時間の外  ~since 2006~

気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

クリスマス・イン・ザ・ハート   by ボブ・ディラン

2009年12月01日 | 音楽全般

まさか、あのディランがこのようなクリスマスアルバムを作るとは思わなかった。

ディランがクリスマスアルバムを出すというニュースを知った時も驚いたが、内容がここまで王道をゆくクリスマスアルバムになってるをの聴いて、更に驚いた。

ディランさん、一体どうしちゃったのですか??


思えば・・・ここ数年のディランは、長い音楽生活の総括や、やり残したことの実現に動いているように思える。
私の気のせいかもしれないが。

かつて海賊版で出回った古い音源の正式リリース、未発表曲の公開、自伝の執筆、映画への再びの関わり、ラジオのパーソナリティ(!!)、自分がこれまで聴いてきたお気に入りのトラディショナルソングの紹介と伝承、そして・・このクリスマスアルバム・・などなど。


かつてのディランだったら考えられないようなことを、ここ数年のディランは次々と実現させている。

かつて若者の代弁者と言われ、音楽界に革命をおこし、世界中に大きな影響を与えたディランも、もうお爺ちゃんといわれる年代に入っている。
今はまだ精力的に音楽活動を続けていられているが、それをいつまで続けられるかは分からない。

共に時代を築いた音楽仲間の中には鬼籍に入ってしまった人も多くなってきた。

ディランは、いつかはやってくる「活動の終焉」を意識して、自分の音楽活動の総仕上げのために今は動いているようにも思えてしまう。


ディランの音楽知識は、半端じゃない。
その記憶力のすごさは、自伝で立証ずみ。
今のディランは、その驚異的な音楽知識で古き良きトラディショナルソングの伝道師的な活動もしているのは、ラジオのパーソナリティを務めたことでも分かる。

また、かつて「セルフポートレイト」や「ディラン」というアルバムで、数々の名曲をカバーしたこともあることを考えれば、今回のクリスマスアルバムの発表もそう驚くべきことではないかもしれない。

少なくてもディラン本人の中では違和感はないのだろう。

このクリスマスアルバムには、ディランの自作曲は1曲もない。
すべて有名なクリスマスソングばかり。

個人的には何曲か知らない曲もあったんだけど、選曲自体は「ひねり」をきかせた選曲ではなく、クリスマスのスタンダードナンバーばかりなので、拍子抜けするぐらい親しみやすい。

声は、最近のディラン特有の、あのざらついたボーカルだが、サウンドは親しみやすいポップスだ。
女性コーラスだって入っているし、ディランの声がなければ、まるで軽音楽そのもののサウンドだ。

強いてあげれば、こういうサウンドに、ディランのあのざらついたボーカルが乗っかっている・・という点が「ひねり」とでもいえそうだ。
もしも、甘くてきれいなメインボーカルが、このサウンドに乗っていたら、ごくごく普通のクリスマスアルバムで終わってしまっただろう。

それ以外は、世間一般の「クリスマスアルバム」のイメージ通りのサウンド・楽曲で、クリスマスの雰囲気にあふれている。

ディランのボーカルスタイルというと、メインメロディを崩して歌うスタイルだが、このアルバムではメロディをあまり崩さずに、メロディに忠実に歌っている。
そんな点も、長年ディランを聴いてきた者としては、印象的。


ディランにとってクリスマスアルバムは「やり残したこと」の中の一つだったのだろう。
その「やり残したこと」の中の一つをクリアしたのだろう。


元々このアルバムはディラン自身の企画だそうだ。
収益はすべて寄付される。
いわばチャリティアルバムであり、ファンへの思わぬサービス盤だろう。


そういえば・・ディランはかつてインタビューで、
「交響曲を作りたい」と語っていたことがある。

マッカートニーやブライアン・ウィルソンあたりが「交響曲を作りたい」というのなら、その音楽性からも自然な気はするが、ディランがいつか交響曲を作りたいと思ってる・・というのは、ファンにとっては意外。
でも、「交響曲を作る」ということもまた「やり残したこと」のひとつであるのなら、この分でいくと、いずれ実現する日が来るのだろうか。
このクリスマスアルバムがそうであるように。


ボブ・ディランのクリスマスアルバム「クリスマス・イン・ザ・ハート」。
それはクリスマスソングの有名な曲を集め、軽音楽のような親しみやすさや聴きやすさで、世間一般のクリスマスのムードそのままのキュートなアルバムだ。

ディランのアルバムとしては、かつて「ディラン」というカバーアルバムがあまり重要視されなかったことを考えると(ちなみに09年現在「ディラン」というアルバムは廃盤である)、このクリスマスアルバムも、あまり重要視されていかない可能性はある。

でも、個人的には「ディラン」というカバーアルバムは大好きだったし、このクリスマスアルバムも好きになれそうだ。
小難しいこと考えず、楽しめばいい。そんなアルバム。

ディランのアルバムとしての意味・・よりも、私にとって内容が好みなら、好きな曲が入っているのなら、それで充分なのだ。
こういう音楽も好きだし。


対訳がついているので、有名なクリスマスソングがどんな歌詞であったのかを再確認できるというのは、ちょっと嬉しい。
有名な洋楽クリスマススタンダードナンバーは、曲は知ってても原曲の歌詞がどんな内容なのかは案外あまりよく知らなかったりしたからね。



とりあえず、冒頭でも書いたが、ディランがこういうアルバムを出すとは。
しかも、ひねっていない、王道をゆくストレートで誠実なクリスマス・ポップ・アルバムに仕上げるとは。


時代は・・・変わったんだね、ディラン。


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