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思秋期

人生の秋の季節を迎えた初老の思い出話

エスカイヤクラブ

2019-08-23 15:52:31 | 同性との体験
翌週の木曜日、馬場さんに初めてお会いしたのは、エスカイヤクラブという会員制のクラブでした。

 クラブのホームページによれば、豪華な室内に一流の料理と高級な酒をバニーガールの給仕で楽しめるハイグレードなエグゼクティブの社交場と書かれていました。
 東京、大阪、名古屋、福岡など、全国に14店舗あるそうですが、横浜では横浜駅西口ターミナルを見下ろせるヨドバシカメラの隣のビルの9階にあります。そこに呼び出された私はコナカで買った上下のスーツに先の方が擦り切れたリーガルのウィングチップで、場違い感は半端ないものでした。

 ホテルのフロントのようなクラブの入り口で、
「馬場さまと待合せしております」
 と言うと、フロントマンは
「お待ちしておりました、馬場様も先ほどお着きになり、お待ちしております」
 と静かな声で言い、私を馬場様が待つ席に案内してくれました。



 横浜ベイシェラトンが向かいに見える窓側の席で、座りながら右手を上げて迎えてくれたのが、今日初めて会う馬場さんという方です。

 座っていたのでよくわかりませんが、身長は180はあるでしょう、屈強な体つきに細面の顔つき、60歳前後の紳士で、漆黒のブレザーに仕立のよさそうな白いシャツ、ベイズリー柄のアスコットタイを締めていました。

 隣にはこのクラブの売りでもあるバニーガールが座り、食前酒を注ぎながら談笑していました。バニーガールと言えば巨乳と美脚を強調したイケイケの娘を想像していましたが、どのテーブルについている女性も、着替えればNHKのアナウンサーに成れるくらい知性と教養に満ち溢れて上品な顔立ちの美人揃いでした。


「いやいやいや、お疲れ様です。こんなところに呼び出してしまって申しわけなかったね。」

「いえ、私のような者では来れないようなエグゼクティブなお店に呼んでいただき感謝いたします。」

「いやいやいや、僕も居酒屋の方が好きなんだけどね、やはり秘密の話をするには、それなりのお店じゃないとね、それだけ君に期待してるって事だよ」

 馬場さんは、そう言って大きな声で笑うと、意味を知っているわけないバニーガールまで笑っていました。それとも私が来た理由をこのバニーガールにも話したのかもしれません、どちらにしろあまりいい気持ちはしませんでした。

 馬場さんは気さくで心が大きな人らしかったのですが、何か言葉の端々に上から目線が感じられます。

 私が席に着くと、今まで席についていたバニーガールが退いてゆき、別のバニーガールがシャンパンのボトルが入ったペールとグラスを持ってきました。私達はシャンパンで乾杯してフルコースの食事をしながら話し始めました。
 お互いに軽い自己紹介をしてから、私は馬場さんが話しやすい話題を探し、それについてなるべく馬場さんにしゃべらせることに徹しました。相手を気持ちよくしゃべらせる術は、営業畑で鍛えられてきたので心得ています。
 馬場さんは某公営ギャンブルの会社の重役さんとの事で、船橋に自宅があり、今は川崎に通っているとの事です。それ以上プライベートなことは気を悪くするといけないので聞きませんでした。あとは馬場さんがプレーをしたことある海外のゴルフ場の話やそこでの逸話などを話させて、まあ、不毛な会話でした。

 デザートが終わると先ほどのバニーガールがやってきて膝まづき、

「食後のお飲み物の用意が出来ておりますので、別室にお越し下さい」と言い、私達はバニーガールにの後を店の奥についてゆきました。
 そこはVIPルームで一段とゴージャスなジュータンと壁紙、そして豪華な牛皮の応接セットが置かれ、テーブルの上に高級ウイスキーが用意されていました。
 
 ここは商談や密談に使うためか、テーブルを挟んで長いソファが二つ並びます。
 私はソファーの片側奥に座ると、後から来た馬場さんは向かいのソファに座らず、私の横に腰を下ろして煙草を口に咥えました。
 一緒に入ってきたバニーガールは、すかさず馬場さんに横に膝まづきライターを出して火を点けました。
「ここはタバコが吸えるからいいよなぁ、」
 そう言って一息吸うと、バニーガールに向かって
「内密な話があるから、酒を作ったら外してくれ」
 と言いました。
 バニーガールは二人の前にスコッチのグラスと、つまみの皿を置くとお辞儀をして部屋を出て行きました。

「T君、沙織に聞いたんだが、」
 馬場さんは、一息間をおいて話を続けました。
「・・・君はMなんだって?」
 この質問が馬場さんのスイッチが入る瞬間だったのでしょう。

「自分で自覚はありませんでしたけど、沙織さんに言われて思い当たる節は・・・」
 ここまで言ったときに、馬場さんはいきなり、隣にいた私に覆いかぶさり、顔を押し付けキスをしてきました。煙草の匂いが強烈で、生暖かい馬場さんの舌が僕の口の中に乱暴に突っ込み歯茎を舐めまわします。

 それまで紳士的な話をしていたので忘れていましたが、馬場さんは男を抱くのが趣味で、私は男に抱かれるために来たわけですから、こうなるのも当然の事でした。

 私はそう思い直して、受け身の態勢に入りました。馬場さんはかなり乱暴で、私に激しいキスをしながら私のネクタイを思いきり緩めます。でも乱暴にされればされるほど男に身体を自由にされる悦びが覚醒されてきたのも事実です。

 私は馬場さんから流し込まれる唾液を呑み込み、
「ん、」と声を漏らしました。
 馬場さんは、なおも乱暴にキスを続けながら私のYシャツのボタンを外し、今度は私の首筋に舌を這わせ始めました。
「あっ、」
 それは演技ではなく、本当に声が漏れてしまったのです。身体全体を馬場さんに力強く抑えられながらも、首筋に当てられた馬場さんの舌だけがナメクジのようにそっと触れられるとゾクゾクするほど感じてしまい、ついつい声を出してしまったのです。
 
 「なるほど、確かにMのようだね、」

 馬場さんはそう言うと、私に覆いかぶさっていた姿勢からもとの隣に席に戻り、グラスをとってウイスキーを一口飲みました。
 「だが、まだまだ初心だな、開発し甲斐があるってものだ」
 そう言って大声で笑いました。

 私はどう答えたらいいものか、迷いながら、ネクタイを引き抜き、シャツを整え直しました。

 私はこの男のモノになるのだろうか?
今まで漫然と強い男に征服されたいという妄想は持ってきていたが、実際にその対象の男が目の前に現れると逆にピンと来なくなってしまいました。


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