山口オーディション
結婚式の二次会かなんかでカラオケ屋に入ったら、オーディションの貼り紙があって。
仕事の後輩や友達が「最後にこれ受ければいいじゃない」、「お前だったら絶対受かるよ」って言ってくれて、
賞金の10万円をもらったら、みんなで飲みに行こうっていう話になって、受けることにしたんですよ。
地元で開かれるオーディションだったから、別に調子に乗ってるわけじゃなくて、「優勝して当たり前だろ」みたいなのはあったんです。
最終オーディションはテレビでも放送されたんですけど、そのときにエイベックスの人がいっぱい来てて……。
そんときも、ちゃんとしなくちゃいけないっていうのがないから、超派手なスーツでグラスが斜めになったようなサングラスかけて歌ってたんですよ(笑)
エイベックスの人にも「仕事もしてるし、これが最後、もう歌はやらないって決めてるんです」って話したら、「もったいないから、絶対歌を続けた方がいいよ」って。
で、「今ここでスカウトするとは言えないけど、1週間だけ待ってくれ」って言われて。
それから3日か4日後に「1週間後、東京に来てくれ」って言われたんですよね。
で、行ったらいきなりオーディションだったという。
EXILEオーディション
3日後くらいに「これを歌ってください」って「Follow Me」のカセットが届いたんですよ。
当時はR&Bとか興味がなかったし「こんなキーの高い曲歌えるか!」って思って(笑)
でも俺は極限まで練習しないと気が済まないから、それから3日後、毎日4~5時間歌ってましたね。
生の声を自分で聴かないとダメだと思って、近くのトンネルに車で行って、カーステレオから大音量でカセットを流しながら練習してました。
で、やっと覚えて東京に行ったら、今度はブースという、今までに入ったことのない世界で歌わされて。
たぶん、それまで培ってきた根性がなかったら、その時点でビビってた。それまでいろんなことをしてたから、そこでも生の自分が勝っちゃって「オラァ~!」ってなって。
「1週間後に東京に来てくれ」って言われたから、その1週間で仕事を任す人間や若いヤツひとりひとりに、
納得のいくように説明して、それで東京に行ったんですよ。
親は俺は、言われても聞かないから別に何も言わなかったですよ。
ただ「5年はやりたい放題やって、それでもしダメだったら、帰ってきてしっかり仕事しろ」って。
母ちゃんは歌のことはあんまわからないんで。テレビに出てる息子を見るのが好きなんですよね(笑)
親父も「ちょっとはうもうなった(うまくなった)」とか言ったことはあるけど、あんまり褒めないんですよ。生まれて2回しか褒められたことないから。
父からのTEL
ファーストアルバムが出たあと、友達とカラオケに行ってたときに自宅から電話があったんですよ。
親はいつも10時くらいには寝てるのに、12時くらいだったから、何かあったのかな?って思ってすぐ出て。
そしたら親父が「ソロ(それが僕だから)聴いたけど詞いいなぁ」って。
普段、そんなこと絶対言わないのに……。昔の俺と今の俺とリンクするからなんでしょうけど、
「最後まで聴けない」って兄貴には言ってたらしいです。
そのあとのライブも観に来なかったし……。
ちょうど、あの詞のとおり悩んでた時期だったから、褒められて俺もすごいうれしくて、
ひとりでずっとカラオケ店の外で泣いてたっていう……(笑)
葛藤
説明するの、難しいんですけど“EXILEのSHUN"と“清木場俊介"は違うんですよ。どちらも自分なんですね。
だけど、プライベートで街を歩いてるときに「あ、EXILEだ!」って言われても「いや、俺はEXILEじゃないんだよ、俺は清木場俊介なんだよ」って思うんですね。
そこがうまく切り替えられるほど器用じゃないんだけど、切り替えなきゃいけない……。
ずっとEXILEのSHUNじゃ無理だし、EXILEで清木場俊介としてずっと歌ってくのも無理だし……。
すごい葛藤はありますよね。最近、そのふたりがすごく戦ってますね。
だからファンに手紙とか書くときには絶対“EXILE・SHUN→清木場俊介"って書くんですよ。
「ふたりの意味があるよ。だから勘違いしないでくれよ」っていうことなんですけど……。
歌詞も清木場俊介の書く歌詞とEXILEのSHUNの歌詞は違う。それは振り分けて書いてるんですよね。
EXILEのSHUNの歌詞は、曲が上がったときにしか書けない、つまり曲から思い浮かぶ詞なんですよ。
だけど、清木場俊介の詩は常に書ける。その詩はEXILEでは絶対に出せないんですよ、すごく濃いんで。
今、ようやくまともに普通のレベルで聴けるぐらいの状態で歌えるようになったから、自信はだんだん付いてますね。
前の俺は伝えることしかないって思ってたから、うまくなりたいとは思わなかったんですよ。
テクニックを付けると、伝える部分がどんどんどんどん削られていくようで怖かったっていう。
だから、テクニック50、伝える50より俺の場合、伝える100でいいんですよ。
テクニックってあとからついてくるもんじゃないですか。
それに、どんなにうまくても伝わらない人はたくさんいるし、自分の感情を思いっきり前に出さないで、
テクニックばっかりで歌ってる人を見ると「それで楽しいのかな?」って思うんですよ。
でも、まぁその人なりのやり方があって、それがその人にとってはいちばんいい表現方法かもしれないですけど、俺はそういう部類ではなかったっていう……。
あと、EXILEとしての自分も“自分"であることにまったく変わりはないんですけど、歌うにあたっては切り替えないとしょうがないんですよ。
「俺は尾崎が好きだから、尾崎の曲しか歌わないです」って、EXILEで言ってたら仕事になんない。
だから、そこは自分でうまくやんないと……。
歌はどれもいっしょなんだ、歌えるだけでいいんだっていうのを俺はわかってるんだけど、その中でまたいろいろ葛藤があって……。
EXILEでは最低限の自分のレベル保って、その中で伝えなくちゃいけないって思ってますね。
俺は、感情が高ぶったときに、ライブで泣いたりもするし、笑ったりもする。
機械じゃないんだから、思うままに歌えればいいって思っていて。
ファンから「もうちょっと落ち着いて歌えばいいじゃない」みたいな意見が来るんですけど、落ち着いて歌っちゃったら、俺じゃなくなるんだよって思う。
そこをわかってもらえない人は、たぶん一生、俺の歌い方をわからないでしょうね。
まぁ俺の伝え方不足なのかもしれないですけどね、それも。
もっとうまい表現の方法があるのかもしれないし……。
わからない人にも伝えたいんだけど、やっぱりそれぞれ好き嫌いもあるから。
「好き」って言ってくれる人は絶対裏切らないですよ。技術に逃げたり絶対にしない。