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誤碁の国

漫画「ヒカルの碁」のレビューサイトでした。とりあえず保管。

第17巻「なつかしい笑顔」

2006年07月13日 03時01分20秒 | 第17巻
……徳島県ではジャンプ本誌は木曜、おそくとも金曜には最新号を入手できるのだけれど、コミックスに関しては東京都内の一部書店のほうが早く入手できるらしい。1日にゲットって何さ。土曜に入手できていれば、本誌とコミックスの素敵な連動企画に関して言及できたものを……むぐぐ。

 というわけで、ふつうに今日購入。なんとも美麗な表紙。ヒカルと別れたくない悲しみと、これからはヒカルの心の中でずっと暖かく見守っていく、ともに歩いていくから…という優しさが混じりあった表情が、見事に描かれています。泣き出しそうなのに、安らかな笑みを浮かべてもいる藤原佐為の表紙だけで原価償却できそうです。みずみずしくて艶やかなタッチも素晴らしいですね。



カバーそで解説……2/24付の朝鮮日報をネットで見た人も多いと思います。チョ・フンヒョン(そう・くんげん)九段に取材を行ったときのエピソードがカバーそで(表紙の折り返し部分)にて紹介されています。チョ九段のイラスト、記事の写真と同じ服装ですね。チョ九段といえば、最近では「ミニ碁一番勝負」で日本の若手プロと九路盤で7番勝負をしていましたね。考慮中に日本語でブツブツ言っていたのが、とても印象に残っています。


第140局「決心」……メキメキと顎が長くなっていく主人公ヒカル。イスミンはイスミンで、黒ぶちメガネをかけたら筒井センパイと区別がつかない今週の描写。伊角との対局で(勝敗の行方は不明)迷いをふっきったヒカルは、本因坊リーグ入りをかけて高段者と戦うアキラのいる日本棋院へ急ぐ。そこには、第41局から登場していながら、今まで全然名前が明らかにされなかったコワオモテのあの人(棋院職員)と桑原本因坊の二人が。そして桑原本因坊の口からついに、あの人の名前があきらかに……!! 「坂巻(さかまき)さん」というそうです。実はちょっとタイプ。んで、ヒカルは桑原先生への挨拶もそこそこに、アキラを目指してドラマティックに階段を駆け上る(必見)。これを迎えたアキラくんは、これまたドラマティックに「……追って来い!」などと決めゼリフを何の違和感もなくサラリと言い放ったりしてるし。このマンガの登場人物って、ホントに天然暴走系ばっかりですね。


第141局「復帰初戦」……先週ラストに出てきたのは、やはり村上信一プロ(二段)だった。若獅子戦のときよりも顎がのびて(コイツもか!)、全体的に肉がこそげ落ちた感じで「オタク」色が強まっております。アキラくんが参加した若手勉強会のメンバーたちよりもオタクレベルが高そうです。最近の絵柄の変化のせいか、大人の狡猾さ・意地悪さが際立っているような気がしますね。でも、覚醒したヒカルの前では果たして……? 一方、ひさびさに葉瀬中囲碁部の面々が登場。気になっていた、囲碁大会の結果がここで明らかに。男子は決勝まで進み(海王にストレート負け)、女子も2回戦で負けたものの、1回戦では3人とも勝利をおさめたらしい。津田久美子ちゃん(←ヘボ女by三谷)も勝ったようですね。よかったよかった。そして、アキラくんは大手合で、ヒカルの右ナナメ前隣の盤面で、年のいった女流プロ(どことなく主婦チック)と対局中。てんで勝負にならないオバサン棋士に、アキラくんはチラッ(というかギロッ)と目をやり(=睨み)、無言の圧力で負けを宣言させる。こ、怖~~~~っ。でもアキラくんらしくてウケてしまった。辻岡忠男プロ(二段)はこのマンガでもっとも常識人ぽく見えるキャラなので、地味だけれど頑張って活躍していってほしいです(ちょっとタイプ)。 ※このエピソードで登場するオバサン棋士は、コミックスと同じ日に発売されたジャンプ最新号(150局)でも、ヒカル相手に同じセリフ・同じリアクションを見せてくれる。この対比はコミックス収録分と発売日を考慮したうえで、先行ネーム(2~3ヶ月ずれているそうな)の段階で周到に計算されたものなのだろうか? だとしたらスゴイ! この素敵な連動企画にすなおに感動。


第142局「走り出した二人」……覚醒したヒカルの前には、村上プロもザコ同然。上手く誘導させられて戦意喪失・中押し負け。対局を見ていた辻岡プロはヒカルの才能を確信する。対局に勝利したヒカルを職員の坂巻さんが呼び止め、総務部(ドア上のプレートにめちゃんこちびっこい字でそう書いてある)のデスクで説教。坂巻さんは総務部勤務なのね。きっと採用課なんだわ。ファンレターの宛先は「日本棋院総務部採用課内 坂巻さま」で決まりね! ヒカルにいつもイジワルをしているように見えるので、チビッコ読者には人気のない登場人物だと思うけど、囲碁界の未来を案じる坂巻さんの姿に、私は胸がときめきます。日があけて、ついに平成14年度(ヒカルたちが合格したのは13年度)棋士採用試験本戦がスタート。棋院前の坂道には続々と受験者が姿を見せた。そのなかには読者にとってお馴染みの面々も。門脇元学生三冠はネックレスがいやらしいほど似合っています。片桐恭平(26)も1年ぶりの登場。辻岡プロに次ぐ常識人(=このマンガの良心)なので、今年はぜひ合格してほしいです。去年のプロ試験は18勝9敗でしたから、実力的にはいいセンいっています(ちなみに現実世界での採用試験だと、去年の合格者3名は20~21勝で合格)。帰ってきたイスミンを暖かく迎えるフクちゃん&篠田院生師範。篠田先生は今回とてもおいしい役どころです。あ、この人もこのマンガでは数少ない常識人の一人でしたね。辻岡プロにも勝利して棋院をあとにするヒカル。天野記者にちゃんと挨拶。えらいえらい。今週のアキラくん……『一人、また一人と高段者が彼の前に敗れ去っていくby天野記者』……タイトル戦予選では、松永利之六段(於・王座戦)も上前津宏七段(於・天元戦)も、次々とアキラくんの前にひれ伏していく。敗れ去っていく彼らの前で、依然としてアキラくんは冷たく凛と座したまま、ヒカルの到来を待ちつづける。


インターミッション「ヒカルの碁 ちょっと一言」……朝方、女のマンションから出てくる緒方精次(十段)の姿をとらえた名シーンについての、原作者自身による解説。というか裏話。……笑ったっちゅーねん!


第143局「碁界鳴動」……1コマ目はリーガロイヤルホテル大阪。建物のつくりからして、まずまちがいないでしょう。碁聖決定戦は大阪で行われている模様。おやまあ!乃木九段、実はこの143局が初出だったんですね。塔矢行洋がさっさと引退してしまったため、彼が所持していたタイトルの一つ、「碁聖」も現在空席となっている。迎え撃つタイトルホルダーが不在のため、挑戦者決定戦が事実上の碁聖決定戦となった(異例のできごと)。我らが緒方先生は粘って押し切った末に乃木九段を破り「十段」に続き「碁聖」のタイトルをも獲得。これで2冠ですね。勝利シーンでは眼鏡を外したりなんかして、サービスカットを提供。ソツのなさがうかがえます。タイトルを次々と吸収して完全体への道を歩む緒方を前にして、桑原先生ピンチ。一方、千代田区市ヶ谷の日本棋院では、アキラくんが再び、あのねちこい座間元王座と本因坊リーグ戦で対峙していた。某所で大人気の記録係お姉さんも再登場。今回はキャラに焦点があてられて、清楚なカンジをアピール。うむ、可愛いぞ。そしてそして、芹澤プロもここで初登場。イメージシーンの中でだけど。さらに場面は中国にまでとぶ。楊海くんには世界最強の囲碁エンジンを開発するという野望があったということが発覚。コンピューターマニアという描写はされていたが、まさかここまでとは。伏線の予感。「神の一手」に対するアプローチがここからも為されている。ヒカルとアキラがあいまみえることによってのみ「神の一手」が生じるわけではないのかもしれない。世界各地から「神の一手」に向けてのレースがスタートした。佐為が表舞台から姿を消しても、作品の根底に横たわる壮大なテーマ、物語の糸はしっかりと紡ぎつがれている。ああ、これからの展開が楽しみ楽しみ。しかし……塔矢先生は中国語大丈夫なんでしょうか(通訳同伴でチーム入りするのだろうか)。


第144局「漸くこの日が」……タイトル「暫く(しばらく)」ではないですよ。「漸く(ようやく)」です。“暫定”を“漸定”と書いていた人がいたもので。トビラはヒカルとあかりちゃんの仲睦まじい姿。ふふふ、ということは本編もムフフなわけですね。などと期待していたら、いきなり倉田六段の登場。さらに髪が長くなっているような。でもヒカルと話が弾んでいる様子は見ていて楽しいですね。森下九段の研究会。ヒカルは冴木四段をケチョンケチョンにのして、現在の実力を周囲&読者にアピール。まずまちがいなく、高段者レベル。アキラくんとの対決に、否応なく期待が高まりますね。アバン先生…もとい、白川七段もヒカルの才能に自身のやる気を抑えられない様子。ヒカルは都筑七段とも対局するのかな。研究会から帰宅したヒカルに、お母さんが手合通知のハガキを手渡しました。それは待ちに待った、塔矢アキラとの対局通知。決戦は2週間後……。アキアカネが飛び、落ち葉が風に舞う。季節はもう秋。アキラとの対局を明日に控え、ヒカルはかつて佐為がそうしたように、気分を落ち着けるためにあかりちゃんと一局打つことにしました。ヒカルの誘いに驚き、頬を赤らめるあかりちゃんが可愛いです。冗談を言いあって笑う二人の姿は、まさに健全なカップル。見ていてすがすがしいですね。明けてついに決戦の朝。家をあとにするヒカルとアキラくん、二人の瞳にやどる決意の強さが印象的です。


第145局「ヒカルvsアキラ」……シリアスな展開は必至、だからこそユーモラスなシーンが引き立ちます。いきなり芦原弘幸四段の天然ぶりが炸裂。翻弄される冴木四段と和谷くん。森下門下の悲哀がここに垣間見えます。そして久々に真柴充初段の登場。相変わらずさえない風体。こいつだけは顔変わりそうにないなあ。そこに作者のこだわりを感じたりしないでもありません。エレベーターから出てきたのは塔矢アキラ三段と越智康介初段。エレベーターで何話していたんだよ!と見ているほうは気になりますが、次の瞬間その内容は読者に向けて明かされます。しかも、さらに対決を盛り上げる効果をともなって。本当に見せ方が上手い! 対局場。ヒカルの呼びかけに、ついにアキラが応えます。「うん・長かった……」アキラにも感慨が込み上げてきている様子。そして、ついに対局が始まります。この日が来るのを待ちつづけていたのはアキラくんも同じで、伝えられなかった思いが抑えきれずに、一手一手となって盤上にほとばしります。展開は早く、ヒカルの攻撃に対しアキラも攻撃で応じ、序盤から激しく複雑な戦いに突入しました。


第146局「ヒカルの碁」……ジャンプ本誌を立ち読みしてトビラを目にした瞬間、「も・もしや最終回!?」と衝撃を受けました。満を持して用いられたタイトル、そして本編の展開。「神の一手に向かって己を高めあうヒカルとアキラ───完」……うそでしょーっ!! ハラハラしつつページをめくります。次々と明かされていく謎。省略されたあのシーンのその後が、アキラくんの回想シーンの中で語られます。ヒカルの実力を知ろうと、あちこちに手を回して情報を仕入れるアキラくん。越智との指導碁で「ヒカルとホン・スヨンの対局を海王の担任が目の前で並べてみせてくれた」というセリフが出てきましたが、この回想シーンでは棋譜を見せてもらっていることになっていますね。矛盾ではなく、越智に分かりやすく説明するために「並べてみせてくれた」という表現を使った……ということで納得したいと思います。クライマックス直前にそんな細かいこと気にするのなんて野暮ですもんね。「知りたかったキミの実力は」「ボクの予想通りだ」「まちがいない」「キミはボクの」「生涯のライバル──!!」……アキラの心の声にゾクゾクさせられます。喜びに打ち震える、彼の心の躍る様が見ていて伝わってくるような気がします。そして、ヒカルのケイマで割って入った一手に……アキラはsaiの姿を見出します。天上から射し込む光が抜群のグラフィック効果を出しています。憎いぜ、でも残りページは8ページ。大増ページといっても、最後まとめるには少なすぎはしないか? さらにページをめくると天野さんの姿が。「おいっ!」と思わずツッコミが入ります。そして、「日韓中Jr.杯」なる大会の存在が明らかに。「そういう展開かよ!」と叫んでしまった人が全国に何万人いることやら。あとは安心して読むことができました。まだまだ続きそう。よかったよかった。