新旧の書籍および映画の批評,作品解説.
Augustrait





[提供:中央公論新社]
 知的な観察によって,人を悩ます強弁・詭弁の正体を見やぶろう.言い負かし術には強くならなくとも,そこから議論を楽しむ「ゆとり」が生まれる.人食いワニのパラドックスや死刑囚のパラドックスなど,論理パズルの名品を題材に,論理のあそびをじっくり味わおう.それは,詭弁術に立ち向かうための頭の訓練にもなる.ギリシャの哲人からルイス・キャロルまでが登場する,愉快な論理学の本.「鏡と左右」問題の付録つき――.

 紀元前400年以前のギリシアのアテナイなどで活躍したソフィストは,知者,教師,雄弁家,詭弁家などの顔で巧みに人心を惑わした.古今,勝手な前提の上に論を積み上げていく詭弁論法は,正当な弁論術より有用性が高い.西欧の論理学体系のなかで位置を占めたアリストテレス(Aristoteles)『詭弁論駁論』,中国の春秋戦国時代に現れた諸子百家など,彼らは「詭弁」と「強弁」を駆使して人を煙に巻く.本書は,版を重ね改版もなされた名著.II部で強弁術,III部で詭弁術を取り上げる.その説明は論理的で読みやすい.

 本書は,広義の詭弁のテクニックを知的・論理的に観察することを強調しており,当然,議論に強くなるための素材提供を行うものではない.相手のいうことを聞かず,自分の主張に確信を持ち,逆らうものは悪魔とレッテルを貼り,自分のいいたいことを繰り返し,おどし,泣き,またはしゃべりまくる.それによって自己の言い分を押し通すのは強弁.論点のすりかえ,主張の言いかえ,消去法などを用いて,豊富な実例(論証の厚み)と大学者の学説の引用(権威の利用)でもっともらしく理屈を偽装するのが詭弁である.

 人を説得するのに論理的な正しさはあまり意味がなく,屁理屈でもよいから権威を背景に相手をねじ伏せる術に長けた者が勝者となる.もっとも,権威の同等な者の間では,強弁よりも詭弁のセンスで優位に立てるかどうかが決まる.相手を従わせるためだけの詭弁術では,全学問の方法的基礎となるヘーゲル的な弁証法には到底及ばないが,それを意識する人間であればそもそも,特段に詭弁の論理に精通する意義を見出していない.

詭弁の話術―即応する頭の回転 (角川文庫)
阿刀田 高
角川書店

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原題: 詭弁論理学
著者: 野崎昭弘

ISBN: 9784121804488
  • 『詭弁論理学』野崎昭弘
    --中央公論新社,2017.4, 改版, 225p, 18cm
    (C) 2017 野崎昭弘




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