◇スミレ 雑種 研究所

スミレ類の雑種について、研究員A&Bが少しずつですが、研究報告します。よろしくお願いします。

◇エイザン×ヒナ オクタマスミレ③

2017-08-14 23:53:10 | 日記

◇エイザン × ヒナ  オクタマスミレ③

前回オクタマスミレの学名を話題にしましたが、実は最初はあの学名はエドスミレに付けられていたそうです。エドスミレ(エイザン×スミレ)はもっとも古くから記録(1856年)されていた雑種で、Viola  × savatieri Makino とされていましたが、改めて確認した(1937年)ところ、エイザン×ヒナであると確認されたようです(1978、橋本)。引用文献:1978、日本のスミレ 橋本保

・同種の場所ごとの個体差について

まずは、ヒナスミレ①~③の写真の葉を見比べてください。

ヒナスミレ

 

 

①②地点は常時薄暗い神社の境内で、木漏れ日が当たる場所、③地点は春には明るい場所で、①②地点より少し標高が高いです。植物はその場の環境(光・湿度・気温・土など)のシグナルを受容し、発芽・開花・落葉のタイミングを決定します(フェノロジー)。①②地点の葉は柔らかく、③地点は色が濃くて硬い(クチクラの発達や柵状組織の細胞中のクロロフィルaとbの割合やその密度が高い)です。

ですから、①②地点で観察されるオクタマスミレは同様に③地点より大きく柔らかい葉が見られます。下の④⑤はオクタマスミレの葉です。

オクタマスミレ

 ④

このオクタマスミレは①②地点より、少し上った③地点で観察されました。⑥オクタマスミレの葉の裏はヒナスミレ同様に茶色です。ここ③地点のオクタマスミレは硬い葉が観察されます。

前回のオクタマスミレ②で扱った写真②と比べて見てもらえるよう、前回使用した写真を下に入れました。柔らかいオクタマスミレの葉です。同じ(種や雑種)でも暗い場所では葉を大きくして光合成量アップを狙うようです。環境により、葉の形態も異なることがわかると思います。

前回エイザン×ヒナ②で扱った写真②

 

エイザンスミレは①②地点では確認されていません。③地点のエイザンスミレを見てください。

エイザンスミレ

①~⑦ 撮影日:2007.4.15 撮影地:関東地方 撮影者:研究員A

同種でも生育場所ごとに葉の形態が微妙に異なり、また季節による葉の形態の変化もあります。スミレ類の場合は夏期大きくなります。

 

エイザンスミレとヒゴスミレのどちらも切れ込みのある葉ですが、切れ込みのある雑種を見つけた時はいずれかだと考えます。

花の説明を忘れているわけではないです。葉の説明しかしないわけではないですが・・・、、雑種の中でも、見分けるのが比較的簡単そうと思いきや、オクタマスミレは奥が深いです。研究員Aより

 

エイザンスミレやヒゴスミレの交雑種の場合基本的に深い切れ込みが入ります。しかし,エイザンスミレの仲間のヒトツバエゾスミレとの交雑種は切れ込みが入らないみたいです。

ただし,学名はエイザンスミレとヒナスミレの交雑でもヒトツバエゾスミレとヒナスミレの交雑でも同じになります。なんかややこしいですね。研究員Bより


オクタマスミレ②

2017-08-13 16:50:06 | 日記

◇ エイザン × ヒナ   オクタマスミレ②

エイザンスミレの学名は V.eizanensis 、ヒナスミレは V.tokubuchiana var.takedana です。この両種の雑種にも学名があります。オクタマスミレの学名は V. × savatieriとなります。「 x 」は雑種を意味する記号で, savatieri は雑種につけた種小名です。この場合、どういう種と種の雑種かわからないので、 V.eizanensis × V.tokubuchiana var.takedana とした方がわかりやすいですね。さて、生殖的隔離で交雑ができないのですが、近いレベルでは交配が可能で、当然交雑種には双方の遺伝的形質が現れる場合が多いです。*雑種では稔性が無いのが一般的で、つまり不念の雑種の存在は、生殖的隔離が確立しているわけです。*例外も有り。

今回は葉の形態に注目しましょう。 

 撮影日:2012.4.29 撮影地:関東地方 撮影者:研究員A  

   ④ ③の写真のトリミング処理 

③の写真を葉に注目してトリミングしたのが④の写真です。ヒナスミレの葉は長卵形~長披針形で、エイザンは3裂の深い切れ込みがあり、それがさらに裂けて一見5小葉に見えるものもある(2004.いがり)。つまり、ヒナの葉の形に葉の基部に切れ込みが入っているので、これはヒナではなく、エイザンか切れ込みのあるヒゴスミレかな?と考えます。となると、ヒゴ×ヒナの交配種と比較したくなりますね。それは次回になります。参考文献:2004.いがりまさし 山渓ハンディ図鑑6増補改訂日本のスミレ

よく、鋸歯と葉の切れ込みを勘違いして鋸歯が深いものをオクタマスミレと判断しがちですが,鋸歯とここの深い切れ込みは全く違います。鋸歯とは文字通り鋸の歯の様に一直線上にギザギザに切れ込みが入る物を指します。エイザンスミレ等との交雑でできる切れ込みはそれとは異なり二段階で角度を変えて切れ込みが入ります。(コンコルド旅客機の先端みたいな感じ?) 

文責: ●<研究員A> <研究員B>

 


◇エイザン×ヒナ  オクタマスミレ①

2017-08-13 07:38:10 | 日記

◇V.eizanensis × V.tokubuchiana  オクタマスミレ①

今まで観察したスミレ類の整理し、研究します。ここでは撮影地は詳しく掲載しません。このブログでは雑種の経年変化を写真に掲載しますので、見てください。スミレ類を観察していると、県名を掲示しただけで場所の特定ができます。(特定されるとよからぬことが起こります。)まずは エイザンスミレ×ヒナスミレとの交配オクタマスミレと呼ばれている雑種です。

 撮影日:2012.4.29 撮影地:関東地方 撮影者:研究員A

 

 撮影日:2012.4.29 撮影地:関東地方 撮影者:研究員A

2枚の写真のうち、②の数個体は翌年には消滅しました。消滅の理由は不明です。①の写真は数年間のうち、株が増えたり減ったりしながら毎年、花を咲かせている。2017年春も咲いていました。特徴の説明は次回へ<研究員Aより>