秋津蛉のモンスターリストⅡ

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古龍種の書 冥淵龍 ガイアデルム 上巻

2024-08-10 23:48:10 | 古龍種




「冥淵龍」
ガイアデルム
Gaismagorm
古龍種
古龍目 冥淵龍亜目 ガイアデルム科
全長約4807.54cm
全高約1457.49cm
・狩猟地
淵劫の奈落




・概要、特徴
長きに亘り謎に包まれていた「深淵の悪魔」の正体にして、メル・ゼナを中間の寄生先とし王域のモンスターを狂暴化させていたキュリアの真の宿主である、大型の古龍種。
観測拠点エルガドの調査隊が城塞高地近くで遭遇したのが初めての観測例で、ハンターズギルドは状況報告から「冥淵龍 ガイアデルム」と名付けた。




並外れた巨躯を持ち、龍鱗が示す仄かな蒼き輝きは数多の生命を吸い続けることで得た遼遠の境地の美しさ。楔の如く猛々しく立ち並んだ背殻は、燃え滾る煉獄の光景をこの世に曝け出す。






最大の特徴として、四肢の他にも背中に一対の古龍種特有の翼脚を持つが、その巨大で力強き翼腕からは翼膜が絶え、古の昔に天を自由に飛び回ったはずの面影はない。巨岩の如く発達したこの翼腕は地中を掘り進むための推進力を生みだす強靭な筋力を備えており、自身の頭ほどもある大きさの瓦礫を軽々と放り投げる膂力を誇る他、その握力から自らの巨躯を垂直な崖に張り付かせ、そのまま登攀することすら可能とする。幾重にも連なる荊の如き爪は、捕らえた獲物たちに終わりなき苦痛を与えるという。


後脚は退化しかけており、上半身を持ち上げた際の支持程度としてしか機能していない。そのため、歩行は基本的に翼脚と前肢の4本で行うという、他に類を見ない特異な歩行形態を取る。





ガイアデルムの尾には五つの巨大な鉤爪状の突起がある。 尾は腕や掌の如く操ることが可能で、獲物を握ったり、拳のように振り回し、絶望の内に敵対する者を圧し潰す。
頭部からは禍々しく捩れた一対の金色の角が生え、口を開けると下顎が左右に展開、さらに内側から一対の皮膜も広がり、両顎を合わせるとまるで五角の星型のような形となる。



・生態
太古より地中深くに棲み処を作り生息してきた、『地底を統べる者』。噛生虫キュリアと強固な共生関係にあり、それらが持ち帰る地上の生物の精気を体内に取り込むことで自身のエネルギーとする。なお、ガイアデルムはキュリアのウイルスに極めて高い耐性を持つ。
新たなエネルギーが必要になるとキュリアの餌場となる地を求めて地中を移動し、巣の場所を決めると棲み処をすり鉢状に拡大し、地表まで届く空気穴を作って大量のキュリアを放ち、地中でその還りを待つ。精気を存分に蓄えたキュリアが帰巣する時が来ると活動を再開し、振動を起こす事で周囲の地層を崩落させ、キュリアの一斉の帰還を迎える大穴を発生させる。その後は帰巣したキュリアと共に地下の棲み処で過ごす。



開かれた大穴はその様相から太陽が堕ちたようとも評され、「漆黒の太陽」サンと呼ばれる。
キュリアを放つことで後述の疫病という甚大な被害を齎してきたこと、またかつて王国本土に大穴を開けた事から、王国では「人々の心が闇に染まるときに大地から現れ、国を食らう悪魔」として語り継がれてきた。

大穴周辺では唸り声が聞こえることから本種の存在を確信していた者もいたが、調査してもその痕跡は発見されずじまいであった。
そのため、最近その存在が明らかになるまでは御伽噺の怪物として広く認識されており、その存在が浮上してもしばらく情報が秘匿されていたという経歴がある。


ガイアデルムは驚異の肺活量を有し、 五角の星型に大きく開いた口腔であらゆるものを飲み込む。 それは帰巣したキュリアも然りで、キュリアが集めた精気ごとそれらを吸入する。



体内で凝縮されたキュリアと精気は結晶として体表に排出され、硬質化する。それらは莫大なエネルギーを内包し、堅固な鎧であると同時に強力な爆発性の武器ともなる。

こうして精気を蓄えたキュリアを吸引することがガイアデルムの捕食行動だが、キュリアを介したそれが齎す被害の規模は甚大であり、周囲の生物はキュリアに精気を吸収される際に注入されるウイルスによってモンスターであれば凶暴化、人間であれば重篤な症状を発症し、その症状から疫病が発生したような状態に陥る。
また、ガイアデルムが地中から開いた大穴は周囲の地盤の脆弱化と崩壊を招き、現れた地に存在する建造物や街を”地下へ飲み込む”という被害を及ぼす。


エルガドでは、長らく大穴を開けているのはそこを巣窟としている爵銀龍であるとしてその足取りを追っていたが、後にメル・ゼナはガイアデルムと敵対関係にあったと判明した。
生物の精気を糧とするメル・ゼナは城塞高地を含めた王域一帯を縄張りとしている「王域を総べる龍」であるが、同じく生物の精気をエネルギーとするガイアデルムは縄張りを荒らしに来る侵入者に他ならず、メル・ゼナが大穴の付近で目撃されてきたのは地上に這い出て侵出しようとするガイアデルムを排除すべく、その出現を待っていたためであった。
ガイアデルムはメル・ゼナと縄張り争いを繰り広げるが、これによりガイアデルムは地底へと這い戻ることを余儀なくされ、一方のメル・ゼナは空へ舞い戻るため、結果として大穴の付近でメル・ゼナのみが確認されるという現象が発生していたのである。

メル・ゼナによって傷を負わされたガイアデルムは退却の間際にメル・ゼナへキュリアを差し向けたものの、メル・ゼナは強靭な耐性を発揮してキュリアのウイルスに耐え、逆に自らの力として共生関係を築くに至っていた。
今回現れたメル・ゼナがかつてと異なりキュリアを従えていたのは、こうした経緯によるものである。

そうしてメル・ゼナに寄生したキュリアは長きに亘り地上で活動することが可能となり、数多くのモンスターの精気が、城塞高地の祭壇とその周囲に溜まり続けた。結果、さらに多くのキュリアが城塞高地に集合し、メル・ゼナにかつて傷を負わされ、回復を待っていたガイアデルムへの効率的な精気の還元につながった。

かつてメル・ゼナによって地底へ追い返されたガイアデルムが、再び地表を目指せた要因は、皮肉にもメル・ゼナのおかげだったのである。
そしてガイアデルムが恐れていたメル・ゼナが討伐された事で、爵銀龍を含め数多のモンスターの精気を得て力を蓄えた深淵の悪魔は、遂にその姿を地上に現すのだった。

文字数制限の関係で、本記事は分割記事となります。続きは【古龍種の書 冥淵龍 ガイアデルム 下巻】をご覧下さい。


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