◇スミレ 雑種 研究所

スミレ類の雑種について、研究員A&Bが少しずつですが、研究報告します。よろしくお願いします。

スワスミレ1

2019-04-09 16:49:41 | 植物

スミレ雑種研究所です。お久しぶりです。

比較的、遭遇しやすい雑種からまとめる予定でオクタマの後はスワと考えていました。しかしながら、変なエゾノタチ(横走)が気になったこともあり、話が外国産スミレの方向へ行ってしまいました。横走するエゾノタチを観察し、 ‘見たよ!’ のコメント待っています。

熟慮中のイリオモテ等は後回しにして、スワの記事を順次投稿します。よろしくお願いいたします。

 先日敬愛するいがりまさし先生へスワの写真を投稿している記事を見つけました。そろそろスワをやらねばと思っていた矢先でしたので、タイムリーなこのスワからいきます。

撮影:2014,04,27 群馬県、研究員A
 
いがりまさし先生へ投稿された方と同じ観察個体あるいは同じ場所と思われます。こちらも花びらに虫食いがありました。もう少し薄い花びらの個体もありました。花弁が細いのもありました。この場所は数年間に何回か訪れています。研究員Bがここのは以前からあやしいと言っていました。この写真個体を観察する前にもあやしい個体が有り、2個体(2株)撮影しました。まずはこの濃色の写真から見てください。
 
次回は同じ場所の写真を掲示します。
詳細はスワ2へ・・・研究員Aより
 
 
 

エゾノタチツボスミレ 4 推察

2017-08-25 00:15:35 | 植物

連日の猛暑、遮光していないのに太陽光線を目いっぱい浴びているイリオモテスミレが元気です。ななぜでしょうか?

エゾノタチツボスミレが一段落ついたら、このイリオモテスミレについて報告したい・・・

久しぶりに、このブログ追加します。数年前にまとめてあった文章を見直し報告します。

<知る人ぞ知る 横走するエゾノタチツボスミレ>

 タチツボスミレとの雑種(スワタチツボスミレ)も開花期には立ち上がっていることが文献で確認できた。雑種だから地表を這うように生育しているわけではなく、エゾノタチツボスミレかスワタチツボスミレのいずれにしても疑問は解決されない。エゾノタチツボスミレは奥が深い。

地表を横走する利点やあるいはそうしなければならない要素を考えてみる。

湿度保持に有効な手段の結果。

・元来エゾノタチツボスミレは地表を横走する性質がある。

アイヌタチツボスミレ、アポイタチツボスミレ、シマジリスミレのいずれも地上茎は横方向に伸ばし開花結実している。

・外国種3種(ビオラ・ルペストリス、ビオラ・リビニアナ、ビオラ・シエヘアナ)はひとつの株に数株植えた時は隣り合う茎同志がもたれ合い、上方で開花結実して生育した。鉢に1株ずつ植え替えたら、地上茎を四方八方に伸ばす(横走する)ように生育した。

 見方を変えてみると世界のエゾノタチツボスミレの仲間の中では地上茎が立ち上がり開花するエゾノタチツボスミレはイレギュラー的な存在なのかもしれない。比較的湿度のある地に生育するエゾノタチツボスミレは日陰という受光獲得においてのマイナス面を補う為、光が得られるように立ち上がる形態変化を獲得した個体が存在したことでより適応度が上がり、地上茎が立ち上がる個体が代々存続してきたのかもしれない。たまたま採取地は、立ち上がることなく地表を横走して同種や他種の植物との競合の結果、適応度を上げることができた生育地であるのかもしれない。 

 エゾノタチツボスミレは立ち上がらず地表を横走し生長するという稀ではあるが新しい一面もある。各地での観察記録の報告が少ないだけなのかもしれない。知る人ぞ知る地表を横走するエゾノタチツボスミレなのかもしれない。

 他の生息地でのエゾノタチツボスミレも同様な個体が生息するのかわからない。

 ある種類についての疑問を解決するべく、その仲間のスミレ類に目を向けて考えることが重要。エゾノタチツボスミレの花の色が2色(白色と淡青紫色)見られることがアイヌタチツボスミレ、V.reichenbachianaは稀に白色が観察され、V.sieheanaは白色から淡青紫色への変化があり、共通の祖先のについての興味が深まった。世界のエゾノタチツボスミレの仲間について今後も調べたい。

近年、足腰が弱くなり縦走して観察することが無理になってきた。残念!

 


エゾノタチツボスミレ 3(外国種)

2017-08-23 22:12:47 | 植物

生物関係の仕事ではあるものの時間とお金が限られた中、趣味の研究範囲で行う事、限界があるなかでの報告です。 

エゾノタチツボスミレに近縁と思われる外国種について(栽培下での観察) 

古くから栽培されている園芸種を含む外国種④ビオラ・ルペストリス(旧名アレナリア・ロゼア)V. rupestris cv. ‘Rosea’  、⑤ビオラ・リビニアナV. riviniana、、 ⑥ビオラ・シエヘアナV. sieheana は国内種と同様の形態からエゾノタチツボスミレ類と考える。ビオラ・シエヘアナV. sieheana(Azerubaijan産)はビオラ・リビニアナV. riviniana の近縁種(田淵 2005)でもある。

ルペストリス ロゼア V.rupestris cv.‘Rosea’ 旧名アレナリア・ロゼア)

2011年入手した株は鮮赤紫色の花が咲く園芸種で、V.rupestris はサンドバイオレットあるいはロックバイオレットと呼ばれている淡青紫色の花である。ヨーロッパから中央アジア、シベリアに分布する(Harvey 1966)。写真9は3株をまとめて一つの鉢で育てていたが、花後は植え替えて1株で栽培したら、地上茎は直立せず横に這うように生長した(写真1)。

  ②  ③

撮影①②③:2015.05.06

花のめしべの花柱の上部に突起毛が生える(写真②)ことや、唇弁の距の裏側の溝(写真③)

 ⑥リビニアナ V.riviniana

園芸名ウッドバイオレットとして苗を入手した(2011年)。しかし、インターネットで調べると、V.rivinianaHain-Veilchenというドイツ語名があり、ドイツ語Hainは日本訳で「グローブ」のことでウッドバイオレットとは呼ばれていないことがわかった。ウッドバイオレットを調べていくとV.reichenbachianaがヒットした。更に、この種はドイツではWald-Veilchenと呼ばれている。ドイツ語「Wald」は日本語訳で「森」にあたり、「森=Woood=ウッド」、つまり「Forest-Violet=ウッドバイオレット」と連想できた。しかし、V.reichenbachianaの写真を見ると、入手したものと異なっていた。そこで、V.rivinianaV.reichenbachiana の写真を比べて、果たしてどちらが入手した株と同じであるか検討した結果、V.rivinianaに似ていることが判明した。つまり、栽培名を考えた場合、「Hain-Veilchen=グローブバイオレット」より「Forest-Violet=ウッドバイオレット」の方が売れそうである。入手した栽培種はV.rivinianaのようである。 

しかしながら、ヨーロッパのほとんどの地域や北欧、ロシア連邦の一部地域では両種の分布域が重なり、V.rivinianaV.reichenbachianaとの雑種Viola×bavaricaが生ずる(Harvey 1966)ことがあるようだ。両種の識別ポイントが詳細に掲載してある文献によると、栽培個体は葉や托葉の形、花弁の開く角度や距の色等を観察した結果、雑種Viola×bavaricaと判断できたものの、確信がなく、V.rivinianaとすることが妥当と考えた 

この栽培種は生長すると地上茎が横に這うように数方向に伸び、開花し種子を作る(写真④⑥)ことを観察できた。花のめしべの花柱の上部に突起毛が生えることや、唇弁の距の裏側の溝(写真⑤)もある。

 

  ⑤  ⑥

 

撮影④⑤:2014.03.26  ⑥:2015.05.12

 

⑦シエヘアナ V.sieheana

株(2012年)や種子(2013年)はアゼルバイジャン産である。シエヘアナは欧州東部から西アジアに分布する(Marcussen 2011)。発芽率が良く、生長すると地上茎が横に這うように数方向に伸びた(写真⑦)。蕾は白色で開花初日は白花で翌日から淡青紫色となる。次々と開花する時期には同時には2色の花が楽しめた。

 ⑧ ⑨

撮影:2015.4.21

花のめしべの花柱の上部に突起毛が生える(写真⑧)ことや、唇弁の距の裏側の溝(写真⑨)もある。

次回は国内産と外国産などの観察から、横走するエゾノタチツボスミレの推察する。 

 

引用文献

・田淵 誠也  (2005)  すみれを楽しむ. 栃の葉書房 P.71

・Harvey MJ (1966)  Cytotaxonomic relationships between the European and North American rostrate violets .  New Phytol  65:470 

・Marcussen T, Borgen L (2011) Species delimitation in the Ponto-Caucasian Viola sieheana complex, based on evidence from allozymes, morphology, ploidy levels, and crossing experiments . PL Syst Evol 291:183-196