あやろぐ

綾乃あやの徒然ブログ

これから

2010年12月15日 | ニュース

本日、東京都の青少年健全育成条例改正案が成立しました。

これからは、各々が東京都の動向を監視し、然るべき時には抗議する、とにかく興味を失わないことが大切だと思います。加えて私個人としては、委縮せずマンガを描き続ける、これにつきると思っています。

 

よく見聞きする意見に、「確かに酷いマンガがある。そんなマンガを子供に見せるのはちょっと…」ってのがありますが、
実際のところそういうマンガは大抵、18禁コーナーにあったり成人マークが貼られてたりビニールで包まれ中身は読めないようにゾーニングされてるんですよね。

そこんとこが、現状を知らない人の誤解だし、また、誤解に誘導するような報道の多さには辟易します。

それでも本屋やネットで買って読みたい子供は、それがその子の嗜好だし、実際に読んでみなきゃイイも悪いも判断できない所謂ひとつの経験だし、各家庭で対応すべき問題だと私は思います。

 

出版業界をはじめとして多くの人々がこの条例改正案に反対するのは、規制対象がなにも性的行為に限ったものではなく、反倫理的な描写にも適用されると読み取れるから、という理由もあります。

世の中には様々なマンガが存在し、私たちは常に自分で取捨選択しています。規制は、子供の判断を信用しないと同意ではないでしょうか。もっと極端な規制推進派の意見になると、「自分や自分の子供は大丈夫だけど、それを読んだ誰かが触発されて、現実で犯罪を犯すかもしれない」…何の根拠もない、因果関係を示すデータすらない杞憂です。

そもそも根本的に、自分が酷いと思うからといってそのマンガを抹殺する権利は、誰にもないと思うのです。

だからこそ、現行法でも更なるゾーニングの徹底や出版社・制作者の自主規制の強化ができるのに、なぜあんなに拡大解釈可能な改正案を拙速に成立させたのか…推して測るべしです。

   

まあ、BLは少々性器描写が過激になっていたので、その点では自主規制が必要になりますね。

でももしストーリーに口出しされるようになったら…。嫌がる受を無理矢理~とか、好きになってはいけない人を…てのは、ラブストーリーでカタルシスを得る素敵エッセンスの一つなのに!…高校生NGもまだ納得できませんし。

 

ともかく、この条例によって、BLジャンルが萎縮、縮小の方向に向かわないことを切に祈ります。廃案だって実はまだ諦めてませんよ!


BLと政治

2010年12月13日 | ニュース

大局的な見地に立って東京都の青少年健全育成条例改正案に反対してくださる漫画家のちばてつや先生や永井豪先生たちには申し訳ないのですが、私にとって大切な趣味であり職業にもなったBLに関わるという点から、改正案には殊更に注目してきました。

 

世間では、条例の内容を知らず関心もない人が多いと思います。マンガやアニメ、BLやロリショタ、エロに興味がない人にとっては、過激な性描写が蔓延し子供が自由に手に取ることができる現状とやらを、行政が販売規制するのは好ましいと賛同するでしょう。いくらブログやツイッターで反対意見を表明しても、実際のところその声は都議会に届きません。

BLという、密やかにたしなんできた一趣味がこうして政治の舞台に引き上げられたとき、私たちは経験値が低く、「どうすればいいかわからない」「誰かが反対運動してくれるだろう」「こんな馬鹿げたことがまかり通るわけない」と、見守るばかりになりがちです。しかし今回の件では、規制推進派のロビー活動の効力を感じずにいられません。

 

私が実際に送った陳情書の文章を公開します。

陳情理由として、できるだけ簡潔に自分の意見を伝えます。箇条書きも読みやすいようです。もちろんBLに偏った陳情理由にはしていませんが、これを見て、政治との関わりに対して心の垣根が少しでも低くなってもらえたら嬉しいです。

BLを読み続ける限り、「こうあるべき」という社会道徳の押しつけや、物語への行政の介入に抵抗しなければならない時代がやってきたようなので。

 

“突然の陳情書大変失礼いたします。○○県に住む○○と申します。

今回の東京都の青少年健全育成条例改正案は、児童ポルノ法にも通じる大変重要な内容にも関わらず、一自治体である東京都によって拙速に可決されようとしています。

例えば、第三章第七条の二、第八条の二の「刑罰法規に触れる」「婚姻を禁止されている近親者間の」「社会規範に反する」性的描写等を規制するという条文は極めて曖昧で、ガイドラインも示されていないのにその判断を東京都の行政当局が行うとしています。

私たちが、マンガをはじめとする様々な文化に実際に触れ、家族や学校、友人たちに教わり、自分で学び取ってきた社会規範、社会道徳が、東京都によって強制されるのです。

しかも、規制対象である漫画家やアニメ制作者たちとの話し合いを今日までもたず、出版業界等の自主規制やゾーニングといった取り組みを無視しています。

マンガとアニメに限定された指定対象は、明らかな文化弾圧であると見受けられます。

議論は尽くされていません。

私は○○県に住みますが、この条例の影響は全国に及ぶと危惧しております。何卒、今回の条例改正案の否決にお力添えいただけますよう、お願い申しあげます。”

 

…とまあ、拙いですがこんな感じです。分量としてB5用紙半分でした。書きながら自分の考えをまとめ、2通目以降は丸写しなので早かったです。

いろんな方が書かれた陳情書が読め、書き方をまとめたサイトもありますので、興味をお持ちになりましたらご参考になさってください。

 

『東京都青少年健全育成条例改正案への陳情書の書き方まとめサイト』http://www15.atpages.jp/~kageyanma/hiji/index.html#0

『東京都青少年健全育成条例改正問題のまとめサイト』http://mitb.bufsiz.jp/

そのほか個人的に興味深かったコラム

衆議院議員 有田芳生さん『誰もがうなずく言葉に隠された表現弾圧を許すな!』http://arita.tanigawa.info/#clum01

作家 山崎マキコさん『子供にとっての性的世界』 http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/sample/onti/100902/index.html


「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」に反対します

2010年12月11日 | ニュース

東京都青少年健全育成条例の改正案が、15日の定例都議会最終日に賛成多数で成立することが確定的になった、と報じられています。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101210-00000113-jij-soci

 

今年6月、東京都青少年健全育成条例の改正案は、「18歳未満に見える非実在青少年」と表現された規制の対象が極めて曖昧であるとして多くの議論を呼び、否決されました。

今回提出された条例は、その改正案に修正を加えたものです。

 

ではどのように修正されたかというと、

例えば上記の「18歳未満に見える非実在青少年」は、

 

第三章 不健全な図書類等の販売等の規制

(図書類等の販売等及び興行の自主規制)

 第七条 図書類の発行、販売又は貸付けを業とする者並びに映画等を主催する者及び興行場(興行場法(昭和二十三年法律 第百三十七号)第一条の興行場をいう。以下同じ。)を経営する者は、図書類又は映画等の内容が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、相互に協力し、緊密な連絡の下に、当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない。

一 青少年に対し、性的感情を刺激し、残虐性を助長し、又は自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

  

この条文のうち、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為とあるため、規制対象は全年齢になったことがわかります。

 

18歳未満に見えるキャラクターで性交若しくは性交類似行為の描写があるものは、淫行条例に触れることになります。

しかし、BLマンガ雑誌のなかには、そういった描写があるなしに関わらず高校生NG、の方針に切り替えた編集部があります。さすがに連載中のものを急に設定変更するわけにはいかないので、読者さんからすると一見わからないかもしれませんが、自主規制という名の業界の委縮は始まっています。

ましてや強姦や痴漢、近親相姦などとなると、全年齢のキャラクターが規制対象です。

最終的にはハッピーエンドなお話も、親の再婚で兄弟となったキャラクターたちのラブストーリーも、刑罰法規に触れ近親者間における性交行為を不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにあたるでしょう。

 

今回の改正案の内容が依然曖昧で、むしろ規制の対象が拡大していると言われる所以は以下の条文からもわかります。

  

(不健全な図書類等の指定)

第八条 知事は、次に掲げるものを青少年の健全な育成を阻害するものとして指定することができる。

二 販売され、若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、第七条第二号に該当するもののうち、強姦等の著しく社会規範に反する性交または性交類似行為を、著しく不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を著しく妨げるものとして、東京都規則で定める基準に該当し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの

 

七条が自主規制の要件であるのに対し、八条は不健全指定の要件です。

ここで問題視されているのは、社会規範に反する性交または性交類似行為を規制対象としていることです。これも全年齢のキャラクターが対象です。

 

社会規範に反する、とは何でしょうか。

不道徳、性倒錯、不純な愛…昨今の石原都知事の差別発言からすると、BLはずばりこれに当てはまりそうですね。

前回の改定案で「いたずらに性欲を刺激する性交または性交類似行為」を規制対象としていたのが「性に関することを未成年から遠ざける」ことが目的であったと見るなら、今回は「社会道徳を未成年に法で強制する」ことが目的なようです。

 

私たちが、マンガをはじめとした様々な文化に実際に触れ、家族や学校・友人たちに教わり、自分で学びとってきた社会道徳が、東京都という一自治体に強要されるのです。

 

しかも、あらかじめ公にして議論を尽くすべき改正案が、今回、最も重要視されるべき漫画家やアニメ制作者との話し合いが一度も行われないまま、今日に至っています。

告示日    11月22日
開会(本会議)    11月30日
代表質問    12月7日
一般質問    12月8日
常任委員会    12月9~13日
閉会(本会議)    12月15日

昨日10日、都議会の民主、自民、公明の3会派は、「作品の芸術性や社会性などをくみ取り、慎重に条例を運用する」「不健全図書を指定する審議会が検討時間を十分に確保する」条件を付帯決議案に盛り込み、賛成する方針を固めました。

しかし、「作品の芸術性や社会性などをくみ取り、慎重に条例を運用する」のも「不健全図書を指定する審議会が検討時間を十分に確保する」のも、話し合いを断ち拙速に条例を通そうとしている東京都です。恣意的に運用されるのではないか不安です。

(1999年に成立し、その後も改正されている児童ポルノ法では、絵やマンガによる表現の禁止が、本来の法趣旨である“児童の人権保護”とは無関係な恣意的運用による「言論・表現の自由への制限」が考えられるとして含まれていません。一国の法律であるだけに、慎重な審議が続けられています)

 

マスメディアは、「過激な性的描写がある漫画の販売規制を強化する」「子どものキャラクターによる露骨な性行為を描いた漫画やアニメの販売・レンタルを規制する」東京都青少年健全育成条例の改正案と謳いますが、出版界等の自主規制やゾーニングの取り組みは紹介されません。

読者がほぼ女性でテーマが男性同士の恋愛、というBLは、表現の自由の享受と引き換えに必要な、表現の自由の責任に対して甘かった部分があるので、これからは露骨な性器描写に対しては自主規制が必要となります。

しかしBLが社会規範に反するとは思いませんし、マンガのキャラクターが刑罰法規に触れる性交をすることや近親者間で性交することを都に禁止されるのは、まったく馬鹿げた話だと私は思います。

 

まあ他にも、

じゃあなぜ小説と実写は対象外なんだ、とか、

18歳未満に「見える」キャラクターって誰が判断するんだよ、とか、

そもそもなぜキャラクターに現実世界の法規を適用するんだ、とかありますが、

とにかく私は

「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」に反対します。