70年150年周期説
あの当時のこと
オリーブの栽培方法と歴史の大きな流れとの間に奇妙な一致がある事を見出した時の高揚感はすごいものだった。直前まで全く思っても見なかった類似性、相似性に気づいたのは自分にとっては驚天動地と言えるほどの衝撃だった。
ルネサンス時代の年表を見ていた時に、どういうわけか下記の記述が頭に浮かんできた。
ハロルド・N・モルデンケ、アルマ・L・モルデンケ共著『聖書の植物』奥本裕昭編訳、八坂書房刊、P.52~55
【オリーブを挿し木したまま放置すると野生化し、自由に伸びた枝が絡み合ってやぶのようになり、役に立たない小さな実しか結ばない。
野生のオリーブは栽培されたオリーブから派生したものだが、手入れされたものと違って、その葉は緑が濃くて小さく、細い。幹は堅くてとげが多く、一般に低木であるが、大きく成長して役に立たない小さな実をつけることもある。
そのような野生のオリーブの木の幹を切ってそこに栽培されたオリーブの木の枝を接木(つぎき)し丁寧に刈り込んで育てると、7年くらいで実をつけ始める。
しかし、たくさんの実をつけるようになるには、15年近くかかる。】
* * *
「野生のオリーブの木の幹を切って」を英仏百年戦争開始(開始年には異論があって1337年とする説、1338,1339、1340年とする説がある。)に当てはめたらどうなるのだろう。英仏百年戦争は「野生のオリーブの木の幹を切って」の表現にピッタリと当てはまるのではないか。
そして、大航海時代を見てみると、
バーソロミュー・ディアス喜望峰に到達 (1488年)
コロンブス、アメリカ発見 (1492年)
これは丁度、英仏百年戦争開始から150年ほど経過した時期に当たる。
「たくさんの実をつけるようになるには、15年近くかかる。」
バーソロミュー・ディアス喜望峰に到達(1488年)コロンブス、アメリカ発見(1492年)。この頃、西ヨーロッパ諸国において大きな展望が広がった。これまでより遥かに大きく視野が広がったのである。たくさんの実をつけるようになるのはこれ以後の事となる。「たくさんの実をつけるようになるには、」英仏百年戦争開始から150年近くかかっている。では、英仏百年戦争開始から70年ほど経過した時期(一四世紀のおわりか、たかだか一五世紀はじめまでのころ)はどのような状況にあったのだろうか。
「7年くらいで実をつけ始める。」
その時読んでいた高名な歴史学者の会田雄次氏が著した河出書房「世界の歴史 12ルネサンス 昭和48年8月30日 5版発行 P・111」 にはこう記述されている。
【社会に新興の精神があふれている時代はよい。それがいわゆる商人の英雄時代とよばれるものだ。ルネサンスでは、それはすでにふれたように一四世紀のおわりか、たかだか一五世紀はじめまでのころのことで、あとでは商人よりも政治家、利子生活者を望む傾向が強まってくる。それが、洗練された文化に高まるルネサンスの第2段階である。一六世紀には衰えが目立ってくる。だから一六世紀前半のいわゆる盛期ルネサンスは、ルネサンスの完成であるとともに、栄華の残照だといえよう。総じてルネサンス文化が短命なのは、商業が優越しすぎた理由によるのであろう。】
* * *
ヨーロッパ発展の時代1で詳しく記述したように、英仏百年戦争開始から70年ほど経過した時期(1507~1510年頃)に確かに、ルネサンス美術やルネサンス建築などの分野において新しい段階に高まりすばらしい実がなり始めている。ルネサンスの第2段階(新段階)に入っていったのだ。私が説明するまでも無く、オリーブの成長状況とヨーロッパ発展の時代1の進展状況との間には大きな類似性、相似性がある。この事だけでも私にとっては非常な驚きであった。
次にアメリカ発展の時代、現代から未来、イギリス発展の時代においてもオリーブの成長状況との大きな類似性、相似性を発見できた。
特に現代から未来にかけては、よりハッキリとした類似性がある。第一次世界大戦開始(1914年)、死者が4000万人~5000万人と言われるスペイン風邪の流行、世界恐慌、第2次世界大戦(野生のオリーブの木の幹を切って)から70年(7年)ほど経過した1980~90年の頃にそれまでの歴史を大きく縛り形作って来た冷戦体制が崩壊する。米ソ冷戦終結宣言は (1989年)。この頃に第2段階(新段階、一つの転換期・節目)が到来した。
まとめると、
オリーブの木の幹を切って、7年(転換期、節目) 15年(大転換期、飛躍期)
英仏百年戦争開始から 70年(転換期、節目) 150年(大転換期、飛躍期)
三十年戦争開始から 70年(転換期、節目) 150年(大転換期、飛躍期)
アメリカ独立戦争開始から 70年(転換期、節目) 150年(大転換期、飛躍期)
第一次世界大戦開始から 70年(転換期、節目) 150年(大転換期、飛躍期)
となる。
この70年150年周期説を見出した時の劇的とも言える高揚感はもうない。しかし、現在もなお、ルネサンス以降の歴史の流れには完全なる一致ではないが、非常に大きな類似性、相似性があると考えている。