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いわゆる疑わしい作品について (ogawa_j)
2008-05-26 10:30:29
バッハの鍵盤楽器(オルガン、チェンバロなど)のための作品の中には、真作かどうか疑わしいとされている作品が多くあります。2声のインヴェンションと3声のシンフォーニアやオルゲルビュッヒラインなどのように、まとまった手稿が存在するものはいいのですが、個々の、しかも写譜だけが残っているような作品の場合、真作とそうでないものを判断する明確な基準がありません。手稿の作製者とバッハとの関係やバッハの名で残っている手稿の数と言ったものに頼っている面もあります。様式批判による判断は、これまでも多くの誤りを生んできましたので、私は、あまり頼りにならないと考えています。このBWV 958のフーガも、BWV 956, 957とともに、作品総目録(BWV)で、疑わしい作品に分類されています。だから真作ではない、とは言えません。あまり気にせず、気に入れば、バッハの作品と思って聴けばいいと思いますが。
 
 
 
コメントありがとうございます (aeternitas)
2008-05-26 23:12:02
いつも適切なコメントありがとうございます。
偽作ということばには、悪意の所為という感じがふくまれますし、作品そのものの価値がおとしめられる感じがあって、どうにも好きになれません。偽作を疑作としても、同じようなものです。先入観や予断にむすびつくだけに、そうした引用は不要かとも思うのですが、それでも引用しているのは、そういう疑いがあるということを、何もふれないのもどうかと思うからです。知ることからはじまる疑問、というものもありますし……。
 
 
 
偽作という言葉 (ogawa_j)
2008-05-27 10:39:12
ご指摘の通り、「偽作」という言葉は、絵画の場合のように、最初から人を欺いて利益を得ようとして作られたものに対して使う言葉だと思います。彼の作品でないのにバッハの作品とされている場合や、明確に真作であるという証拠がない場合は、「偽作」という言葉は使うべきではないと思います。こういう言葉の使い方については、本来言葉を厳密に使うべき専門家の中にも、適切でない例が結構ありますね。
素人なりにバッハ研究に永年携わっていますが、疑わしいとされているバッハの作品の判断に対する決定的な基準というのは、本当に存在するのかどうか、ずっと疑問に感じています。
聴く者がバッハの作品と思うなら、それで良いではないかとも思います。「湘南のバッハ研究室」のエッセイ「ヨハン・ゼバスティアン・バッハのフルートのための室内楽作品* ―その真性(Echtheit)と成立事情(Entstehungsgeschichte)を探る―」(http://www.ab.auone-net.jp/~ogawa_j/essay_flute_01.html)で論じました、フルート・ソナタハ長調(BWV 1033)と変ホ長調(BWV 1031)を、私はバッハの作品として聴いています。
 
 
 
BWV80ですが (aeternitas)
2008-05-27 21:30:18
少し話がそれるかもしれませんが、「われらが神は堅き砦」をフリーデマンが加筆した編成のほうも、オリジナルと同じくらい好きで、同じくらいきいています。いまからみれば、フリーデマンの加筆は不遜な行為といえるのでしょうが、「ぶちこわし」というほどには悪くはないと思っています。「これは偽作だ」とか、「ここは真筆ではない」というふうな学術的な評価が、そのまま音楽的な評価に連動するのは、ちょっとどうかと思っていました。
 
 
 
加筆された手稿 (ogawa_j)
2008-05-28 11:16:48
旧バッハ全集(BG)では、このカンタータは、トランペット、ティンパニのパートを加えた姿で刊行されています。この作品には、オリジナルの総譜もパート譜も残っていなく、アルトニコルの手になる総譜の写譜などしか存在しません。これらにはトランペットやティンパニは含まれておらず、BG版を編纂したヴィルヘルム・ルストは、この作品のヴィルヘルム・フリーデマンの編曲版"Gaudete omnes populi"によって補ったといういきさつがあります。新バッハ全集(NBA)では、このトランペットとティンパニはフリーデマンの加筆と判断し、考慮に入れませんでした。
ただ、一度バッハ全集という形で出版されたため、およそ100年間、権威ある版として通用することとなりました。確かにトランペットとティンパニが加わった編成は、このルターに由来するコラールに基づくカンタータに輝かしい響きを与え、宗教改革を記念する作品として受け入れられる要素をもっています。学問的に見れば正規の姿とは言えませんが、それなりの魅力を持っていることは、否定出来ないと思います。
これは別件ですが、最近送られてきたBach Magazinによりますと、今年3月にベルリン国立図書館がX線を撮影し、ロ短調ミサの自筆総譜の"Credo"の部分にフィリップ・エマーヌエルが手を加えた部分を正確に判定する作業を行っているそうです。この結果は、来年刊行予定の新バッハ全集の改訂版の第1巻に反映されるそうです。いろいろ問題のあったフリートリヒ・スメント編纂のロ短調ミサの改訂版が出されることになったようです。
 
 
 
科学鑑定 (aeternitas)
2008-05-28 13:32:02
新しい情報ありがとうございます。非破壊型の科学鑑定が進めば、より精密な鑑定ができるようになりますね。X線による鑑定は、モーツァルトでの実績がよくしられていますが、「ロ短調ミサ曲」の鑑定でも、よい実績をのこすことを期待したいものです。
 
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