檸檬水

詩・短歌・その他文章

移転のお知らせ

2008-01-19 19:50:00 | information(はじめに)
突然ですが、檸檬水はこのたび移転しました。

こちら

ご報告がとんでもなく遅くなってしまいすみません…
まあ此処を見てくださる方はたいてい「つぶやき」の方を見てる方だと思うのですが。
移転先では、日記と詩の投稿場所を統一しています。
ま、それだけの事なのですが(苦笑)

では、もしよかったら移転先のほうもよろしくお願いします。
短い間でしたが、ありがとうございました。

追憶

2007-11-23 08:39:50 | 
私が20年を生きる間に

突然あの子が死んでった

目の前で笑う13歳を見て

あの子が実はまだ幼かったことを知った


20年生きて幸せをつかんだ

あまりに脆くてはかなくて

明日にでも朽ちて滅びるかもしれない


けど


最後まで大切な人を守ります

それはいずれ会うあの子への誓い


秋色の空の下

あおむけの二人

空は真っ蒼で

あなたの眼は澄んでいて

だから隠れて泣いていたんだ

あなたのために 空を向いてずっと生きていこうと


今この瞬間から

惜しみない愛を

言葉を

力を

想いを

届けに


遠い空へ飛び立つ小さな身体

ちいさな将軍の話5 『BELL UP!』Another Story 

2007-11-11 22:02:25 | 小説
 あれからもう3年がたつ。
 丹季はついに、源平と一度も会うことなく小学校を卒業した。一緒に遊んでいた3人の男子とも、3年のうちにやがて疎遠になった。
 転校してからは当然、源平の噂が立ったものだ。その度に、丹季の耳は知らず知らずのうちに傾いていた。
 ――――あいつ、結局サッカーやめたんだろ?
 ――――なんで?やっぱ受験だから?
 ――――そらそうだろー。受験組は遊ぶ暇なんてねぇんだろうよ。
 ――――え、違うって。向こうの学校でも一応サッカークラブに入ったけど、足の怪我でチームと仲悪くなったって話だろ?その代わり、なんだったっけ…なんか、金管バンドに入ったとか。
 ――――きんかんばんどぉ?
 ――――ラッパとか太鼓とかで演奏するやつ。ほら、あいつピアノも出来るじゃん。
 ――――ひえー、でも似合わねぇなあ。大丈夫か?受験だってあるくせによ………。




「………………」
  



 どうしてあの場所を選んだのか、中2になった丹季はいまでもよく分からない。 気がつけば、その時丹季は音楽室にかかったプレートを見つめていた。



 「枇杷中学校金管アンサンブル部」



 源平が私立受験に失敗してこの枇杷中に入ってきたことは、制服採寸の時に初めて知った。廊下の向こうに佇む彼を見つけたとき、丹季は自分の全身がぐらっと揺らめいたような気がした。
 最後に別れた時よりもぐんと伸びた身長のせいで、最初は誰か分からなかった。眼鏡をかけていた源平は、尚更別人のように見えた。
 ――――あの時とは、もう違うんだな。
 頭の隅で、別の声がそう告げている。昔の将軍ぶりはすっかり身を潜め、どこにでも居そうな優等生の姿がただそこにあった。それでも、丹季は確信していた。源平はサッカー部には入らない。きっと、この部しかない。
 それを裏付けるかのように入学式の翌日の放課後、芸術棟からトランペットの音が聞こえてきた。見上げると、窓から少しだけトランペットのベルをのぞかせた源平がいた。丹季は飽きもせず、校庭でじっと耳を傾ける。聞き終わった頃には、自分の身体の中で流れる血が沸騰する感触を覚えた。丹季の心は、この時決まったのだった。
 その感情が何なのかは説明しようがなかった。部活なんて、はっきり言ってどこでもよかった。どこでもいいというより、運動部だろうが文化部だろうがどこでもやって行ける気がしていた。その中で丹季の足は、音楽室を選んだ。ピアノにも歌にも縁のなかった彼女が「音楽をやる」なんて、誰が予想していただろう。
 丹季は、ただただ惹かれていた。
 息をゆっくり吸い込んで、吐く。割れんばかりに教室の中から聞こえる音たちに後押しされて、強く足を踏み込む。
 ――――あいつと再会できますように。
 丹季は、音楽室の引き戸を開いた。

                       <終>

23:05

2007-11-10 22:54:18 | 
ペンダント握れば

脈打つあたしのいのち

まだ23時

力尽きた約束の先へ向かうため

今はただ祈っていよう

強く

もっと強く

ちいさな将軍の話4 『BELL UP!』Another Story 

2007-11-04 11:16:25 | 小説
 源平の転校を人づてに聞いたのは、小3の3学期頃だった。
 隣の学校だった。どういうわけか、隣の学区にマイホームを建てたらしい。
 あまりに突然な話である。隣の学区と言っても新しい源平の家は校区の端の端、高層マンションが立ち並ぶニュータウンだった。それは、転校してからめったに会えなくなるということを意味していた。そして、そのことは丹季にも源平にも、他の男子たちにも分かっていた。
 「私立の学校を受けるんだ」
 春休みの空は、ほんのりと淡い。寒さで凍った色にやわらかな陽射しが溶け込んで、優しい色へと変わる3月の空。
 誰もいない昼下がりの公園で、丹季と源平、2人でぶらんこに乗っていた。半年前、2人が初めて出会った公園だ。しばらく無言が続いたあと、源平が切り出した。
 「来年から…小4から勉強始めなきゃって母さんが言ってた。塾も行かなきゃならない。龍一と慎治と豪太にはすまないけど、一緒の中学には行けないんだ」
 「私立なんか行ってどうすんだよ」出来るだけ平静を保ったが、丹季の声は揺れていた。「勉強ばっかじゃん。サッカーも何も出来なくなるじゃんかよ」
 「……そう、かもな」
 「かもなって……」
 沈黙が、春のぬるい風に溶けて2人を包んだ。前代未聞の緊急事態なのにうっかり眠ってしまいそうな心地の良さと、やりきれない気持ちが丹季の達者な口を閉ざしていた。
 引越しを明日に控えているというのに、まったく実感が湧いてこない。ただひとつ確かなのは、なかなか会えない場所へと源平が離れていくことで、さらに受験で心の距離まで遠くなるということだった。
 「……………んだ」
 「え?」
 聞こえないよ、と返すつもりで丹季が顔を上げた、その時。
 「本当は、行きたくないんだ」
知能犯、そして将軍として高慢ちきに振舞う源平とは思えない姿がそこにあった。丹季はとっさに言葉を返せなかった。
 「サッカーだってやりたい。私立なんかもともと受けたくないんだ。でも、母さんが望んでるから、そうするしかない。ほんとはもっと遊びたかった」
鼻水まじりの弱気な声。いつも偉そうで、頭がよくて、見掛けよりも乱暴な口をきくあの源平が。
 その時、丹季は祖父が与えた源平という名前の意味をぼんやりと考えていた。プレッシャーという言葉を知らない彼女でも、今源平の両肩にのしかかっているものがちゃんと見えていたのだ。
 「……………」
 再び訪れる沈黙。雲が多いせいで陽射しが強くなったり辺り一面暗くなったりと慌しく移り変わる。
 「…………源平、」
 どれくらいの時間が経っただろうか。丹季が、もつれていた口をやっと開いた。自分でも驚くほど、自然と言葉が滑り出てくる。
 「誰にも言わないから、今だけ、泣くの許してやる」
 丹季がいつものように怒って地団駄を踏むと思っていたのだろう。一瞬だけ源平の表情が宙ぶらりんになった。そして、その後はひたすら押し殺した息が続いた。つまらない意地なんか張らなくてもいいのに、と丹季は上ばかり眺めていた。けれど、その後は特別なことは何も言えないまま、桜が遠慮がちに咲き始めたある日、源平は新しい場所へと旅立った。

きっと泣いてしまう

2007-10-31 22:47:49 | 
この日さえ過ぎればすべてが終わってしまう

今までどうしてあんなに怒ってきたの

どうしてあんなに泣いてきたの

もっと笑っていられたら良かったのに

ごめんね、ありがとう


「未来」

「約束」

「これから」

「思い出」


希望に溢れた言葉たちがあたしの向こう側を見えなくするけど


これからはあたしの「今」を探す旅

だから泣かないで

泣かないで

いつかは終わってしまうのだから



もうすぐやって来る「私の生まれた日」

過ぎていく特別な時の中で

大切な人を失った己の愚かさを知りなさい

短歌076

2007-10-30 15:20:11 | 短歌
ごめんねと繰り返すたび唇が引き攣り心のどこかが裂ける

ちいさな将軍の話 3 『BELL UP!』Another Story 

2007-10-17 20:25:36 | 小説
 それからというもの、丹季は男子4人組の仲間に入って遊ぶようになった。近くの山の探検ごっこ(本人は探検そのものだと思っている)、空き地の潜入、隠れ家づくり、そしてサッカー。擦り傷をこしらえて帰る日が毎日のように続いた。
 「そういうのを、紅一点っていうのよ」
 今日も擦り傷を消毒しながら、丹季の母親がそう言った。大人しく神経質な姉の瑞季とまったく似ても似つかない性格の丹季は、幼少時からその溢れんばかりの力を持て余していたという。おしとやかな少女の欠片も無い丹季を見て、一緒に住んでいる祖母が、
「こういう子なんだよ。元からね」
と言い切ったことで、恵子はあっけない程に吹っ切れた。以来、遊びに行く際に注意を促す以外はほとんど放任政策をとっている。
 「コウイッテン?」
 「男の子のグループの中にね、一人だけ女の子が混じることをそう呼ぶんだよ。男子ばっかりと遊んでると、今度は女の子たちに嫌われるんじゃないの?」
「そんなことないよ」すかさず丹季が反論した。「ミチとかのグループに、ちゃんと入れてもらってるもん」
 頑固で粗暴、一見敵を作りやすそうだが憎めない性格。それもまた、丹季の一面だった。女友達と壁を作らずにするするとその中に入っていける、人付き合いの良さのようなものが丹季にはある。積極的に振舞うわけでもないのに、丹季の周りにはたいてい誰かが居る。そして一人になった時でも、気取らず焦らず、ぼうっとしている子どもなのだ。
 源平たちと過ごす毎日が楽しかった。
 これからも当然のように続いていくはずだった。
 だがそんな奔放な日々も、半年後に大きな変わり目を迎えることになる。

くだらない呟き

2007-09-30 11:15:39 | 
あたりまえで

ありきたりで

ありふれたこと



あなたに届け

かけら(遠く離れた君に捧ぐ言葉)

2007-09-25 18:30:45 | 
あの時の夜空 月とか星なんて出てたかな

覚えてないや ずっとうつむいてたから


あたしは泣かなかったけど

氷を滑るような感情を守ってばかりで

最後まで正面から君の顔を見れずにいた

それはあたしの弱さでもあった


あの夜から月日がたち

真っ直ぐな道はいつからかカーブになって

気づかないほど遠くへ来てしまったけど

あたしは1ピースも無くさずここにいる

だから君が落としてしまった数ピース

かならず拾ってあたしの元に来て


いつか君の中であたしが欠けることなく

もう一度声をひそめて夜空を見渡せるなら

きっと君の目を真っ直ぐに受け止めて

本当のことが言い出せるかもしれない

そしてそれは今のところ、あたしの目標でもある