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歯科技工士・岩澤 毅

154回-衆-厚生労働委員会-09号 2002/04/17 金田(誠)

2002年04月17日 | 国会議事録
154回-衆-厚生労働委員会-09号 2002/04/17

○坂口国務大臣 民主党さんの、この歯科医療改革案というもの、私も、正直なところは、全体を読ませていただいているわけではございません。きょう御質問をいただきます要点につきまして私も拝見をしている程度でございまして、申しわけないわけでございますが。
 歯科全体について申しますと、今まで考えられておりましたよりも、歯とかそしゃくという問題が体全体に大きな影響を与えているものであるということがだんだんと明らかになってまいりました。そうした意味で、歯科は今まで、医科の方から切り離されて、何か特別扱いにされていた感もございますけれども、非常に、今まで以上に重要視を今後していかなければならないというふうに、今総論として思っている次第でございます。
 民主党さんがお挙げになっています「歯科重視の医療体制の確立」ということにつきましては、そういう総論の上からいえば賛同のできることだというふうに思いますし、それから二番目の「治療歯科から予防歯科への転換」というのがございますが、この中身、ちょっとまだ詳しく読んでおりませんけれども、今まで、企業等の健康診断におきましても歯科の検診というのはなかったわけでございますけれども、まだ義務づけているわけではございませんが、できるだけ歯科の検診も行ってもらうように、ひとつ企業にも、今お願いをしているところでございます。それから「患者が安心できる環境づくり」、これも、このスローガン、反対するところは何らないわけでございますが、その中身につきましてのいろいろの問題点はあるのかもしれません。
 とにかく、総論といたしましては、そんなに考えておりますことと違った方向性のものではない、むしろ同じ方向性のものではないかというふうに認識をしている次第でございます。
○金田(誠)委員 大変前向きに受けとめていただきまして、感謝をいたします。
 今回触れ切れなかった点も、例えば歯科医師数の適正化、需給ギャップなどもできておりまして、その他何項目かございます。こうした点も含めまして、今後、ぜひ機会を改めてまた意見交換をさせていただければと思うわけでございまして、よろしくお願いをしたいと思います。
 そこで、きょうは、歯科医療の中で一項目に絞りまして、歯科技工士をめぐる諸問題ということで質問をさせていただきます。
 まず、私どもの考え方としては、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士の相互の連携によるチーム医療の確立、このことが非常に重要であるというふうに考えているわけでございますが、そうした中で、先般、何名かの歯科技工士さんの方々が私どもの方に参られまして、嘆願書、四項目に及んでおりますが、既にきのうお渡しをしてございますけれども、その嘆願書を置いていかれました。それを裏づける「歯科技工士の現状」、こういう一枚紙もあわせていただいたわけでございます。
 その問題点、六項目指摘をいただいたわけでございますが、かいつまんで申し上げますと、第一に、長時間労働である。一日十二時間から十六時間は当たり前、朝までかかることも珍しくない、こういう状況だそうでございます。二点目として、女性歯科技工士が定着しない。原因は、一点目で申し上げた劣悪な労働環境と長時間労働。同じく、女性ばかりでなく、新人技工士、これがなかなかふえない、やめていく人が多い。これまた同じ理由でございます。四点目は、労働時間の割に賃金が低い。五点目として、一人ラボが多い、こういうことでございます。六点目は、これはちょっと大変なことだなと思って伺ったんですが、にせ技工士が多い。モラルの問題ではあるけれども、経営上の問題が大半を占めているんではないか、このような御指摘をいただきました。
 こういう指摘を踏まえながら、以下、順次質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 いただきました嘆願書には、第一番目に、いわゆる七、三問題、七対三問題というんでしょうか、これがまず載せられておりました。この七、三問題とは、昭和六十三年、厚生省告示第百六十五号により、歯冠修復及び欠損補綴の費用は、製作技工に要する費用がおおむね百分の七十、製作管理に要する費用がおおむね百分の三十である、七、三であると。このようにされたにもかかわらず実態としては空文化しているというのが七、三問題でございます。
 そこで、質問をいたしますけれども、厚生労働省は、七、三は技工と管理の標準的な割合、こうしているようでございますけれども、標準的な割合とはどのような根拠で算出されたものなのか、お示しいただきたいと思います。
○大塚政府参考人 ただいま御指摘のありましたような昭和六十三年の告示がございます。この七、三という割合を告示で定めましたのは、当時でございますけれども、当時の厚生省が実施をいたしました歯科技工料金調査、この結果を踏まえまして、いわば当時の実態を勘案した割合ということで、標準的な割合としてお示しをしているものでございます。
○金田(誠)委員 そこで、今日の実態としてはこの七、三が大きく崩れているという話を伺ったわけでございますけれども、実態はどうなのか。七、三から六、四。六、四から五、五。場合によっては逆の七、三まであるなんという話も仄聞しているわけでございますけれども、この実態の数字をお示しいただきたいと思います。
○大塚政府参考人 製作技工に関するさまざまな種類がございますから、種類ごとにもちろん異なるわけでございますし、個別のケースごとに異なるわけでございますが、全体といたしまして、直近の数字で把握しておりますのは平成十一年度の数字でございますが、歯科技工料金調査をいたしまして、この結果によりますと、全体の平均で、いわゆる七に当たる部分、製作技工に要する費用の部分が六六・六%という数字を私ども把握いたしております。
○金田(誠)委員 私どもが聞かされている実態とかなりこれは違うのかなという印象を受けます。
 ついては、その平成十一年の調査でございますけれども、その調査の集計表といいますか、恐らく地域格差だとか、あるいは補綴にしても、部分によってこの六六・六のところもあれば、もっと低いところもあれば、いろいろあるんだと思いますが、その辺も調査されているのかどうかも含めまして、調査結果表というんでしょうか、調査表というんでしょうか、それについて、資料として後ほど御提示いただけますでしょうか。
○大塚政府参考人 これは、診療報酬の審議をいたします中医協での必要に応じて御提示する資料という性格のものであることが一点。それからもう一点は、なかなか難しい点が一点ございますので御了解を賜りたいんでございますが、実際上、それぞれの取引は、自由といいましょうか、当事者の合意で取引されるわけでございますが、そうした点に直接的な影響を与えるというのも避けなければならないという要素がございます。
 ただ、調査をいたしているわけでございますから、少し精査をいたしまして、整理をいたしまして、お示しできるものについてはお示しをいたしたいと考えております。
○金田(誠)委員 私の聞く範囲では、今のような数字であれば、わざわざ私のところまでは恐らく来ないんだろうというふうに思います。聞いている実態は、これとはかなり違うものでございます。そのスタートラインといいますか、共通認識の上に立って議論をしなければ、かみ合わない議論になってくれば意味のないことでございますから、ぜひその議論の土台をそろえるという意味からも御提出を強くお願い申し上げておきたいというふうに思います。
 次の質問に入らせていただきますが、なぜこの七、三が空文化しているのか、その原因でございます。
 技工料の取り決めが、七、三という取り決めが守られないほど技工料の診療報酬が低いという指摘もございます。あるいは、この背景として、診療報酬の医歯格差というものがだんだん拡大をしていって、歯科としては厳しい状況に置かれている、あるいは、歯科医師の需給バランスが崩れて個々の診療所の経営が非常に困難になってきている、さまざまな背景があると伺ってはおりますけれども、厚生労働省として、この七、三に対して、実態は私は大きくかけ離れていると思っていますし、さっきの数字ですとそんなにかけ離れていないことになってかみ合わないことになるんですが、私の理解をしている、この大きく乖離している実態、この辺の原因、七、三が守られてこない原因を、どういう理解をされておりますでしょうか。
○大塚政府参考人 さきにお話の中にございましたように、私どもとしては、もちろんどんぴしゃりという数字ではございませんけれども、基本的には、全体といたしましては、七、三にそう大きな乖離がない状態になっているというふうに見ておるわけでございます。
 先ほども申しましたように、当事者間の取引という性格がございますので、いろいろなケースがある、その七、三問題とは別に、全体として、例えば歯科医師の需給問題やら歯科医療に関します全体的な課題がさまざまあるということはよく私どもも認識をいたしておりますが、その問題が直接にこの七、三の問題にダイレクトに結びつく問題だとは、私どもは現時点においては認識しておりません。
 ただ、いずれにいたしましても、歯科医療の大半を占めるのが歯冠修復あるいは欠損補綴というものでございますから、その業務が関係者の間で、先生がおっしゃいました、チームワークという表現をとられましたけれども、関係者の連携で円滑に進むというのが患者にとりまして最大のメリットでございますから、そうした観点で、こうした両当事者間の関係が円滑に進みますように私どもとしても願ってもおりますし、また必要な努力を続けてまいりたいと考えております。
○金田(誠)委員 やはり、実態がどうなのかというところの認識をそろえて議論をしないと今のような議論になりますので、厚生労働省として押さえているこの実態調査を何としてもお示しいただかないと議論がつながっていかないなと思うものですから、また重ねて御要請を申し上げておきたいと思います。
 次の質問でございますが、昭和六十三年十月二十日付で厚生省保険局長名の通知が日歯と日技の会長あてに出されております。その中では、この七、三の割合は良質な歯科医療の確保に資することを図ったものでありますとされているわけでございますが、この意味合いをちょっと解説していただきたい。
 といいますのは、良質な歯科医療の確保に資することを図ったということでございますから、一定の診療報酬が決まる、それを、技工の部分が七、管理の部分が三、こういう形で区分けをするということが適切な歯科医療をならしめるということでございますから、当然これは守るべきものであるんだという意味合いがこれに込められていると思うんですが、その辺の解説をお願いしたいと思います。
○大塚政府参考人 七、三告示に合わせまして保険局長名の通知が出ておるわけでございまして、お話ございましたように、良質な歯科医療を確保するためという観点での通知でございますけれども、やはり、歯冠修復、欠損補綴といった業務が関係者、具体的には歯科医それから歯科技工士、歯科衛生士さんなどもおられますけれども、特に歯科医、歯科技工士の間で円滑に業務が進むということが、トータルとして、全体として、歯科医療の円滑な実施につながる、患者の福利に通ずるということで七、三を標準的な割合としてお示しをいたしましたので、その趣旨をお踏まえいただいて、チームワークのとれた歯科医療を実施していただきたい、こういう趣旨、思いを込めた通知というふうに考えております。
○金田(誠)委員 さらにまた、同じ通知の中には、この厚生大臣告示の趣旨を踏まえ、関係団体との間で話し合いを行っていただくとともに、個々の当事者間で円滑な実施が図られるよう会員を御指導いただきたくお願いいたしますと、これが日歯と日技の両方に出ている文章なわけでございます。
 こういうことで、まず関係団体との間で話し合いを行う、さらに会員を指導していただくと。この七、三ということが問題にならないようにするという意味の通知だと思うわけでございますけれども、この辺の話し合いなり指導なりというものが適正に行われているという実態なのでしょうか。その辺のところ、どのように押さえておりますでしょうか。
○大塚政府参考人 通知の中で触れられた内容でございますが、おっしゃったとおりでございまして、基本的には、繰り返しで恐縮でございますが、歯科医療機関と歯科技工所の間のいわば自由な取引、自由な契約で決まる、価格が設定されるということになりますけれども、標準的な割合をお示しして、その趣旨を会を通じて個々の会員にも十分周知していただくようにというお願いの文章でございます。
 関係者の間でいろいろ引き続き議論があることはもちろんでございます。これは、それぞれの事情もいろいろ変化もし、厳しい環境でもございますから、御意見はございますけれども、全体といたしましては、この六十三年通知、告示の趣旨を踏まえて適切に対応していただいているというのが基本的な認識でございます。
○金田(誠)委員 根っこのところで、現状の数字が、私どものとらえている実態と厚生労働省の調査と一致をしておらないというところでの質問の継続なものですから、どうもかみ合ってこないわけでございますけれども。
 これは、例えば七、三が、仮に五、五というのが主流になってしまった、こうしたとします。先般、保険局からいただいた資料の中に、例として総義歯二千五十点という数字が載っておりました。二千五十点であれば、七、三に分ければ千四百三十五点と六百十五点ということになるわけでございますが、仮に五、五ということにしますと、千二十五点対千二十五点、こういうふうになります。
 そこで、技工士さん方が心配しておられることは、千二十五点でも技工が可能である、こういうことになるとすれば、千二十五点に七、三の三の六百十五点、これをプラスしますと、千六百四十点ということになり、現行二千五十点との差は四百十点、これが引き下げ可能ということになりはしないか。
 今でさえ低い診療報酬がこのように引き下げられるなんということは、現実問題としては考えられないことでありますけれども、こういう七、三というものが、六、四あるいは五、五という状態が続けば、保険者あるいは被保険者はもとよりでございますが、会計検査院あるいは総務省、さらに財務省というところからも、これは放置できないという声が起こりはしないかということも心配になってくるわけでございますけれども、この辺のところ、厚生労働省、どのようにお考えでしょうか。
○大塚政府参考人 ただいま総義歯の例を引いて御質問でございますけれども、私ども、歯科医療において、さまざまな重点項目ございますけれども、歯あるいは補綴物の長期維持に資する技術などについては、やはり今後の歯科医療を考える上でも重点というふうに考えておりまして、今回、御案内のように、全体といたしましては、厳しい環境のもとで、歯科診療報酬につきましても、いわゆる技術料部分につきまして医療費ベースで一・三%、全体としては引き下げを行いました。これは医科、調剤も同様でございますけれども。この中で、有床義歯あるいはその他の歯の補綴物に関連する技術につきましては、厳しい環境の中で引き上げを行いました。例に出されました総義歯につきましては、これを据え置く、厳しい環境の中での据え置きという措置も講じました。
 こうしたことで、歯科医療の中でも特に重点を置くべき分野、今後歯科医療の質の向上という観点から必要な分野、御指摘の事項なんかも含まれると考えておりますが、こうした技術あるいは歯科医療につきましては必要な評価をきちんとしてまいりたいというのが基本的に我々考えているところでございます。
○金田(誠)委員 今の御答弁も、七、三ということが守られていての話だと思うわけでございまして、それが崩れてくる。まあ、多少の崩れというのは、上に崩れる、下に崩れる、いろいろあるのかもしれませんが、いずれにしても、七、三というものを基本にしながら、多少の幅という程度のものだろうと思うわけでございます。
 それが、私どもが承知しているような形で七、三が崩れてくると、今のようなお話も保険者あるいは財政当局等の関連では面倒な問題になってくるんではないかなということを御指摘申し上げたいと思うわけでございます。
 最後に大臣、恐縮でございますが、お伺いをしたいと思います。
 七、三という割合が標準的な形ということで告示をされ、それについての円滑な実施ということでこれまた通知がされるという中で、厚生労働省の調査と私どもの把握と多少違うようではございますけれども、いずれにしても、かなり大きな問題として今提起をされている実態でございます。
 この七、三というものを本来の形に戻していくという立場から、努力をしていただく、具体的な方策を講じていただくということで、ぜひひとつ御尽力を賜りたいと思うわけでございますが、その辺のお考えを伺わせていただきたいと思います。
○坂口国務大臣 七、三問題といいますのは、私も随分前から実はお聞きをいたしておりまして、何とかならないのかというお話が随分前からありました。ここにきょう御出席の与野党の皆さん方の中にも、この問題何とかならないのかというふうにおっしゃる方はかなりおみえになると私思っております。
 これは、議論をいたしておりましても決着のなかなかつかない話なんですね。それで私は、やはりここは歯科医師会の皆さん方と一遍お話をする以外にないと実は思っております。そして、忌憚のないお話を申し上げて、この問題は前進させる以外にないというふうに考えております。
 前々から私も思っておりましたことの一つでございますので、時間を見まして一度率直にお話を申し上げたいと思っております。
○金田(誠)委員 ありがとうございます。
 技工士会の方では、この問題について、独禁法の適用除外とかいろいろ具体的な提案もされているようでございますが、その前段として、大臣おっしゃる話し合いというのが出発点になると思うわけでございまして、ぜひひとつそれは実現をしていただきたい、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 局長、それにつけても数字が、相当理解が違うようでは話し合いの土台がきちんとしないわけでございますから、早急にこれは御検討いただいて、しかるべくお示しをいただきたい。重ねて御要請を申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。

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