カゲのブログ

もう黙っとれん。ワシにもひとこと言わせろ。

目から鱗の日本の政治(4) 国のしくみ(記者クラブ)

2009-06-23 | 政治一般
前回は、官僚が大臣や国会議員をコントロールするやり方を説明したワケやけど、今回は民主主義国家でいちばん偉いことになっとる国民を、どうやって官僚の都合のええようにコントロールするか?ちゅう話や。

そんなん簡単やんけ。マスコミ使ぅて、官僚に都合のええ情報をどんどん流させて、逆に官僚に都合の悪い情報は流させへん。それでええやんけ。はい、おわり。解決やな。

あほ言うな。「マスコミを使う」ちゅうのは一応正解やけど、そんな簡単なもんやあれへんで。ええか、日本は曲がりなりにも民主主義国家やぞ。国民の権利が憲法で保障されとる。もちろん言論、報道の自由も保障されとる。どっかの北の将軍様の国やったら、オマエの言うとおり「マスコミを使う。はい、おわり。解決」で済むかもしれんけど、日本の場合は、もうちょっと工夫必要になってくるで。

面倒くさいな。

民主主義ちゅうもんは面倒くさいもんや。とくに権力側にとってはな。
まあその前に、前回は「官僚が検察権力を使て、自分に都合の悪いもんを、けっこう自由に捕まえることができる」ていうのを説明したやろ。検察がそうやって政治家ににらみを利かしてコントロールする場合も、あんまし露骨にやると、民主主義とか人権とかのタテマエ上やばいことになる。

ほな、検察もマスコミ使て国民をコントロールするんけ?

検察とか警察ちゅうのは、人を逮捕したり強制捜査したりする強い権力が与えられとるやろ。そういう怖い権力を与えられた組織ちゅうのは、世間の監視の目ぇも厳しい。そういう中で検察が仕事をスムーズにこなしていくためには、世間一般に「検察は常に国民の側にいまっせ~、正義の味方でっせ~」ていう雰囲気をかもし出させたいワケや。

雰囲気かいな。

雰囲気をバカにすなよ。雰囲気ちゅうのは大事や。
検察ちゅうのは、他の役所よりも特に世論を気にする役所て言われるけど、それはそういう理由なんや。ほんで、検察がいかにも「正義の味方でござい」ていう雰囲気をかもし出すために利用するんが、これまたマスコミていうワケやな。検察を含む官僚は、マスコミを上手に使て自分に都合のええ世論をかもし出し、日々の仕事をスムーズに進めるんやな。

へぇ~、マスコミてけっこう重要な役目があるねんなぁ。そやけど「マスコミを上手に使う」て何すんねん。マスコミに金でも渡してウソの記事でも書いてもらうんけ?

そんな無粋なことをする必要はあれへんな。日本には「記者クラブ」ちゅう独特の制度があるねん。聞いたことあるやろ?

記者クラブ? 聞いたことがあるような無いような。

「記者クラブ」ていう制度は戦前からあった古い制度や。出来た当時は、強い権力を持った政府に対抗するために、それなりに役立ってきたやりかたではあるけど、戦争中はこれを使て、いわゆる「大本営発表」をやってたんやな。

記者クラブて日本にしかないんか?

韓国にはあったらしいな。韓国は昔日本に併合されとった時期があって、その影響で日本の記者クラブとほぼ同じ制度があったらしいな。そやけど、今ではほぼ無くなっとるらしい。日本の場合、記者クラブていうのは、官庁とか都道府県、警察とかの公的機関はもちろん、業界団体みたいな民間の機関にも存在しとる仕組みや。他の国にも似たようなもんが無いことは無いけど、少なくともここまで徹底しとるトコは日本だけやろな。英語で記者クラブのことを、そのままkisha clubて言うぐらいやさかいな。

ほんで、なにするとこやねん、記者クラブって。「クラブ」て言うくらいやさかい、なかよしクラブみたいなもんけ?

まあ、表向きは親睦団体みたいなもん、ちゅうことになっとる。各役所には、そこで取材するマスコミの記者のために部屋を無償で用意してもろて、記者はそこへ常駐するわけや。そこには机とか椅子もあるし、茶器とかソファーとかテレビとかもある。そういう設備はぜんぶタダや。

記者の無料休憩所か?

首相官邸とか、誰にでも取材を許したら警備上問題がある場合もあるわな。そこで「取材をする記者をあらかじめ登録しといて、どこの馬の骨とも知れんやつが首相に近づくのを防ぐ」ちゅうことになっとる。でも、それはあくまでタテマエや。記者クラブの本来の意義は、記者会見とか記者発表とか、その団体から発信される情報を一手に仕切る、ちゅうことや。

情報を仕切るってどういうことなんや?

記者クラブに属してない、雑誌系の記者とか、フリーのジャーナリストとかは、記者会見もに参加できひん。つまり、記者会見で発表されるニュースネタは、記者クラブに属してる報道機関が独占するわけや。記者クラブの記者は登録制であることをええことに、ニュースソースに接することが出来るのは、そのクラブに属してる記者だけに限られるわけや。つまり、クラブ関係者のみが優先的、独占的に情報を入手することができる、きわめて閉鎖的な制度ちゅうことや。

閉鎖的なんはイカンな。

「国境無き記者団」ていうNGOが世界の「報道の自由度」ランキングを発表するねんけど、この記者クラブ制度が日本の報道の自由を脅かす一番の理由に挙げたそうやで。都合の悪いことを報道しよる報道機関が排除される、ちゅうことやな。

なるほど。官僚は記者クラブの仕組みを使って情報をコントロールしとったんか。そやけど、そんなコトして、マスコミは怒らへんのかいな。報道の自由はどないなっとんねん。

いやいや、記者クラブの制度が取材される側にメリットなだけやあれへん。取材する側にもメリットがあるねんな。報道機関の既得権益を守るための仕組みでもあるワケや。

え~?どういうコトやねん。マスコミって「政官業の癒着体質は既得権益や」いうて非難しとるけど、自分らかて既得権益を守っとるんかいな。

新聞社は、その省庁から情報を得るためには、自分とこの記者を記者クラブに送り込んどく必要がある。でないと、その省庁から受ける情報がほとんど無くなる。さらに、記者クラブに属してる記者は、記者クラブの部屋に詰めてないといかん。いつニュースが発表されるか分からへんさかいな。もし、その社の記者がおらへんときに記者発表があったら、その情報は特落ちになる。

なんや、そのトクオチちゅうのは? 得盛の反対け?

特ダネの反対や。他の社の新聞に載っとるのに、自分とこだけそのニュースが載ってないことを「特落ち」ちゅうらしいわ。

へぇ~。そらぁカッコ悪いわな。どの新聞にも載ってることが載ってないんやもんな。なんじゃこりゃ~やな。

記者クラブの記者たちは、その特落ちを恐れて、常に記者クラブに詰めることになる。つまり、そこで発表された情報の裏とりしたり、独自の取材とかしたりするために、外出すると、その間に発表されたニュースが特落ちになってしまう恐れがあるさかい、そういう取材はやらへん。つまり、役所が発表した内容をウラとり無しで、そのまま記事にしてしまう。そうして、どこの新聞も、どこのテレビも同じ内容をたれ流すようになる。

最近、どのテレビもおんなじようなニュースをおんなじような調子で放送するようになったんはそのせいか?

記者にしたかて、外を飛び回って情報を収集するより、記者クラブに詰めとって、普段はテレビ見るか碁でも打って暇つぶして、ときおりやってくる記者発表を記事にまとめて本社に送る。そこには、他社との競争とかの面倒くさいもんもあれへん。記者どうし申し合わせて、よそと似たような記事を書いとったらええワケや。実際は、役所から出されたペーパーの中身をコピペして、「てにおは」を少し変える程度で記事にすることもあるそうや。

へぇ~なるほど。そのほうが楽なんやな。

そういう記者クラブていう仕組みが、日本には昔々からあったわけやけど、霞ヶ関のお役所が戦前から戦後にかけて、あんまり変わらんかったのとおんなじように、記者クラブの制度もそのまま残ったわけや。大本営発表をやった昔のしくみが残ったちゅうこっちゃ。

その仕組みが今も悪用されとるちゅうことやな。

ここで大事なことは、情報のモトを流す側、つまり官僚側は、べつに報道機関に対して強制的にせんでもええ、ちゅうことや。記者クラブちゅう報道機関側にもメリットがある仕組みを使て、自然に情報をコントロールできるちゅうことや。WinWinの関係やな。政官業の癒着とおんなじ構図や。

なるほど。うまいこと出来とるワケや。

官僚はそういう仕組みを使てマスコミに流す情報をコントロールできるワケや。そのコントロールされた情報で、民主主義のいちばんテッペンにおる国民をコントロールするねん。そのコントロールされた国民が、コントロールされた党の候補者を選挙で選んでコントロールされた国会議員ができる。そのコントロールされた国会議員は、コントロールされた総理大臣を選び、コントロールされた内閣を組織するわけや。これでめでたく、下のほうにいる官僚が、その上に乗っかっとる目の上のたんこぶを全部コントロール可能になったわけやな。めでたしめでたし。

なんもめでたいことあれへんがな。


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