特徴
本論に入る前にまず、日本が採用している(と考えられている)違憲審査制度について少し述べる。日本国憲法の「司法」の項目の中に違憲審査制度について書かれていること、日本国憲法自体がアメリカ法を継受したものであること、憲法裁判所等の規定が存在しないこと、これらのことから日本の違憲審査制度は司法審査であると考えられる。司法審査の特徴は、以下の要件をクリアしない限り基本的には違憲審査の対象とならないというところにある。
ア…具体的紛争性があること(法律上の争訟に該当し、法によって解決可能な、私人の権利侵害をめぐる紛争であること)
イ…紛争が司法権の限界内にあること(問題が統治行為や議院自律権などに絡まないこと)

2.立法不作為の分類
一概に立法不作為と言っても、そのケースは異なる。まずは、立法不作為を分類し、整理する。
A…立法すべき法律を制定しなかった。
B…立法はしたものの、その内容が不十分であった。
C…違憲状態にある立法を改廃しなかった。
D…法律を改廃し、従来の制度を復活させなかった。
以下、それぞれのケースについて判例に従って検討していく。

3.A・Dについて
A・Dについては、在宅投票制度廃止違憲訴訟に詳しい。ここで最高裁判決は以下のように述べている。「憲法の一義的文言に違反しているにもかかわらず、国会が立法をしないような「例外的な場合でない限り」憲法に違反しない。
すなわち、最高裁の解釈はAのケースに限り、違憲だと認定し、Dのケースは立法裁量として、司法権の限界を超えていると捉えているようだ。

4.Bについて
Bについては、朝日訴訟や堀木訴訟をみながら検討していくのがいいだろう。いずれの訴訟においても最高裁は広く立法の裁量を認め、その裁量に関する司法判断は、その裁量が明白に憲法に違反する場合を除いては、極力回避しているようである。すなわち、2でみた在宅投票制度廃止訴訟での最高裁の考え方と同視できる。

5.Cについて
Cについては、議員定数不均衡問題や在外邦人投票制度における最高裁の判断を見ていく。
議員定数不均衡問題。この問題に際し、昭和60年7月17日最高裁大法廷は一票の較差につき違憲状態にあった昭和55年の総選挙から昭和58年の総選挙の間に立法措置を取らなかったことは違憲だと認定した。ここで、最高裁は違憲状態のまま合理的期間を徒過したのちも、立法措置が取られなかった場合は違憲だと認定した。
在外邦人投票制度。在外投票者に衆参比例区に限り選挙権を認めた平成10年の公選法改正時点から本判決である平成17年までに衆参比例区・選挙区双方の選挙権を与えたかったことは、合理的期間を徒過しており違憲だと認定した。

6.下級審の違憲審査
下級審による違憲審査の場合は、上級審による違憲審査と比べて違憲の認定を出しやすい傾向にあるように思われる。たとえば、学生無年金障害者訴訟での東京地裁判決やハンセン病隔離政策についての熊本地裁判決ではいずれも、立法不作為による違憲を認定している。

7.私見
たしかに裁判所の違憲審査は消極的との批判を免れ得ない観はある。だがしかし、立法に責任を持つ国会議員は、まがいなりにも数百万もの票を獲得した人たちであるから、やはり裁判所の違憲審査は控え目にならざるを得ないだろう。

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1 コメント

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誤字について (no name)
2014-11-20 12:33:30
5.

×:~平成17年までに衆参比例区・選挙区双方の選挙権を与え「た」かったことは、合理的期間を徒過しており違憲だと認定した。

○:~与え「な」かったこと

だと思います。
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