私たちは、マイクロファイナンス・プログラムを実施する前に、2009年8月から約8ヶ月をかけて調査・立案を行いました。その中で、グラミン銀行の活動の重要な柱となっている5人一組の「連帯グループ」および5つの「連帯グループ」で構成される「センター」の組織化を通じた、貧しい女性たちのエンパワメント活動に着目するようになりました。
まず、グラミン銀行による貧しい女性たちのエンパワメントで重要な役割をはたしているのが、グラミン銀行が掲げる「16の決意」です。
<16の決意>
1. 私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる
歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。
2. 繁栄は家族のために。
3. 私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を
作るために働く。
4. 私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余
った分を売る。
5. 私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。
6. 私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、
健康に気を遣う。
7. 私たちは子供たちを教育し、子供たちが自分の教育費を払えるよう
保証する。
8. 私たちはつねに子供と周囲の環境を清潔に保つ。
9. 私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。
10. 私たちは深井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を
沸かすかミョウバンを使う。
11. 私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも
持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから
距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。
12. 私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。
13. 私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。
14. 私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに
困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。
15. もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、
私たちはそこへいって回復を手助けする。
16. 私たちはすべての社会活動に共同で加わる。
グラミン銀行は、これらの「決意」をメンバーたちに暗唱させることで、家屋・衛生・飲料水・教育・家族計画に関する意識付けを行うと共に、女性差別と闘う事を訴えています(11)。他方、共同性を高め、メンバーが互いに協力し合って生活やコミュニティーを改善する意識を高めようとしています。
こうした意識付けを行うことの重要性を、グラミン銀行創始者ムハマド・ユヌスは次のように振り返っています。「我々は、これらの決意がいかに深く我々のメンバーたちに影響を及ぼすか、決して想像していなかった。今日、どの支部においても、我々のメンバーたちはとても大きな誇りを持って16の決意を暗唱する。」「これらの決意は、貧しい人々こそが、いったん経済的にエンパワーされるや、人口問題を解決し、文盲を根絶し、より健康的でよりよい生活を送るための戦いの、最も確信的な戦士であることを証明している。」(Banker to the Poor, Yunus)
大切なことは解決されるべき社会問題を正面から掲げ、メンバーたち=借り手の意識の変革を求めていることです。私たちも、フィリピンの社会的・歴史的文脈に即した「メンバーの誓い」を作成し、マイクファイナンスの融資対象者への意識付けを開始しています。
(次回に続く)