君に捧げるラブ・ソング by 岡林信康
岡林信康さんといえば、日本のフォークのパイオニアのひとりであり、日本の黎明期のフォーク界を代表するシンガーソングライターで、日本のフォーク界を切り開いた偉大な人物だ。
巷では「フォークの神様」とも呼ばれた人。
一般的には岡林さんの曲と言えば、「チューリップのアップリケ」や「友よ」「山谷ブルース」などのイメージが強いかもしれない。
もちろんそれらの初期の曲が岡林さんの代表曲ではあるのだろう。
だが、私がここで取り上げたいのは、「君に捧げるラブ・ソング」という曲だ。
浜田省吾さんの曲で「君に捧げるlove song」というの曲があるが、それとは別物なので、念のため。
この曲は、タイトルだけ読むと女性へのラブソングみたいだが、実はこの曲は岡林さんのことを長年撮り続けていた写真家であった親友に捧げた曲だったらしい。
その親友が病気になり、余命わずか・・となった時に岡林さんが、その親友のために作った歌らしい。
それを知ってこの曲を聞くと、その歌詞が切なくて泣きそうになる。
切々と綴られた歌詞の一言一言が胸に迫ってくる。
まさに作り手の魂のこもった歌だ。
これは、単なる「よくあるラブソング」ではないのだ。
しかもその歌詞につけられたメロディが美しいの一言。
こんな切ない歌詞が、こんなきれいなメロディがつけられて、しかもそれを、かつて波乱に満ちた道を歩み、なおかつ日本のフォーク界を切り開いた伝説のシンガーソングライター岡林さんによって歌われてしまったら・・・。
そりゃ「チューリップのアップリケ」もいいし、「友よ」は無視できないのだろうし、「山谷ブルース」も忘れられないが、この「君に捧げるラブ・ソング」はそれらの歌をさしおいてでも岡林さんの代表曲のひとつではないかと私はみなしている。
私が日本のフォークというものに本格的にハマったきっかけは、吉田拓郎さんや、ケメや佐渡山豊さんをはじめとするエレックレコードのミュージシャンたちだった。
それらのミュージシャンの音楽に私が出会った時、すでに岡林さんは伝説の存在であった。
むしろ私より上の世代が岡林さんをリアルタイムで体験し、岡林さんが切り開いた道に拓郎さんたちが出てきた・・・そんな印象があり、なまじ岡林さんの全盛時を私はリアルタイム体験できなかった分、岡林さんには私は当初ちょっとした距離を感じていた。
要するに、私は岡林さんには乗り遅れた世代に思えていて、はっきり言うと、岡林さんの全盛時を体験した人たちに「ひけめ」というか、遠慮みたいな感情を持っていた。
それはある意味、ビートルズをリアルタイム体験できなかった寂しさや悔しさにも似た思いだった。
そのぶん、当初は私はリアルタイム体験出来ていた拓郎さんたちを応援していた。
実は拓郎さんと岡林さんは、ほとんど年齢は変わらない。でも当時の私の感覚では、岡林さんは拓郎さんよりもずっと年上だと思っていたのだ。
世に知られたのが、岡林さんのほうが早かった、、、ということだったのだろう。
でも、岡林さんは偉大な先人というか、偉大な先輩みたいに思えて、私はリスペクトの気持ちは持っていた。
当時、とかく比較されがちだった岡林さんと拓郎さん。そのファンは、岡林派だの拓郎派だのと区分けされることがあり、「君はどっち派?」などと聞かれがちな空気があったのだが、そのたびに私は困ってた。
なぜどっちかにつかないといけないんだろう。どっちも好き、、、ではいけないのか?、、、と思ってたものだった。なぜなら、どう考えてもどちらも良かったから。優劣なんてつけられなかったし、つけたくもなかった。
どちらも偉大な存在でしょうに、、。
ともあれ、そんな状況の時、当時の級友が岡林さんのアルバムを持っていたので、聴かせてもらった。
すると、やはり「さすがに、いいなあ」と実感した覚えがある。
実際にこの耳であらためて岡林さんの音楽を聴いてみたことで、それまで多少の遠慮とひけめを感じてた岡林さんに対して、親近感がグッとあがった気がした。
それ以来、ラジオで岡林さんの曲が流れれば録音し、テレビで岡林さんの曲が流れれば見て、雑誌などで岡林さんのインタビューや記事が載れば読み・・で、普通に遠慮なく聴けるようになったし、関心も持つことができた。
岡林さんは初期の社会派系のイメージは強かったが、全盛時に一時リタイヤして田舎に引きこもった。
そして一定のブランクの後に音楽界に復帰してきた岡林さんは、初期の社会派的な呪縛(?)から解放されたかのように、自身のやりたい音楽を発表していった。
ラジオで流れた「金色のライオン」というアルバムなど、カセットに録音して、私はけっこう気に入って聴いていた。後年CDの時代になった時、「金色のライオン」はCDで購入したぐらいだ。
今では私は、岡林さんのアルバムは、他にも何枚も持っている。
そして、やがて発表されたアルバム「街はステキなカーニバル」の中に、この「君に捧げるラブ・ソング」は収録されていた。
とはいえ、私は現時点ではまだそのアルバムはフルでは聴いたことがない。
いずれ聴きたいとは思っているけれど。
以前私はこのブログで、いつか岡林さんが紅白に出るようなことがあれば、「チューリップのアップリケ」を歌ってほしい・・・と書いたことがある。
それは「チューリップのアップリケ」みたいな歌詞の内容の曲は、言葉使い的に他に存在しないと思うし、だからこそインパクトもあるから、その曲を知らない人に聴いてもらいたいからだった。
だが、そういう「狙い」を取り外した場合は、この「君に捧げるラブ・ソング」こそ歌ってほしいとも思っている。
なぜなら・・珠玉の名曲だからだ。
やはり、岡林さんは只者ではないのだ。
日本の音楽界にフォークというジャンルを切り開いて、後進に道を作ることができたのは、こんな名曲を作れる才能があったからだと思う。
「友よ」「チューリップのアップリケ」「山谷ブルース」などの初期の社会派のイメージでだけ捉えていると、とんだ誤解をすることになる。
それは、この曲を聴いていただければお分かりいただけるのではないだろうか。
ともかく、聴いてて泣きたくなるくらいに、切なく、美しく、素晴らしい曲だと思う。
そして、この歌を歌う岡林さんは、実にカッコイイ。
この映像を見てると、ほれぼれしてしまう。
https://www.youtube.com/watch?v=d7G0tLszEhE
沁みました・・・いい曲ですね。
男と男の友愛、親愛。
二人にどんな物語があったか知りたくなりました。
この曲が入ってるアルバムジャケット
川仁忍さんが病床の身をおして撮ったものだそうですね。
さすが岡林さんです。
拓郎さんよりも前に、日本のフォーク界を切り開くことができたのは、こんな才能があったからなんでしょう。
拓郎さんと岡林さんの偉大さは、双璧だと思います。
このアルバムジャケット、いいですよね。
お気に入りです。
この映像も、カッコいいです。
ギター、ハーモニカスタイルも。
超大物・吉田拓郎さん以前に、彼のようなフォークソング黎明期を代表する、“真の超大物”がいたという事は、私も今回感激しました。
私が愛するロックンロールに例えたら、ビートルズやローリングストーンズの前に、エルヴィス・プレスリー、バディ・ホリーがいたという事です。
さて、今回ご紹介された楽曲は、「ラブ・ソングと言えでも恋愛を歌ったものではない」ことは、あまりに悲しみのメロディや歌詞からも分かりますね。
それこそ「日本のレクイエム」と呼ぶに値する名曲中の名曲です。
愛する人の死は、本当に極めて残念なことです。
だんぞうさんも心身共に元気で、長生きされてくださいね!
もちろん私も力強く元気に生きていきますよ!
どこかイエスキリストみたいな雰囲気がありました。
日本のフォーク界の黎明期のスーパースターでした。
彼は、牧師の息子だそうで、幼いころからそういう環境の中で育ったそうです。
コロナの収束が中々見えませんが、お互い元気でいたいですね。