よしひこさんはプールにお迎えです

よしひこさんはプールにお迎えです

インド人A君の災難6

2016-12-30 16:10:26 | 日記
前回の続きです。よし、とりあえず「おでん」でインド人の様子をみてみよう。あ、これ魚のダシだから、ベジタリアンはダメなのか。ま、いいやいいや、すすめてしまえ~。

「ねえ、A君、おでん食べたことある?」
「ないデス」
「ほら、これ食べて」

A君はおそるおそる、煮えた大根を半分に切って口に入れました。すると、一瞬、動きが停止。ネコがへんなモノを食わされたときのあの顔に似ています。そして、何気なく飲み込みました。

「……おいしいデス」

ウソをつけ。顔は笑ってないじゃないか。そうか、気を使ってるんだな。フフフ、いつまで気を使えることやら。私はだんだんSっぽい気分になってきました。こうなったら、絶対にまずいと言わせてやる!

「じゃ、これなんかどう、こんにゃく?」

おでんのこんにゃくを口にしたA君、ふたたび沈黙のあとに気をつかいます。

「……おいしいデス」

くそっ、ダメか。

「はい、ちくわ」

これもしっかり食べると、「……おいしいデス」

「お新香は?」

ふたたび食べて、「……おいしいデス」

タフなインド人じゃないか。が、ふと彼の皿を見て、私はあることに気づきました。

さっきからA君、食べるものすべてに和辛子をつけて食べていたのです。そうか、辛子で味をごまかして飲み込んでるんだな。フフフ、そうとわかれば……。



 

インド人A君の災難5

2016-12-28 18:47:08 | 日記
前回の続きです。A君は買い物カゴにコーラの2リットルボトルとポテトチップス、スナック菓子を入れました。ちなみに、コーラはダイエットじゃないほうのガチな甘いコーラな好きなようです。

ささやかな日本人2人のおごりです。ここに、インド人A君と田舎の日本人との国際交流のはじまりはじまり~。実家にもどり、カズオとA君を部屋に招き入れた私は母親のいる台所へ向かいました。

「ただいま」
「あ、おかえり。カズオ君はあっちにいるの?」

「うん。それともうひとり……」
「えっ、あっちの部屋におつまみの用意は2人分しか出してないよ」

「ああ、それは適当に分けるからいいよ。ただ、そのもうひとりってのが、インド人なんだよ」
「インド人?!」

「ベジタリアンだってさ。どういうのがいいのかな」
「アタシがわかるわけないでしょ。あ、このおでんもあるから持っていって」
「おでん?まあ、ベジタリアンっぽいか」

私は追加の一人前の箸と皿、そしておでんの鍋をかかえて、彼らのいる部屋にもどりました。

部屋に入ると、母があらかじめ用意していたつまみとは、「おせち料理」でした。その瞬間、私のアタマにある考えがよぎったのです。インド人におせち料理を食わせたら、どんな反応をするのだろう、フフフ……。



インド人A君の災難4

2016-12-26 16:08:48 | 日記
前回の続きです。たどたどしい日本語で「アナタ、何歳ですか?」と聞かれたので、シャレのつもりで「え、アタシ?18(歳)~」と答えたら、「オマエは嘘つきだ!」とマジギレされたことがあるとか。異文化コミュニケーションは難しいですね。

最近はインド、パキスタン系のエンジニアがたくさん来日していて、多くはIT系で働いているそうです。ある県にあるがんセンターでも、一目でインド系とわかる人が内視鏡操作を担当しているとか。

患者だった友人によると、昼食後に中庭へ行ったら、その彼が昼下がりの日差しの中でスーパーで買って来たカレーパンを食べてたそうです。本国の味とはかなり違ったものだったでしょうが、彼はどんな思いで食べていたのでしょうね。

おっと、話が横道にそれているあいだに、私の家に車は到着。さっそく近所のスーパーへ飲み会の買い出しに向かいながら、私はA君に聞きました。

私「A君はどんなの好きなの?」
A君「私はお酒飲みマセン。ベジタ~リアンデス」
私「えっ?!」

こりゃ気をつかうなあ……と途方にくれると、カズオが平然と言いました。

「A君はだいじょうぶ!コーラとポテトチップスだから!」

たしかに、よく見るとA君は小太りでした。コーラ太りか……。不健康なベジタ~リアンです。



インド人A君の災難3

2016-12-22 16:44:00 | 日記
前回の続きです。それから彼が日本語で解説してくれたところによると、来日のいきさつはこんな感じでした。1年前からこの片田舎に住んで、日本人にインドの言葉を教える代わりに、自分も日本語を学んでいるようです。

私の友人であるカズオはガス屋で、彼の住むアパートとガスの契約をしているのがきっかけで、親しくなったようです。堀りの深い顔と落ち着いた物腰のA君。45歳くらいに見えるので、最初から敬語だったわけですが、年齢を聞いてみました。

私「Aさんはいくつですか?」
A君「25歳デス」
私「25!?」

ここで驚くのは失礼なのかもしれませんが、素直にびっくりしてしまいました。聞けば、A君は英語もできるらしいです。インド国内ではさまざまな言語があるため、国内のほかの地域のインド人とは英語でやりとりするのだとか。

ここで友人から聞いたミニ情報。

江戸川区のある街は、インドの方がたいへん多く暮らしていることで知られています。同国の出身者同士でコミュニティができているらしく、子どもをもつママさんが児童館などでいっしょになる機会があっても、なかなかハードルが高く感じてしまってお近づきにはなれないようで。

あるママさんがまだ独身だった30歳くらいの頃に、酔っぱらったインドの男性に声をかけられたことがあったそうです。



インド人A君の災難2

2016-12-20 18:04:45 | 日記
前回の続きです。

片田舎の12月30日、19:00。私は車でいっしょに見知らぬ外国人を迎えにいくことになりました。話によれば、一軒のアパートの前に彼は待っているそうです。

まもなく、車はアパートの前に停車しました。息をこらして緊張していると、暗い物陰からひとりの男が後部座席に乗り込んできました。

A君「今晩は、Aデス。インドのデリーから来マシタ」

インド人?!外人って言われると、白人を想像してしまうこの固定観念ってなに?そんなことはどうでもいいですが、とにかく、浅黒い顔をした45歳くらいの男が、流暢な日本語で私にほほ笑んできました。

私「こ、今晩は。よしひこです」

私が車内でインド人A君とぎこちない会話をかわすと、カズオがA君に言いました。

カズオ「A君さあ、こいつオレの同級生。東京でライターやってるんだよ」
A君「ああ、ライターですか」

A君が曖昧に答えるので、私は気になりました。ライターで火をつけるカチカチの仕草をして、「こっちじゃないですよ。こっち」と、ペンを走らせる仕草をしてみます。

すると、A君、「ああ、それはちがいマスネ!」と正しい発音で言い返します。

A君「ロァイトー!」

おお、さすがに、いい発音!

私「ああ、そうそう、ロァイトー!ロァイトー!」

さっそく基本的すぎる発音練習に明け暮れる私。