エリゼ宮の女たち フランス政界の女性たちを青地イザンベール まみが論じます

フランスのファーストレディや女性閣僚。大統領官邸、エリゼ宮の女性達のキャリア、信念、ファッション、そして恋。

Vol.2 新大統領夫人ブリジット 女は若さじゃない。恋に命をかける覚悟。

2017年05月13日 10時37分59秒 | 日記
 写真は、別荘がある英仏海峡に面した海岸、ル・トゥケ・パリ・プラージュでのマクロン夫妻。パリマッチ誌の表紙から。

 24歳年上、マクロン新大統領がブリジットに出会った16歳の時。彼女は40歳で三人の子持ちの人妻。高校の先生と生徒の禁断の恋?新ファーストレディ、ブリジットさんは、とやかく言おうと思えばとやかく言える。だけど、言ったほうがみっともなく見えるから皆、言いません。なぜでしょう。このサッパリ感。ブログ第二回目は大統領官邸、エリゼ宮の新たな女主人になるマクロン夫人、ブリジットのスタイルを語りましょう。プロポーション。ファッション。恋愛。3つの意味でブリジットのスタイルとは?

 フランスの女性雑誌Galaも「ブリジット・マクロンの魅力 ここで差がつく」という特集を組んでいます。

奇跡の体型

 64歳の今でもオリンピック選手並みの体型を保っているのは運動を欠かさない習慣のおかげ。フランス人は週末は郊外の別荘で過ごす習慣がありますが、マクロン夫妻の別荘は英仏海峡の海岸、ル・トゥケ・パリ・プラージュ。とても立派な別荘です。マクロン新大統領夫妻は、ブリジットのお子さん3人、お孫さん7人という大家族ですからね。写真はフランスインフォ(Franceinfo)さんから。


 フランスの新大統領は若干39歳の若さなのに、義理とは言え、おじいちゃん。義理の息子が自分より年上。同い年の義理の娘、ロランスは高校の同級生でブリジット先生の娘だったというような井戸端会議は飛ばして先へ進みます。ついでに、昔の都知事が「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なる物はでんでん」と言ったとか、くだらない話も飛ばします。
 
 ブリジットが体型を維持している秘訣は、毎週末の海岸の散歩に加えて、パリでも普段からスポーツジム通いを欠かさないからだと報道されています。この努力あってこそ、奇跡のミニスカートとハイヒール。


 運動を欠かさない努力。初老の域を迎える筆者も反省してがんばろうと思いました。「40を越えたら女のスタイルは自分で責任を持て」です。

カリフォルニアガールのような髪と肌

 ブロンドでよく日焼けした元気なルックスはカリフォルニア風とフランスでは称賛されます。想起されるイメージはセレブで余裕ある暮らしでしょうか。ひと昔前のフランスでは冬でも日焼けしている人は、シャモニー(シャモニクスと発音するとシックに聞こえる)でスキーをしているセレブのイメージでした。最近、日焼けはどうかというスキンケアの専門家もフランスに増えてはきました。日焼けはシワやシミの原因になるからです。ところがブリジットは「若く見せようとしない」。これから彼女の写真は多く出ると思いますが、けっこうしわくちゃです。よく笑う人ですからね。整形でシワをとって美魔女とか、そういう考えに程遠いのがブリジットさん。体型も大人の体型だけど鍛えて保つ。

ロックンロールな生き方はアイメイクに

 わたくし達日本人女性が目をアイラインで目を額縁のように囲んでも、ブリジットさんのようにはうまくいきません。目の色がダークブラウンだから映えない。メイクの技も努力の賜物と言えば、そうなのですが、生き方がロックだからこのメイクなんですね。ブリジットの恋愛が全然、オッケーなのかというと、いくらフランスでもそうはいきません。

 マクロンが高校教師に恋していることを知ったお母様はブリジットにこう言ったそうです。「あなたはお子さんもいて人生の喜びを知っている。でも、うちの息子は永遠に子供を持つことができないかもしれない。息子が18になるまで絶対に会わないでください。」

 ブリジットは答えた。「何もお約束できません。」
お約束できない。これが真実の恋ではないだろうか。ティーンエイジャーのエマニュエル・マクロンにブリジットが惹かれたのは、並外れた知性と聡明さ。自分が教えている生徒の知性に惚れたのですよ。すごいことだと思いませんか。教えてあげている立場だからという決めつけがない。ロックンロールな恋。教師と生徒が対等な立場で議論しあうフランスのリベラルな雰囲気が伝わってくる逸話ですね。

 エマニュエル・マクロンがブリジットと引き離され、パリの高校に転校させられても週末になると二人は故郷、アミアンで会っていた。普通のデートです。裕福な製菓業者だったブリジットの実家のプールサイドで語り合っていた。

 転校先のパリの名門校、アンリ4世高校の同級生がインタビューに答えています。「エマニュエル・マクロンはイケメンで人気があったけど、彼の心の中にはずっとブリジットしかいないことはわかっていた。エマニュエルは何も言わなかったけど、それが前の高校の先生だということは皆、知ってた。」

 人妻であっても、教師であっても、同級生のお母さんであっても、両親にどれほど反対されても、自分の愛する女はこの人だけだと愛されたブリジット。そして、どんなに白い目で見られようとも、自分の子供より年下であろうが、人柄と知性を尊敬し、エマニュエル・マクロン新大統領を愛しぬいたブリジット。


 ロックンロールな生き方は勇気がいる。



参考資料はフランスのGala誌ブリジット・トロニュー(旧姓)特集:

”Brigitte Macron : ses 5 atouts beauté POURQUOI SON STYLE PEUT FAIRE LA DIFFÉ­RENCE ?" http://www.gala.fr/beaute/beaute_de_star/brigitte_macron_ses_5_atouts_beaute_388762http://www.gala.fr/stars_et_gotha/brigitte_trogneux
Amiens, Paris, Le Touquet : Emmanuel Macron, candidat sans fie:http://www.francetvinfo.fr/politique/emmanuel-macron/amiens-paris-le-touquet-emmanuel-macron-candidat-sans-fief_2162526.html


Vol.1 エッジの効いた候補が強いフランス大統領選挙 マリーヌの言い分もわかるけど、ちょっと引いちゃうよね

2017年05月12日 11時56分29秒 | 日記
2017年フランス大統領選、生まれて初めて選挙に立候補したエマニュエル・マクロン、若干39歳が大統領に!生まれて初めて選挙に出馬したんですよ!!このブログは、奇跡の64歳、ブリジット新大統領夫人の恋とライフスタイル、マクロンの女性閣僚のファションや恋愛に焦点をあてて書くブログなんだけど、初回は日本と違って面白いフランスの選挙制度のことに触れます。 選挙戦結果は、マリーヌの言い分もわかるけどちょっと引くよねということ。 決戦にまで進出した女性候補、都民ファーストならぬ、フランス・ファーストのマリーヌ・ルペン。なんで落ちたのか、というより、なんで決戦までいったのか?彼女を例に特徴あるフランスの二回投票制度を見てみましょう。

 決戦投票でのマリーヌの得票率34.03%は多いという印象があるかもしれませんが、大敗を帰したのが実情。二人しか候補がいない決戦投票では通常、当選者が50%少し越え、落選者が47%前後が通例。フランス国民のジャッジは「マリーヌの言うこともよくわかるが、やはりこの国の政治をまかせると思うと、ちょっと引いちゃうよね。」だった。「マリーヌの言うこともよくわかる」と言う人がかなりいたから、決戦で国民の信を問うまでになった。 フランスの二回投票制度  ん〜、ややこしくてわかりづらいですよね。私もそう思う。なので、ブログの第一回では皆さんと一緒にフランスの選挙制度、二回投票制をおさらいしておきたいです。日本にはない制度なのでちょっと面白い。基本的に第一回投票はルペンさんのようなエッジがすごく効いた候補に有利なのがフランス大統領選。ただし、決戦では「ちょっとエッジ効かせすぎたかな」と修正されるのが通例。

 フランスの選挙は二回投票制で決戦投票は上位二人のみで行われ、当選者は必ず過半数以上を得票する。その決戦投票でルペンが34.30%しか得票していないのは例外的な大敗北。ではなぜ、ルペンのような極端な候補が決戦まで進みやすいのか?第一回投票の時は、実際に当選する次期大統領も含めて、皆、どんぐりの背比べだからなんです。その中でエッジの効いた候補は決戦に進みやすい。でも、決戦では「とがっているところが拒否され」、マクロンのような「まるい候補」にやぶれるのがオチ。これがフランス大統領選挙のおおざっぱなパターンだ。誰が「とがりすぎてる候補を拒否」するのかというと、もちろん、もともと、マクロンを支持していた人ではなくて、三位以下の、どんぐりのせいくらべ状態の候補に投票した人々だ。今回なら共和党のフィヨン元首相やフランスのサンダースとも言われているメランションに入れた人々。

 過去の大統領選を振り返ると、2012年:社会党オランド51.64%/現職共和党サルコジ48.36%、2007年国民運動連合(ドゴール派など)サルコジ53.06%社会党ロワイヤル46.94%。決戦で落選する候補は普通、惜敗なのが通例。40%後半になることが多い。国民の支持率がもっとも高い候補の中でもどちらがいいかを最終決定する投票だから当然と言える。

マリーヌよりもっとエッジの効いたルペン・パパも決戦進出したことがある

 しかし、過去の第一回投票にはとがった候補が健闘し、決戦まで進出した例がある。ただし、共和党と社会党、二大政党の大物候補にスキャンダルや失政など、厳しい批判票が生じた時、という条件がある。多数の候補が出馬する第一回投票では、二大政党候補といえど20%に満たない得票率で三位四位とあまり差はないことがよくある。ルペン父と娘、国民戦線が決戦進出した二度の選挙の第一回投票結果を見てみよう。2002年は現職シラクに汚職疑惑があり、19.88。シラクは超有名だから意外でしょう?実はフランス人もちょっとびびった、ルペン父が16.86%で決戦進出。ねじれ状態でシラク政権の首相だった社会党ジョスパンが治安問題の失政を問われて16.18%しか得票が伸びず、ルペンに敗れ政界引退。ジョスパン落選にもフランス人はめちゃくちゃびびり、開票直後から、「ファシスト通すな、詐欺師に入れろ!Votez escroc pas facho!」デモが起こった。詐欺師に入れろ、はないだろうと思うけれど、おかげでシラク大統領は二期目を続行。「ちょっとエッジ効かせすぎたかな。」と主権者自ら修正したのだ。父のジャンマリー・ルペンはホロコーストはなかったという失言をしたこともあり、危険視されていた。

 国民戦線のイメージといえば危険なレイシストが定番。フランスの政治風刺番組、ギニョールダンフォGignols d'infoの動画でもこんなギャクが。「レイシズム解放Free Racism」。性の解放ならぬ差別の解放。お父さんと娘でイスラム教徒いためつけてる。

Free Racism - Les Guignols de l'info

 失言やタブーもある種の人々には「エッジが効いている」ので国民戦線は1972年の創設以来、徐々に支持を増やしてきた。お父さんも、そして更に娘のマリーヌも失業者や貧困層への手厚い政策を作り上げてきたのは本当だ。

 では、2002年にエッジの効いた候補だったジャンマリー・ルペン(ルペン父)は決戦ではどうだったのだろう?結果は、決戦進出する人にはあり得ない大差、17.7%で現職のシラクに負けた。それでも決戦まで進むのは、フランスでは多様な新党や市民運動が直接、大統領官邸(エリゼ宮)にアクセスしやすいからだと思う。

保守革新の二大政党が決戦に残らなかった2017大統領選挙

 今回、2017年の第一回投票では、なんと、二大政党候補が決戦に残らなかった。今は「前進En Marche」を率いてはいるが、無党派候補であるマクロンが24.01%、国民戦線マリーヌ・ルペンが21.3%、三位にやっと最大野党共和党フィヨン20.1%が来る。フィヨンは選挙前に汚職疑惑で人気を落とした。オランド大統領の与党、社会党厚生大臣のアモンに至っては、6.36%の驚くべき低得票率。アモンは、無党派層の支持を集め四位に浮上した左派で無党派(左翼党)メランション17.03%にはるかに及ばない。社会党はオランド政権支持率低迷に加え、というか、どこの国でも支持率低迷の政党にはよくあることだけど内部分裂し、選挙直前まで首相だったマニュアル・バルスをバッシングし、予備選挙で落選させている。

  フランスでも社会党と共和党の二大政党が堅固な組織を持っている。だが、全国的、全世界的なイベントである5年に一度の大統領選挙とは、小政党、新党、市民団体が大いにアピールをする絶好の機会だ。国民にとっても、5年に一度は新たな政治運動を直に見定め、取捨選択をする大切な機会なのだ。今回も、第一回投票で泡沫と呼び得る候補はルペンも含めて殆どいない。ルペンさんは日本の報道では極右・差別主義という烙印を押されがちだが、主に貧困層の利益を代弁し、経済面での保護主義のため、EUから主権を回復を訴える候補。EU脱退だけでも極めて「とがっていた」。貧困層重視の政策、既存のエリート政治からの脱却も評価もされていた。エリート政治からの脱却、EU脱却ではないが反グローバリズムのメランションというオプションもあった。フランスの選挙は選択肢が広く、毎回、実力ある候補が出るの面白い。
 
EUどうする?をみんなで考えた選挙

 今回の「EUどうする?」と同じように、シングルイッシュー、一つの課題だけを追求する小政党も大統領選のときに国民にしっかりアピールして政治にちゃんと自分の場所を作る。環境保護に特化する緑の党がオランド政権と連立していたことは知られている。環境保護、EU脱退、移民受け入れ問題といった個別の重要問題を国民が深く吟味できることも、5年に一度の大統領選挙・下院(国民議会)選挙の素晴らしいところだ。

  リベラルと保守双方の堅固な政党があることもフランス政治の強みではあるが、少数政党、分派、あるいは、まったくの独立した政治運動団体からでも、大統領選を狙える政治文化は羨ましく思う。マクロンがオランド政権の閣僚だったこと、あるいは銀行家だと言って批判はそれなりにある。だが、それでも、生まれてはじめて選挙に出た人が大統領になる可能性を持つ国、フランス。いいな、と、思う。

  マリーヌさんは今後の伸びしろが見えないように思う。今回、国民戦線は最高の条件で闘った。トランプ旋風、欧州諸国を席巻する反EU運動、テロが直前に勃発。それでも34.03%だった。二回投票制だと国民の真意がわかりやすいところも評価できると思う。いや、本当です。お父さんの時代まで、国民戦線は差別主義の烙印を押され、蛇蝎のごとく嫌われていた。嫌われていることを知って改善し躍進しててきたマリーヌさん。結果、フランス国民の総意は「マリーヌの言うこともよくわかるが、やはり政治をまかせるにはちょっと引いちゃうよね。」だった。今後、どうするのかも注目したい。