これは怖い。
掛け値なしに怖い。
怖さの質が、普通の恐怖漫画とは違う。
作者は望月 峯太郎。KCデラックスのコミックだ。
昨今様々な「都市伝説」が世に流布しているが、この漫画は都市伝説が今のようなブームになる前に発表された作品だ。
ストーカーという言葉さえ、それほど一般的じゃなかった時代だ。
その後の世の流れを考えれば、ある意味、「予言的な作品」「時代への警鐘」になったということになるのかもしれない。
都市伝説には過去に様々なキャラクターが生まれてきた。
口裂け女、トイレの花子さん、その他。
この漫画に出てくるサチコは、さまざまな都市伝説の恐怖キャラクターの一種の象徴みたいな存在だ。
現代ならではの怖さに溢れている。
結局、この座敷女の正体は分からない。また、何がしたかったのかも、よく分からないし、動機もはっきりしない。
だからこそ余計に恐ろしい。
読者がそれぞれ色々想像してしまう余地があるからだ。
今の世は、色々心理的に倒錯した時代だと思う。
色々な犯罪があふれている。
犯罪の動機も、昔なら考えられないような理由だったりもするし、なかには理由らしき理由・動機らしき動機がないまま犯罪がおきたりもする。
強いてあげれば、ひょんなことから関わってしまったばっかりに・・という理由もある。
人と一切関わらずに生きてゆくなんて不可能。
どんなに用心していても。
何がきっかけになるか分からないのだから。
この作品の主人公の男性は、ひょんなことからこの得体の知れない女と関わってしまった。
知り合ってしまった。
知り合わなければよかったのに・・・この世には、そんな出会いはけっこうある。
この作品の主人公の男性とサチコも、そんな関係。
特に男性にとってみれば、このサチコと知り合わなければどんなによかったか。
知り合わなければ、あんな恐怖の体験をせずにすんだのに。
この作品を読んでると、見ず知らずの人と知り合うことの怖さや危険性を実感する。
世の中、良い人ばかりではないからね。
よく「出会いに感謝」とか「出会ってくれて、ありがとう」などの決まりフレーズが世の中に溢れているが、人と出会うことはきれいごとばかりではないのだ。それが現実。
もちろん、出会ってよかったと思える人はいる。
出会いが財産になる場合もあるだろう。
だが、出会いが不幸の始まりになることだってある。
ある意味、出会いは危険との隣り合わせなのだ。
最近の世の中には、そういうケースはだんだん増えて来ていると思う。
だからこそ、この漫画の怖さは胸を凍らせる。
出会うこと、かかわる事の怖さを考えさせられる。
かつてジョージ秋山先生の漫画に「アシュラ」という問題作があった。
そこには、「生まれてこないほうがよかったのに」なんていうショッキングなフレーズがあったように思う。
この「座敷女」という作品では、「知り合わないほうがよかったのに」という考え方がふさわしい。
そう、誰でも彼でも出会えればいいってもんじゃないのです。
出会うべきじゃなかったと思える人もいるのです。広い世の中には。
知り合わなければよかったのに・・・・そんな人が貴方のまわりにいませんか?
もし、いるとしたら、知らず知らずのうちに、貴方もサチコと出会っていることになるのかもしれません。
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