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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

最も印象に残った球児   44.高知

2012年09月20日 | 高校野球名勝負

◇もっとも印象に残った球児

44.高知



渡辺 智男   投手    伊野商業   1985年 春     


甲子園での戦績

85年 春   1回戦     〇   5-1    東海大浦安(千葉)
        2回戦     〇   5-3    鹿児島商工(鹿児島)
        準々決勝   〇   5-0    西条(愛媛)
        準決勝    〇   3-1    PL学園(大阪)
        決勝      〇   4-0    帝京(東東京)


豪快な気風で知られる高知県人。
その高知にあっては、剛腕投手が好まれます。

思いつくままあげても、
高知商では78・79年の森、80年の中西、83年の津野、85年の中山、86年の岡林、88年の岡など、
毎年のように剛腕投手が現れました。
選抜準優勝の中村・山沖や、高知・土佐・明徳などでも年代によって幾多の名投手が現れましたが、
ワタシは最も印象に残っている剛腕投手として、
やはりKKのPLを完ぺきに抑え込んでセンバツ初出場・初優勝を果たした伊野商・渡辺のその鮮烈なる投球を挙げたいと思います。


前年の秋の大会で、
県大会、四国大会ともに明徳に敗れて『2位』の座に甘んじていたこの年の伊野商。
いずれの試合でも渡辺は打ち込まれ完敗を喫していたので、
選抜出場が決まってもさほど注目される存在ではありませんでした。
(ちなみに四国大会優勝の明徳は、不祥事で選抜を辞退しました。)

その選抜の初戦。
渡辺は関東大会優勝で強打が自慢だった東海大浦安に対して好投をしてから、
すっかり自信をつけたようでしたね。

鹿児島商工、西条に勝ち準決勝に進出した伊野商、
ここで優勝候補の大本命・PL学園と激突しました。

PLはここまで、
正に順風満帆の勝ち上り。

一点の曇りもなく優勝への道を突き進んでいました。

しかもKK入学以来、
一度も決勝進出を逃したことはありませんでした。

もちろん戦前の予想はPL有利一辺倒。
書かれ方としては、
『伊野商にチャンスがあるとすれば・・・・・・』
といったもので、
そのチャンスは正味10%もないだろうという見方が支配的でした。

しかし試合が始まって、
ふわふわしたうちに伊野商が1回表に桑田の立ち上がりを捕らえて2点を先取。
なんとなく、『おやっ』と観客が思い始めました。

一方の渡辺は、
PL相手に初回から臆することなく、
得意の『伸びる速球』をビシビシ決めていき、
強打のPL打線に力勝負を挑んでいきます。

PLとしては、
『じっくり料理してやる』
といった感じでしたが、
渡辺の球を芯でとらえることが出来ず、
リードを許したまま回が進んでいきました。

5回にPLはようやく、
キャプテン・松山の一発で1点差に追いつきますが、
すぐさま1点を追加され2点差へ。

このあたりから、
明らかにPL打線に焦りの色が伺えはじめました。

3-1で迎えた8回。
ここまで【最強軍団】をわずか1失点に抑えてきた渡辺は、
主砲・清原との勝負に臨みます。

この勝負。

高校野球史に燦然と輝くような、
インパクトを残した結末となりました。

渡辺はすべて【剛球】勝負。

そして清原のバットは確か2度空を切り、
3球目の『ど真ん中』の剛球には、
ピクリとも動きませんでした。

3球三振。

渡辺はまさにマウンド上で、
阿修羅のごとき凄まじいたたずまいでした。

後に清原が、
『あんな凄い球は経験したことがなかった』
といい、
敗れた試合では清原が抑えられたことが敗因のひとつともなったこのスラッガーは、
最後の夏に向けて
『大事な試合の、いいところで打つ』
事だけを目指し、
さらに過酷な振込みを自分に課していくのです。

そんなすごい対戦でした。

渡辺投手の投球フォーム、
今でも頭の中に描くことが出来ます。

ゆったりと構えてタメを作り、
ギュッと引かれた弓を解き放つように、
最後の場面でビュッと腕を振り、
その遅れて出てきた腕から、
糸を引くような剛球がビシ~~~~ッとキャッチャーミットに吸い込まれます。

見ていて『ほ~っ』とため息が出てしまうような、
素晴らしい球でしたね。

PLを抑え込んだ渡辺にとって、
決勝は言ってみればおまけの様なもの。

準決勝を10とすると、
まあどう贔屓目に見ても6か7ぐらいのピッチングでしたが、
あっけなく0点に抑え、
優勝を遂げました。

決勝では、
自らホームランを放って優勝に花を添えました。


さて、
この夏の高知県大会。

ものすごいことになりました。

元々30校弱しか出場しないこの大会ですが、
全国制覇を狙える強豪が3校も集まりました。

春の選抜優勝の伊野商はもちろん大本命。
渡辺の調子も、夏に向けてもそこそこ良いようでした。

対するは名門・高知商。
ドラ1で大洋に入団する145キロエース・中山を擁し、
攻守ともに『高知商史上最強レベル』と言われました。
ちなみに春の県大会では選抜帰りの伊野商を破り、楽々春の四国大会を制覇していました。

そして忘れてならないのが明徳義塾。
春のセンバツは出場辞退していたものの、
伊野商には2連勝。
甲子園を経験する剛腕・山本を擁して”実力NO1”とも言われました。


この3校の優勝をかけた激しいバトル。
全国屈指のレベルの高さを誇り、
『PLを倒せるとしたら、この3校のうちどこかだ』
とも言われました。


決勝は伊野商vs高知商。

地元では、伊野商は県商、高知商は市商と呼ばれています。
(伊野商は県立、高知商は市立だから)

この商業対決、
高知の地元のみならず、全国の注目を集めました。

しかしこの試合、
両校のモチベーションが違った。

『何が何でも甲子園に行く』
という気迫の高知商に対して、
渡辺をはじめとして伊野商は、
どこか選抜優勝で『すべてをやりきった』感があり、
その【気迫の違い】が試合に現れてしまいました。

予想に反して、
5-1で高知商が圧勝。

2年ぶりの夏の高知県代表の座を奪い取りました。

この数年の高知商の試合に対する気迫は、
本当にすごいものがありましたね。

甲子園では準々決勝でエース中山が、
PLの清原に【高校野球史上最長不倒】ともいうべき豪快弾を浴びて敗れ去りましたが、
『土佐のいごっそう』ぶりは発揮してくれました。


勝っても負けても『土佐のいごっそう』ぶりを発揮するのが高知県代表校の気概。
その気概を、
80年代までの高知県代表の球児たちは、
見せ続けてくれましたね。懐かしいです。


この中山、そして森、中西、津野、岡林、岡、藤川らの高知商の剛腕投手たち。
打者でも青木、明神、正木、森田らの打者。
高知でも杉村、田中、土佐のサイクル男・玉川。そして伊野商の渡辺ら。

後にプロに入った選手もそうでない選手も、
『あ~アイツはすごかった』
という選手が多かった【野球王国】高知。

県民みんな、
【豪快な土佐のいごっそう野球】の復活、
今か今かと待ち望んでいます。

頑張れ!土佐球児!


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