市民のネットワークが貧困のない社会を創る

国際協力NGOアクセスの事務局長・森脇が、フィリピンと日本での活動の様子や、活動する上での考え方などをつづるブログです。

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マイクロファイナンス・プログラム報告(4)

2011年04月20日 | マイクロファイナンス

 

前回に引き続き、グラミン銀行の「連帯グループ」と「センター」の組織化を通じた、貧しい女性たちのエンパワメント活動についてみていきます。

 

グラミン銀行は、その「行動方法」として10項目を掲げています。(グラミン銀行の行動方法(Method of Action)の詳細については、ウエブサイトhttp://www.grameen-info.org/をご覧ください。)私たちは、その中で特に第6項と第10項に注目しました。

 

第6項 連帯グループに依拠せよ。

    同じ社会背景を持ち互いに信用しあっているメンバーからなる、

    小さなインフォーマルグループを組織せよ。

10項 人的資源に投資せよ。リーダーたちへのトレーニングは、

    彼女たちに、厳しさ、創造性、農村の環境への理解と尊敬に

    基づく、真の開発倫理を提供するだろう。

 

この二つの方法論について、グラミン銀行は次のように解説を加えています。

 

「借り手は小さな同質的グループへと組織される。こうすることにより、グループ内の連帯(相互扶助)と参加的相互作用が促進される。5人のメンバーからなる第一次グループの組織化とそれらのグループをセンターへと組織することが、グラミン銀行方式の基盤となってきた。グラミンの設立当初から強調されてきたことは、グラミンの顧客である彼女たちがマイクロレベルの開発の諸決定を計画し実行する能力を獲得できるよう、グループやセンターを組織的に強化することである。」

 

「グラミン方式は、社会資本建設に高い優先順位を与えている。これは、グループとセンターの形成を通じて促進されている。年次のグループとセンターのリーダーの選挙、およびグラミンが借り手によって所有されるようになってからは(引用者注-グラミン銀行の株式を借り手に保有させるようにしたことを指している)、理事を選挙することを通じてリーダーシップの質を高めてきたのである。借り手たちが抱えている社会問題の解決、それは「16の決意」に表現されているようなものであるが、に向けて、グラミン銀行は借り手の間での集中的な議論の過程を組織し、彼女たちにこれらの決意を真剣に捉え実行に移すよう励ます。」(以上、グラミン銀行ウエブサイトよりの引用。日本語訳は引用者)

 

少し抽象的ですが、社会問題・貧困問題を解決するための組織的基盤として連帯グループが捉えられていることが分かります。つまり、グラミン銀行にあっては、この連帯グループこそが社会変革のための核となる基盤組織として位置づけられていて、連帯グループを構成している貧しい女性たちの意識の向上、相互協力、そして生活の変革-社会の変革に向けた共同の行動を促すことをめざしているわけです。こうしてみると、グループ融資という方法論は、単に融資したお金を回収するために開発された技術などではなく、連帯グループおよびセンターの強化を通じた、貧しい女性たちのエンパワメントを行うことに真の目的が置かれていることが分かります。

 

以上のようなグラミン銀行の理念は、この稿の第二回で紹介した私たちの「エンパワメント」という考え方と重なります。

 

私たちは、グラミン銀行のこうした理念に共感し、私たちのマイクロファイナンス・プログラムのコンセプトも、グラミン銀行の理念と実践から学びんだことをフィリピン社会の文脈の中で再構成したものとなっています。

 

(次回に続く)


マイクロファイナンス・プログラム報告(3)

2011年04月15日 | マイクロファイナンス

私たちは、マイクロファイナンス・プログラムを実施する前に、20098月から約8ヶ月をかけて調査・立案を行いました。その中で、グラミン銀行の活動の重要な柱となっている5人一組の「連帯グループ」および5つの「連帯グループ」で構成される「センター」の組織化を通じた、貧しい女性たちのエンパワメント活動に着目するようになりました。

 

まず、グラミン銀行による貧しい女性たちのエンパワメントで重要な役割をはたしているのが、グラミン銀行が掲げる「16の決意」です。

 

16の決意>

 1私たちはグラミン銀行の4つの原則に従い、私たちの人生のあらゆる

   歩みの中でこれを推進する:規律、団結、勇気、そして勤勉。

 2繁栄は家族のために。

 3私たちはあばら家には住まない。まず第一に家を修繕し、新しい家を

   作るために働く。

 4私たちは一年を通して野菜をつくる。私たちはそれらを豊富に食べ、余

   った分を売る。

 5私たちは耕作期にはなるべく多くの種をまく。

 6私たちは家族を増やしすぎないように計画する。支出をおさえ、

   健康に気を遣う。

 7私たちは子供たちを教育し、子供たちが自分の教育費を払えるよう

   保証する。

 8私たちはつねに子供と周囲の環境を清潔に保つ。

 9私たちは穴を掘ったトイレ (pit-latrine) をつくり、使う。

 10. 私たちは深井戸から水を飲む。もし井戸がない場合は、水を

   沸かすかミョウバンを使う。

 11. 私たちは息子の結婚式で持参金をもらわず、娘の結婚式にも

   持参金を持っていかない。私たちのグループは持参金の呪いから

   距離をおく。私たちは幼年での婚姻をさせない。

 12. 私たちは不正なことをせず、また他人に不正なこともさせない。

 13. 私たちはより多くの収入を得るため、共同で大きな投資をする。

 14. 私たちはつねにお互いに助け合えるよう用意する。もし誰かに

   困難があれば、私たちは全員で彼または彼女を助ける。

 15. もしどこかのグループが破綻しそうだとわかったときは、

   私たちはそこへいって回復を手助けする。

 16. 私たちはすべての社会活動に共同で加わる。

 

グラミン銀行は、これらの「決意」をメンバーたちに暗唱させることで、家屋・衛生・飲料水・教育・家族計画に関する意識付けを行うと共に、女性差別と闘う事を訴えています(11)。他方、共同性を高め、メンバーが互いに協力し合って生活やコミュニティーを改善する意識を高めようとしています。

 

こうした意識付けを行うことの重要性を、グラミン銀行創始者ムハマド・ユヌスは次のように振り返っています。「我々は、これらの決意がいかに深く我々のメンバーたちに影響を及ぼすか、決して想像していなかった。今日、どの支部においても、我々のメンバーたちはとても大きな誇りを持って16の決意を暗唱する。」「これらの決意は、貧しい人々こそが、いったん経済的にエンパワーされるや、人口問題を解決し、文盲を根絶し、より健康的でよりよい生活を送るための戦いの、最も確信的な戦士であることを証明している。」(Banker to the Poor, Yunus)

 

大切なことは解決されるべき社会問題を正面から掲げ、メンバーたち=借り手の意識の変革を求めていることです。私たちも、フィリピンの社会的・歴史的文脈に即した「メンバーの誓い」を作成し、マイクファイナンスの融資対象者への意識付けを開始しています。

 

(次回に続く)


マイクロファイナンス・プログラム報告(2)

2011年04月10日 | マイクロファイナンス

私たちアクセスは、貧困問題解決に向けたアプローチの方法として「エンパワメント」という考え方を最も大切な要素と捉え、活動の柱としています。「エンパワメント」とは、貧困の当事者である住民自身が、自らを組織し、自分たちが抱える問題を自分たちで集団的に解決する力を身につけることです。「エンパワメント」を考えるとき、個人の力をつけることと住民の集団的な力をつけることの二つの側面がありますが、私たちは、集団的な力をつけることに焦点をあてた活動を行っています。貧しくて、社会的資源にアプローチする能力や機会が十分に与えられていない人々は、一人ひとりばらばらになっていては問題解決のための十分な力を得ることができません。自分たちで、自分たちの組織をつくり、自分たちがぶつかっている問題の解決に協働してとりくむことで、一人ではできなかったことができるようになる。そうした共同の活動と組織を発展させるために必要とされる個々人の潜在的な能力を高めていく、そうした活動です。

 

ですので、私たちの活動は、プログラムの受益者の組織化を行い、リーダーの育成、住民自身によるプログラムと組織の運営を推進するとともに、そうしたプログラムごとの組織を基盤として、さらにコミュニティー全体の抱える問題の解決、コミュニティーの変革を貧しい人々自身の力によって実現することめざすことになります。

 

マイクロファイナンスといえば、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスとグラミン銀行を思い浮かべる方も多いのではないかと思います。グラミン銀行が拠点としているバングラデシュはイスラム教徒の多い国で、ユヌスの自伝「Banker to the Poor」によれば、ユヌスがグラミン銀行の活動を始めた70年代には、女性は社会的活動への参加を大きく制限されていました。にもかかわらず、貧しい農村の女性たちは、自分たちが持っている技能を活かしてなんらかの収入を得る活動に従事し、家計を支えていました。ユヌスは、貧しい女性たちにわずかの融資を行うことで彼女たちは自らの経済活動を改善し、収入を増やすことができるのに、既存の金融機関は融資を行おうとしない状況を何とかしたいと思い、グラミン銀行の活動を始めたそうです。

 

グラミン銀行の開発した画期的な方法はグループ融資という方法であると言われています。これは貧しい人5人一組で「連帯グループ」を作り、何らかの形の連帯責任を負わせることでグループ内での返済圧力を形成し、融資した金を回収するというシステムです。それまでは、貧しい人は返済能力が無く、また返済を担保する資産も無く、商業銀行などの金融システムからは融資の対象外とみなされていました。ところが、グラミン銀行はグループ融資という方法で貧しい人への融資を行い98%の回収率を達成しました。貧しい人にも返済能力があることを事実として示したわけです。

 

他方、グラミン銀行のグループ融資は、融資を受ける貧しい女性たちのエンパワメントを目的としています。私たちがめざしている「エンパワメント」と方向性を共有する理念です。

 

次回以降、グラミン銀行の開発したグループ融資という方法論について、掘り下げて考えてみたいと思います。 (次回に続く)


マイクロファイナンス・プログラム報告 (1)

2011年03月25日 | マイクロファイナンス
 

当会のマイクロファイナンス・プログラムは、フィリピンケソン州アラバット島ペレーズ地区で行われています。

本事業の対象地であるペレーズ地区は、ルソン島の太平洋岸に浮かぶ小さな島アラバット島の一地区で、フィリピンの典型的な貧しい農漁村の一つです。主な産業はココナッツと零細な漁業・農業で、 主食である米も含め生活用品のほとんどを島外からの移入に頼るなど商品経済が浸透しているにもかかわらず、 大半の住民の収入は少なく不安定で、教育や医療といった基本的ニーズも十分に満たされていないという 問題を抱えています。とりわけ、十分な漁具も持たず漁を行い生計を立てている漁民たちは、10月から3月にかけては海が荒れ、現金収入が不安定になり、米も買えず飢えにさらされる人たちもいます。

こうした中で、貧しい人々が収入を増やし、衣・食・住や教育・医療といった基本的ニーズを満たすために、貧しい人々自身が自らの力で自立的に新たな事業を起こすことが大きな課題となっています。
が、新たな事業を 行おうとしても、その日の食費すら足りない日もある人たちにとっては、そのための資金を望むべくも ありません。

フィリピンはグローバル経済の影響を強く受け、外国製品による国内市場の支配、先進国の垂直分業に組み込まれた形での工業化は、フィリピンに本来望まれる「経済の活性化」をもたらしていません。
国内では大土地所有制のもと農民たちは小作農として6~7割もの小作料の支払いを強いられ、遅々として進まない農地改革、貿易自由化の下で深化する農村の窮乏化と都市への人口の流入、都市の貧困層の増大、海外へ出稼ぎために流出する人々という構造は止まらず、人々は脱出口のない貧困構造の中に閉じ込められているのが現状です。

本事業は、マイクロファイナンスを通じて、フィリピンの貧しい人々に起業のための資金を提供し、貧しい人々 自身が自立的に事業を行うことで収入を増やし貧困から脱することに貢献しようとするものです。
今後、このブログを通じて、本プログラムを支援をしてくださっている皆さまにプログラムの報告を行っていきます。ご注目ください。

プログラム担当:森脇 祐一