abeckham@izakaya

飲んで食うなら家でも十分。
それなのになぜ人は居酒屋に行く。
その謎を解く旅が、ここから始まります。

忘年会 候補決定!

2007-03-26 12:42:09 | Weblog
2月24日
今日は月一の土曜出勤だ。会社が早く終わるんで、嫁さんと待ち合わせして一杯。これが土曜出勤の定番だ。
さて今夜は四谷へ行こう。四谷には東京で伝説と言われる角打ち「鈴傳」があったり、僕の好きな店がいくつかある。「しんみち通り」という路地に飲み屋が並び、近くのサラリーマンや上智大学生が集う店が多数ひしめく。その中でも今夜選んだのは秋田料理の居酒屋だ。以前に会社を辞めた後輩とともに訪問し、どろどろになるまで飲んだことがある店なのだが、その思い出が忘れられず、きりたんぽが食べたいと言い続けていた嫁さんを連れて訪問することになった。
しんみち通りを新宿方向に進み、最初のどんつきに突き当たる寸前の右側のビル1階奥に、秋田居酒屋「太平山」がある。さて太平山の暖簾をくぐると、入ってすぐに調理場を囲むようにしてカウンターがL字で構え、店舗中央に大きな囲炉裏があり、それを1周する形でカウンターが囲む。またテーブル席も4席ほどあり、奥には長い座敷もある。今夜もすでに奥座敷は宴会のグループが占領し、テーブルも2席は埋まった状態。今夜の僕は、前に来たときに座りたかった囲炉裏を囲むカウンターに席を取った。
さてメニューを見ながらラガーの大瓶を1本。互いに注ぎあい、いざ乾杯。ラガーの冷たい苦味がうまい。さてここは秋田料理の名店。秋田と言えばやはり「きりたんぽ」だ。が、それはまだ後として、とりあえず名物「はたはた塩焼き」「皮内地鶏の刺身盛り合わせ」「いぶりがっこ」を注文した。
スパゲッティーのサラダの突き出しを食べながら、久々の外食に期待を膨らます我ら二人。
まずは「いぶりがっこ」が届いた。これは秋田の名産で、沢庵漬けを燻製にしたものだ。すかさず僕は日本酒を注文。秋田の酒「津月・純米吟醸無濾過」でいぶりがっこを迎え撃つ。燻製のほのかな香ばしさと、沢庵独特の臭みが素晴らしい二重奏を奏で、圧倒される歯ごたえはまさに驚愕。前に来たときも後輩を3度お替りしたが、今夜もいぶりがっこの迎撃にたじたじだ。
さて「皮内地鶏の刺身盛り合わせ」は、正肉、すなずり、レバーの盛り合わせだ。レバーはまるで臭みが無く、とろとろ。正肉はしゃきしゃき、ねっとり。すなずりはこりこりと歯ごたえが軽快で、添えられたゆず胡椒が花を添える。嫁さんも秋田銘酒「太平山」のにごり酒をもらい、これで秋田名物とにらみ合う心構えだ。
「はたはた塩焼き」はまさに美味。はたはたは東北でよく食べられる魚。うろこが無く、ぬめぬめとして気持ち悪いが、焼いたり煮たり干したりするとなんとも言えずうまい。ここのはたはたは20cmはあろうかというメス。タマゴがぶりぶり入り、あごが疲れるほどの歯ごたえだ。本物のタマゴか疑わしい位のボリュームだ。これを一人1匹平らげる我が夫婦。はたはたは秋田のイメージが強いが、一番漁獲量が多いのは北海道で、2位は兵庫。本場の秋田は3位らしい。
さてエンジンがかかってきた所で、僕は「太平山」の熱燗に切り替え。自動付け器で付けられた燗酒は熱いので、少し覚ましながら口に運ぶ。時々嫁さんのにごり酒で口を調整しながら、追加の注文に余念が無い。
「川えびのから揚げ」はぱりぱりと香ばしく、潮の香りがとても上品で、再度ビールが欲しくなる。日本酒に合わせて注文した「ばくらい」はホヤの塩辛。僕は前から興味があり、ようやく今夜初めて口にする。キングが「これがあればほかに何もいらない」と語るだけあって、フルーツのような甘みの裏に、海水のようなえぐみと苦味が混在し、まさにカオスの味わい。これは日本酒との合性が抜群だ。素晴らしい。仕事のトラブルやらであわただしい毎日が馬鹿馬鹿しくなるくらいだ。人間の幸せここにあり。
いつの間にか店の中は客で満員。僕らも大人数のお客さんの入店に合わせ、テーブル席へ移動し、居心地の良い囲炉裏端を手放すことになった。が、それは仕方なし。
さて本日のメイン「きりたんぽ鍋」が届く。ガスコンロに鍋を置いてだしをはり、皮内地鶏、豆腐、せり、ごぼう、しらたき、きりたんぽなどをぶち込む。しばらくすると、もう我慢できないにおいが充満。「それっ」とばかりに二人で箸を伸ばす。比内地鶏は秋田の宝。もうこの肉感と上品な脂が最高。嫁さんも「脂に食感がある」という名言を残すほど。しらたきもその辺で売っているものとは違い、なんとなく田舎臭い食感と味わい。なかでも特筆すべきは「せり」だ。最初何なのかわからず、店の女性に訪ねたところ、秋田から取り寄せたせりだそうで、根っこまでおいしいらしい。なるほどこんなの鍋に入れていいのか?と知らない人ならクレームをつけそうなくらいの根っこ付のせりが泳いでおり、この根っこが言葉の通りうまい!!甘く、そして大地の味が口に広がり、おもわず自然に感謝したくなる味わい。最後にとった「太平山」のたる酒の冷が、鍋の脂と口の中で化学反応を起こすうまさ。嫁さんもご満悦の様子。
締めにと言うことで、雑炊か名物「稲庭うどん」か迷った挙句、稲庭うどんを二人で1玉注文。さっとスープに潜らせ、ねぎをかけてツルツル・・・ああ、もう言葉が無い。
二人とも満腹で、笑顔をこぼしながら店を出るころには、今年の忘年会はここで決まりと確認しあうほどに。はっきり言います。ここのきりたんぽは最高です。
「じゅんさい」「とんぶり」など、秋田にはまだまだ名産品があり、酒も「両関」「刈穂」「飛良泉」と、銘酒が凌ぎを削る。まだまだ知らねばならぬことがあるが、今夜のところはここまでで退散だ。
さあ、忘年会まで後10ヶ月。これからここに勝る忘年会候補は見つかるのだろうか?

大阪 浪花 道頓堀

2007-03-19 09:47:30 | Weblog
11月17日 
昨夜は明治屋で二人で飲み、その後中津に移動して、仕事を終えた後輩と合流して居酒屋でおいしいレモンサワーを数杯飲んだ。
今日はその後輩と朝から学会に参加し、その後、今日は一人で神戸探索に出かけた嫁さんと後輩の彼女と集合して、大阪らしい大阪の町(?)、道頓堀へ向かう。
夕方、学会を終えた僕と後輩は、電車に乗って道頓堀へ。嫁さんを駅で見つけ、改札の外で後輩の彼女と合流し、雨の降る道頓堀へ歩く。大阪の二人は道頓堀などほとんど来ることがないらしく、どうやら僕らの願望に付き合ってくれた様子。人でごった返す中を歩き、阪神ファンがダイブすることで有名な橋の上で、これまた有名なグリコのテカテカギラギラのネオン看板をバックに写真撮影までしてくれた。大阪に着たとはいえ、仕事があるので観光できない僕の唯一の記念写真だ。その後名物「くいだおれ人形」や「ずぼらや」「かに道楽」の大看板を巡りながら今夜の店を探す。今日はなんのあてもない僕ら。僕の嗅覚に今夜の成否の全てがかかる。
「串あげ」「お好み焼き」など、大阪の味を売りにする店が連なる中、「包丁一本」で有名な法善寺横町を歩く僕の目に、一軒の店が入る。僕の琴線はピーンと張り詰める。ここにしよう、ここにしよう。その名は「たこ政」だ。
後輩の彼女はお酒を飲まないらしく、二人で飲みに行ったことがないらし。そんな彼女に、「おいらにまかせな」と語る背中を見せながら、僕は暖簾を潜る。店入口にいくつかのテーブルがあり、奥に細長いカウンターの続く店内で、まだ客はまばらだ。僕らは入口付近のテーブルに席を取る。
改めて軽い自己紹介を済まし、酒飲み3人は生ビール、後輩の彼女は違う酒を取り、とりあえず乾杯。仕事も順調に終わり、久々に旨い生ビールだ。
さてここは「くわ焼」が名物の様子。しかしくわ焼とはなんたるものか?後で調べたことだが、江戸時代に農民達が野鳥を捕まえ、休憩中にくわ(農機具)に肉を載せて焼いた物が由来らしく、焼き鳥ではなく鉄板焼なのだそうだ。
ずらーっと並ぶお品書きの中から、とりあえず「オランダ」「砂肝」「たまねぎ」「ぼんちきん」などを注文。意味のわからないものもあり、何が出るかな、何が出るかな♪状態だ。
徐々に会話が盛り上がる中、ぞくぞくと大阪の刺客達が届く。「オランダ」なる謎の食べ物は、ミンチのような物を串に刺して揚げた物で、ソースに絡ませて食べると、あつあつで旨い。女将さんにオランダの意味を聞いてみたが、「話が長くなるからね~」と教えてくれない。大阪のおばちゃん、恐るべし。「砂肝」はぷりぷり。「たまねぎ」は輪切りのたまねぎが綺麗に焼かれている。今思い返すと、やはり串焼きとは違う趣だ。「ぼんちきん」もプリプリと鳥の脂がはじけて旨い。ビールをお替りしつつ、食が進む。博多の焼き鳥屋のように、最初に大皿に生のキャベツが大量に載ってきて、その上に焼かれた串が置かれていく。追加で「えびぱん」「せせり」「ピーマン肉詰め」「ウインナー」などを注文し、僕は熱燗に切り替えた。普段はお酒を飲まない後輩の彼女が、僕のような珍しいタイプ(?)の酒好きと出会い、どうやら少しお酒に興味を覚えたらしい。紫蘇焼酎の水割りを自ら注文する姿を見て彼氏が驚いている。いいぞいいぞ。
「えびぱん」はエビのすり身が塗られた小さなパンを揚げた物で、サクサクと香ばしくて旨い。「せせり」は鳥の喉に当たる、コリプリした身でこれもすばらしい。菊正宗の熱燗がチロリで出され、白いお猪口に注がれて僕の口に進む。焼酎水割りを飲んでいた嫁さんも後輩も熱燗になびいてきた。いいぞいいぞ。
全ては覚えていないが、それからも幾つかの料理を頼み、既に売り切れて食べられなかったものもあり、店も超満員になり、話題も沸いて楽しい時間が流れる。気が付けば後輩の彼女も熱燗を飲んでいる。顔が真っ赤で、今日はお酒がおいしいらしい。普段飲まない人が飲む姿を見るのはいい物だ。今日が彼女に取って、お酒との良い出会いになるといい。後輩も彼女と二人で飲みに行きたいだろうしね。
随分長い間ここに座り、すっかりお腹も満たされ、お酒も堪能し、お客さんも大方引けてしまった。会計をお願いしながら、今度は違う女性店員に「オランダ」の名前の由来を再び聞くが、女将さん同様、「話が長くなるから」と笑顔で教えてくれない。「常連になったらおしえたるで」との大将と女将さんの掛け声が面白い。また来たいな、と思いながら笑顔で店を出た。
初めて歩く大阪の町で、星の数ほどある飲み屋の中から偶然か必然か、ここの暖簾を潜ったことに満足し、みんなの笑顔でそれを確信し、僕は大阪の夜を終えようとしている。丁寧に拭かれた、20センチはあろうかという白木のテーブルがとても居心地をよくしてくれた。「くわやき たこ政」。僕は「大阪に良い店あるよ」と、鼻高々に言える店を見つけた余韻に浸り、なんばの駅へと嫁さんをひっぱって歩いた。

MAC

2007-03-13 11:29:07 | Weblog
今日は居酒屋の話ではありません。
酒の話でもありません。
僕の今一番の悩みの話です。

さて、仕事柄お医者さんと付き合いの多い僕。さらに最近営業部だけではなく、企画部なるものにも籍を置き、二足のわらじを履く生活。企画部ってカタログ作るの考えたり、学会の展示のこと考えたり、広告出したり・・・営業とは違う仕事で、それはそれで面白い。付き合う人も異なり、デザインする人や、やたらとコンピューターに詳しい人が多かったりだ。
そこで最近感化され始めていたんだが、ついにMACを買ってしまった。秋葉原で15万ちょい。決して安くはないが、かなり値引けた価格だ。
仲の良いお医者さんの強い勧めもあり、買ってはみたもののウィンドウズとはまるで世界が異なり面食らっている。要は使いこなせないのだ。
まだ買って3日しかたってないからもあるが、使いこなすには相当の時間を要すると予想される。MACでブログを作り変える、もしくはホームページ化するのもMACを買った目的のひとつだが、僕のゴールは遠い。ネットに繋ぐのも、メールのアカウントを取るのも一苦労。ここにMAC用のウィンドウズを入れ込んだり、いろんな設定したり・・・ああ、平和な毎日に悩みができてしまった。
が、これも自分が選んだ道。必ずや成し遂げてやる!!
「人生、レモンをもらったらレモネードを作れば良い」てな言葉を耳にした。レモンはそのまま食べたらすっぱくて、好きな人もいるだろうが遠慮したいのが正直なところ。だからレモンでレモネードを作っておいしくして飲めば良い。人生の困難は自分で工夫して楽しくしてしまえってことか?
なんて思わせられながら、MACのリンゴマーク(APPLE社ロゴ)との格闘が始まります。だれかMACユーザーいませんか???教えて!!

原点に舞い戻る

2007-03-05 15:06:27 | Weblog
11月16日 明治屋
学会出張で大阪へ来た。春以来の大阪だ。僕のブログを読んでくれている皆様ならご存知かもしれないが、僕が古き良き居酒屋探しにはまり込むきっかけを作った居酒屋が大阪にある。今回は嫁さんも出張に便乗し大阪にやってきている。僕の居酒屋原点に、連れて行くために。
さて仕事を早々と終えた僕は、大阪支社のある中津から地下鉄に乗り、いざ天王寺へ向かった。天王寺は大阪の下町的存在らしく、ここから通天閣のある界隈辺りは、まさに大阪のディープゾーンらしい。安い串カツ屋や、大阪の臭いを感じ取れる飲み屋などが軒を連ねるらしい。
天王寺で嫁さんと無事めぐり合った僕は、大阪城めぐりをしてきた嫁さんの今日の武勇伝を聞きながら手を引き、記憶を辿って足早だ。路面電車の走る阿倍野筋を颯爽と渡り、目的地を発見した。
小さく灯る「酒 明治屋」の丸看板が記憶に新しい。店の前まで来ると、人が発する活気と、それとは逆の静謐感が暖簾の向こうから押し寄せる。さあ、いざ入店だ。
店内右手のカウンターに空きがあり、僕らは躊躇なくそこへ着座。客の入りは8割強か。既に常連がしっかり居場所を確保し、いつもの酒で顔を崩しているようだ。
嫁さんはさんざん僕から聞いていた通りの世界が広がるこの空間に圧倒されている様子。しかし大阪の宝を楽しまなければ損だという訳で、さっそくビールを注文。キリンラガーをお互い注ぎあい、今日大阪に来れた幸運に乾杯。こういう店で飲むラガーは格別だ。
さて「あて」を頼もう。大阪では「つまみ」の事を「あて」と呼ぶ。数ある大品書きの中から、ここに来たら食べると決めていたスターをまず注文。「しゅうまい」「きずし」「どて」のクリーンナップをまずは待とうではないか。
しーんと静まる中、笑い声や楽しそうな会話が聞こえてくる、この独特な空気。店に音楽が流れていないことが成せる、この静謐感。嫁さんも気に入った様子で、だんだん声のトーンを覚え、大阪観光の話を始めた。
とどいた「きずし」は食べた中では大阪一。あっさりさっぱりした味付けが、よく脂の乗ったサバを上品にしてくれる。やはりここは最高だ。嫁さんの顔もほころぶ。「しゅうまい」は僕の大好物。ここのしゅうまいはよく見る,皮に包まれたしゅうまいではなく、なんとなく皮に包まれましたよ、という感じのしゅうまい。これが脂っこくて、ほくほくで旨い。一気にビールで流し込み、僕は「神亀」を注文。
グラスになみなみと注がれた「神亀」はなんと500円。なんば価格か・・・奇跡的大満足。
冷の神亀を始めて口にする嫁さんは、「ぐわぁー」と一声。言葉にできないとつぶやいた。最近旨い日本酒とそうでない日本酒の飲み分けができるようになったのか、うまい酒には格別の反応を見せる。だが嫁さんはまだビールを大事に飲みながら、「どて」とのマリアージュを楽しんでいる。甘辛く煮込まれた牛スジ中心の煮込みは、トロトロと解けていく。僕は思わず嫁さんのビールを一口盗み飲みした。
さて僕はいよいよ今日のメインイベントの時間を迎える。少しぶっきらぼうなお姉さんに「熱燗」と注文。そう、ここは僕が人生最高の燗酒を飲ませてもらった店。大げさに言えば、今の僕を形成する大元の店なのだ。すかさず珍しい自動燗付け器から注がれた「竹梅老」は、硝子の徳利に入れられて目の前に出てくる。ひさしぶり~。僕の顔は一瞬蕩け、そして次の瞬間緊張を迎える。嫁さんがお酌してくれた酒を、姿勢を正して口へ運ぶ。
これだこれだ。この樽の香織が醸し出す、なんとも言えない芳香。上品な日本酒が檜のコロンを上品に香らせ、僕を酔わせる。あーやっぱり日本一は日本一だ。頭が下がる。
嫁さんが真剣な表情で僕を覗き込む。空になったお猪口を渡し、なみなみと注いであげると、ものすごい笑顔でグビリ・・・ため息と共に、「なんだろうね、これは」と言葉をこぼした。そう、これはなんなのだ。日本酒は冷やで飲むのが主流になっているが、熱燗党の僕は強く意見したい。そりゃ冷やして飲む方が旨い日本酒があるのは認める。しかしなんでもかんでも冷やさなきゃなんて、つまんない考えだ。昔は酒を冷やして飲む方法なんてなかった。そんな昔から日本酒は存在する。時代劇の侍だって、燗酒飲んでんだからさ。チェーン店で出てくる、電子レンジで強制的に分子を壊して温められた熱燗を飲んで、熱燗なんてまずいと決め付けてしまうのは不幸だ。一度、丁寧に燗された熱燗を飲んで、その上で判断して欲しい。世の中の熱燗嫌い達の7割位は救えるのではないだろうか。あーなんとかしたいもんだ・・・僕の永遠の悩みか。
さて話は阿倍野の明治屋に戻そう。嫁さんは樽酒の燗は私には早すぎると、「美少年」をグラスでもらい、またまた破顔だ。しっかり日本酒党になったもんだ。
あての追加に取った「野菜のよせ揚げ」はたっぷり野菜が詰まったかき揚で、これは日本酒と抜群の愛称。さくさくとても旨い。食べたかった「くじら」が無かったので、代わりに(代わりなのか?)湯豆腐を頼み、カウンターの中にある、大きな鍋で、どんぶらこどんぶらこと暖められた豆腐が取り分けられる様子に、また日本はいいなーと感じながら、僕は空の徳利を掲げ、お替りをもらう。豆腐の上にかけられたとろろ昆布が、また一段と良い味を演出。しっかりしたお出汁が体に染みる。
お互い明治屋の空気に浸りながら酒を飲み、嫁さんの大阪城攻めの話と、僕が昼間に食べたうどん(葉隠れうどん。これ日本一)の話を格闘させ、素敵な時間は時間は過ぎて行った。
店を出た僕らは、大阪支社の後輩と合流する為、再度中津に戻る為地下鉄の駅に向かう。嫁さんはポツリとこぼす。「なんとなくあなたが探す物がわかった気がする」と。うれしい言葉だ。回り回ってここに嫁さんを連れてこれたことに感謝しつつ、夜本番を迎える大阪の街を僕らは歩いた。

誕生日には熱燗で

2007-02-26 15:10:49 | Weblog
11月15日は僕の誕生日。尊敬すべき坂本竜馬の生まれ日と同じであるのが僕の誇り。ちなみに竜馬は誕生日に刺客に襲われ命を落とす。僕も誕生日に天へ旅立つのか・・・そんなロマンを密かに持っているが、その日が来るのはまだまだ先であって欲しい。
さて誕生日祝いと言うことで、嫁さんと街に繰り出した。会社を早めに上がり、神楽坂で待ち合わせた。普通誕生日となれば、フレンチやイタリアンなどが主流か?はたまた寿司や中華、焼肉などが人気なのだろうが、今年の僕は居酒屋だ。しかもとびきりの居酒屋だ。
選んだ店はこの前紹介した、神楽坂「伊勢藤」だ。この前訪問して依頼、僕の頭の中から消えることの無い圧倒的な存在感。一度嫁さんを連れてこねばと思っていた。
さて人で賑わう神楽坂を登り、鳥茶屋の角を右に折れる。「この先、この先」と嫁さんを得意げに連れて、足早に角を曲がる。地下鉄の駅を降りてから、僕は何かに焦るかのように
している。それだけ早く伊勢藤に腰を下ろしたいのだ。
さて店の前に来ると、案の定嫁さんは二の足を踏む。その異空間・・・江戸の空気が漂う様相に怖気づいたか、僕に手を引かれて、ようやく江戸時代にタイムスリップだ。
店内に入るとカウンターはほぼ満席。やはりか・・・という感じでお座敷に通されるが、入ってみると座敷の居心地も悪くない。古きよき畳の臭いと、なんとも言えない安堵感が満たされ、ぼんやり燈る電球の灯りが落ち着く。座敷の席の中でも、僕がベスポジと思っていた所に偶然通してもらい、店の人に頼んで座敷とカウンターのある部屋を仕切る障子を開けてもらい、燗付け場が見えるようにしてもらった。これで嫁さんに日本一、二の燗付け場を見てもらえる。
さて熱燗を注文し、同時に嫁さんが楽しみにしていた「畳鰯」を注文した。僕らの燗酒がお燗されているのを眺めながら、それが届くのを待つ時間はもどかしくも幸せなひと時。静謐感に満たされた店内の雰囲気に少し飲まれながら、嫁さんはじっと目を燗場に注ぐ。丁寧に丁寧に暖められた酒が届き、お酌を終え、一言祝儀の言葉を交わして乾杯。ほどよい具合の熱燗が喉を落ち、体の芯がため息を漏らす。満足な顔が僕の目の前にある。やはりここは最高の部類に入る。
さて今日の1汁3菜を摘みながら、徐々に雰囲気に馴染んできた嫁さんと会話を楽しむ。もちろん小声でひそひそと。ここは独特の静けさが、客に大きな声を控えさせる。これもまた古い居酒屋の礼儀だ。「畳鰯」香ばしくて重みがあり、燗酒の肴にぴたりだ。酒が進むゆえ、熱燗のお替りと「冷奴」「めざし」を追加した。
カウンターで1人熱燗を楽しむ若い女性がいる。ここでは異質な存在か。なんとなく目がいく。話を聞いていると、静岡でバーテンダーをしているそうで、たまに東京に酒を楽しみに来るそうだ。つるつるの店主にこの辺のお勧めのバーを聞いている。勉強の為、寄り道する様子だ。
毎回毎回、丁寧に暖められる燗酒にうっとりする嫁さんは、いたくめざしが気に入った様子で、しきりにめざし→熱燗→めざしの繰り返しで、酒の味わいを楽しんでいる。僕は耳に入ってくる外の雨の音を聞きながら、酒をゆっくり楽しんでいる。外はどうやら土砂降りの雨らしく、通りの人通りも絶え、店にやって来る人も、出て行く人もなくなり、店全体がひとつの空気になった。僕はそんな中、雨の日に、雨の音を聞きながら飲む酒もいいもんだと1人ごち。外にも出れないなら酒でも飲むかの心境で、もう1本徳利を持ち上げること合計4回。二人で6合くらい飲んだ計算か。日本酒許容量を超えそうな嫁さんは、すでに布団があれば横になれる状態の様子。僕も熱燗と合わせていた「ドライ納豆」も無くなり、そろそろ腰を上げようかと考える。外の雨もやみ、さあ家路の時間か。
地下鉄の中で眠たそうな嫁さんに聞いた。「伊勢藤どうだった?」と。すると面白い答えが返ってきた。「どっしりしてていいね」と。そう、それが古い店の安定感だ。どんな客が来ても店の空気に馴染ませてしまう雰囲気。それは古い店にしかできない芸当だ。僕の中での良い居酒屋の第一条件は「古いこと」だが、そんなそこにしかない空気が吸いたくて、肌で感じたくて各地を巡り、暖簾を潜るのだ。嫁さんにはそれがよくわかった様子だ。褒めて使わそうと思い顔を見ると、既に夢の中・・・肩透かし・・・まあよしとしようか。
「誕生日には熱燗で」 僕がコピーライターなら、日本酒の宣伝にでも使いたい名文句。
日本人なら日本人らしく祝ってみるのも良いものですよ、皆様。

ハワイの日本酒事情

2007-02-23 15:53:42 | Weblog
さて、前回ハワイの居酒屋事情は紹介したが、今回はハワイの日本酒事情だ。
ハワイ、それもワイキキにはABCマートという非常にハイクオリティーなコンビニがある。観光客がお土産を買うのにも適しているし、水やお菓子などの日常品の買い物、地元の人の買い物にも多く利用されている。予断だが僕はABCマートのホットドックが大好きだ。保温器の中に、いつもアツアツで置かれているホットドックは、シルバーの紙に包まれ、18cmくらいのパンに、1本ソーセージが挟まれているだけなのだが、これに備え付けのオニオンのみじん切りと、ピクルスのみじん切りをこれでもかと乗せ、ケチャップとマスタードを塗りつけ、歩きながら頬張るのが、僕のハワイ流買い食いだ。これで99セント。110円くらいなもんだから素晴らしい。
話がずれたがABCマートは日本人向け商品も多く、キリンやサッポロ(日本では見かけない缶)のビールが売られているし、UCCの缶コーヒー(キングサイズ)や、ポカリスエットも売られている。そしてここにはもちろん日本酒もあった。銘柄は白鶴と月桂冠。それと見たことも無い日本酒の吟醸が冷で売っており、価格は600円前後と割高である。
これに合わせるつまみが見つからないため、日本酒を買うことは無かったが、さてこれはここで売れるのであろうか?
日本人向けの飲食店が多いハワイ。もちろん店の人間が仕入れをするところがあるであろうと、マルカイマーケットという日本人向けスーパーに出かかけてみた。ワードセンター近くにあるこのマーケットは、店の半分が野菜、肉、魚が売られる生鮮食料品コーナーで、ここでは多種多彩なお惣菜が売られており、マグロのサラダなど、とてもうまそうだ。そして店の半分は、そのほとんどが日本食材のコーナーなのである。見てびっくりだが、豆腐や海苔、お茶やジュースはもちろん。乾燥わかめ、ひじき、ごま、酢や醤油などの調味料、ちらし寿司の寿司太郎、ボンカレーにカレーに王子様・・・まるで日本のスーパーと同じだ。若干パッケージは異なるものの、ほとんどの食材が揃うと言っても過言ではない。
僕らは驚きの表情で店の奥へ足を進めるが、いよいよ僕の目当て、お酒のコーナーに足を踏み入れた。
これがその驚愕の棚なのだが、見よ!この品揃え!!うちの近所の酒屋よりすごいぞ。最近は焼酎ブームやら、安い缶チューハイ、発泡酒に押され、日本酒の勢いが弱まり、俄然売り場も縮小傾向な中、ここは素晴らしいの一声につきる!!
まあ北海道から福岡まで、東西南北各地の銘酒を取り揃えた姿は圧巻だ。
長野の真澄などは、醸造から吟醸まで、なんと5種類ほど置いてあるし、「あらばしり」並んでいたり、「久保田の碧寿」があったり・・・
数えてみたが、なんと日本酒52種類が揃っていた。いや~買う人がいるからこその品揃えなのだろうが、はっきり言って驚いた。僕も飲んでみたい酒がいくつもあり、思わず手が伸びるのを嫁から止められること数回。しかしここまで日本文化が染み付いている外国も面白いもんだ。
さて最後になるが、ハワイから帰国するJALの中、僕は機内食に合わせて日本酒を注文した。出てきたお酒は「白鶴」の醸造タイプ。小さなガラス徳利に入り、白鶴のロゴ入りのプラスチック製のお猪口がついてきた。久しぶりの日本酒だ。ゴマダレのサラダに合わせながらチビリチビリとやりつつ、僕は少しずつ日本に近づくのであった。
(ちなみに空の上で味わう日本酒・・・・・どうと言うこともない)

ハワイの居酒屋事情

2007-02-20 08:56:49 | Weblog
新婚旅行でハワイに行ってきました。
出国前に成田空港内の蕎麦屋で、最後の日本酒(大関・熱燗)をすすり、日本にしばしの別れ。
JALに乗り込み、ウイスキーを飲んで眠りにつけば、そこはハワイ。
ハワイで何をしたかを語るブログではないので、詳細は割愛するが、でかい肉を食べたり、サンセットクルーズで夕焼け見てたらクジラが潮を吹いたり、この木なんの木を見に出かけたり、水族館で夢中になったり、市バスに乗ってフリマに出かけたり、ホテルのプールで泳いだり、フラダンスのショー見ながら食事してたらいつのまにかステージに連れて行かれ、外人の前で踊らされたり、妻の買い物のお供をしたり。それはまあ楽しい旅行でした。
さて居酒屋研究家としては、日本人観光客が多いハワイの居酒屋事情が気になるところ。さっそくワイキキを探索。しかし今回は日本食を取らない事を前提の旅でありましたので、居酒屋には入店しておりません。
しかしここワイキキは日本料理の店が多いこと多いこと。寿司屋、そば屋、ラーメン屋、鉄板焼にしゃぶしゃぶと、日本にいるのと代わり映えしない。挙句の果てには牛角まであり、日本人が並んでいる姿は東京と同じ。
そんな中、純粋な居酒屋を探すものの、なかなかその様な店は見当たらず。しかし発見「居酒屋踊り子」。キングスタウン内にあった踊り子は、外見はりっぱな居酒屋。この通り暖簾もあり!しかしメニューはなんでもござれの状態。入ろうかなと迷いましたが、ロブスターやらリブステーキやらの品揃えに、尻尾を巻いた始末。
それにしてもこういう店が日本人観光客のみならず、現地の人にもうけているのが不思議。間違った日本の居酒屋文化が外国に伝わる悲しさを覚え、ワイキキをぶらぶらしたとさ。そのほかにも「将軍」「たこ」「菊」などなど。居酒屋の暖簾や提灯を数多く発見しました。
さて次回はハワイの日本酒事情をお知らせ致します。

営業 新規担当地域

2007-02-05 17:46:34 | Weblog
10月31日 
最近新たに営業エリアとして増やされた新宿区。新しいエリアが加わると胸がはずもものだが、新宿と言えばなおさらだ。いわずと知れた日本最大の繁華街。しかし僕には縁が薄い町だ。買い物で来るくらいしか用事が無い。歌舞伎町など外国同然だ。
さて新宿の東京都庁近くに大学病院があり、そこも新しい担当病院だ。その大学病院に夜出かけ、8時くらいに仕事を切り上げ、そのまま家に直帰することにした。というより最初からそのつもりでここに来ている僕。
大学から新宿駅までぶらぶら歩いて約15分。新宿新都心の高層ビル街を歩きながら、高層ビルを見上げふらふら歩き、新宿西口の繁華街に出た。新宿西口駅の前、かの有名な「カメラはヨドバシカメラ」のあたりだ。この辺は大型の電気屋やゲームセンター。またサラリーマン向けの飲み屋街で形成されており、なんとも言えない雰囲気と活気がある。
その中を、1人で飲めそうな店を探しながら歩いていると、立ち飲み屋が2軒並ぶのを発見した。よし、どちらにしようかと店内を眺め、人の入りの多いほうに瞬間的になだれ込んだ。
店内はコノ字型の立ち飲みカウンターがあり、それを囲む店の内壁にもカウンターが誂えてある。コノ字カウンターの角に場所を取り、カウンターの中にある調理場に向かって生ビールを注文した。調理場を見るとおでん鍋におでんがぎっしり詰まり、焼き場ではホルモン系中心の肉達が炭火で炙られている。客の入りは4分程度だが、若いOL二人組みや、先輩後輩のサラリーマンなどで賑わい、いい感じだ。
さて出てきた生ビールで喉を潤し、お品書きに目を走らせる。15種類くらいの内臓が焼いてもらえる様子であり、その中からレバーと豚タン、コブクロを注文し、おでんの厚揚げも追加した。目の前で自分の注文した串が焼かれるのを見ながら、それが出てくるタイミングはかり、酒の注文を組み立てる。1人飲みの時の数少ない趣向のひとつだ。
さてレバーがレアーに焼きあがるタイミングを見計らい、僕は「長龍」というお酒を注文した。レバーと同時に出された「長龍」は冷えたワンカップ。思わず冷蔵庫を、見ると日本酒は全てワンカップなのだ。これには驚き。なんと30種類近くのワンカップがずらりと並び、それはそれで圧巻だ。色取り取りの配色が美しくもある。
さてふたを開けてグビリ。やや辛口の純米酒。できれば燗で頂きたいが、今日やよしとしよう。ワンカップの良いところは値段が図りやすい所。量に嘘が無い所。薀蓄が全てラベルに書かれており、それを見ながら楽しめる所。逆に悪い所は、むなしい所だ。「長龍」はお品書きでは奈良の酒となっていたが、良くよく読むと灘の酒。どうりで辛い。
熱々とろとろのレバーを頬張り、厚揚げにカラシを効かせて口に運び、それを冷えた日本酒で胃袋に追いやる。立ち飲みはどこか野性的な食べ方、飲み方になる。グビリグビリと酒が進む。さてもう1杯。「まんさくのはな」「南部美人」「麒麟山」などの名前の通った酒もあるが、「決戦関が原」なる血の滾る酒もある。その中から今度はしっとり酒を楽しもうかと「銀盤・純米大吟醸」を注文した。
届いた「銀盤」はいわずと知れた富山の銘酒。一口グビリとやり、ラベルに目を落とすと、そこには興味深い記述が。この大吟醸に使う米は全て岡山県産で、浅越管理の小田さん、小野さん、坪井さんが責任を持って管理し醸造したとか。なんだか良くわからんが、ワンカップには面白い情報ありだ。
最近ワンカップを多数揃える立ち飲み屋が増えている。新宿の違う所にも僕はもう1軒知っているが、これはこれで悪くない。お土産にしたくなるようなかわいい絵の入ったグラスもあるし、女性に好まれるのも頷ける。今度お品書きを頼りに、北から南まで各地の地酒をワンカップで飲み比べる旅をしてみようか。もちろん立ち飲み屋の中でだが。
さて、お腹もだいぶ膨れたし、お酒もほどよく酔いを醸し出す。さて男は綺麗に切り上げようか。勘定を済ませて店を出る。今日はまだ10月。コートもなにも要らない気候。早く冬が来ないかな、と思いながら歩き始める。僕は冬が好きだ。寒いのは苦手だが暑いよりは何倍もましだ。なんといっても今年の冬は熱燗を楽しもう。寒い道を歩き、凍えながら暖簾を潜ると、暖かい空気と熱い燗酒が待っている。そんな出会いを思い、駅への足取りを早めた。

たまには失敗もある

2007-01-24 10:49:24 | Weblog
10月20日 
会社帰りに、一緒に駅まで歩く後輩と一杯やって帰ろうかと相成った。さて店選びだが、いつも行くなじみの店は生憎満席。後ろ髪引かれながら次を探すが、この本郷には不動の2番バッター的な店が不在だ。とぼとぼ歩くうちに、ふと思い当たる所を思いだし、駅へ向かう道から左の細道に折れた。紺色の暖簾と赤提灯、大衆的な飲み屋の匂いがするが、僕の嗅覚では店のレベルが計れない。暖簾の隙間から店内を覗き、おやじの背中がたくさん見える事を確認して、いざ店内へ入った。
店内は右に調理場があり、その前がカウンター。中央に4人がけのテーブルが5個あり、壁際に小上がりがあり、客の入りは6部程度。金曜日の本郷は意外と酔客が少ない。
カウンターに陣取り、まずはビールを注文。出されたサッポロラガーを注ぎあい、ややあって乾杯だ。サッポロラガーは一部の居酒屋でしかお目にかかれない代物。特に個性が光るわけではないが、さっぱりして旨い。
さて後輩と話を交わしながらもお品書きに目が走る。刺身も豊富だが、いまいちこの店で旨い刺身が食べれるという直感が湧かない。その直感を信じ、無難に「にこみ」「さつま揚げ」を注文した。お品書きには串焼き、冷奴、塩辛、トマト、もろきゅうなど、定番メニューが並ぶ。特に光る役者はいない様子だ。
特に代わり映えもしない、悪く言うと僕の琴線には響かない店なのだが、店は常連で賑わう。ご年配の方から若い方まで、みなここに居心地を求めてきているのがわかる。僕にはわからないこの店の良さがきっとあるのだろう。それにしても馴染みの店の、いつもの席で、いつもの仲間と、いつもの料理で酒を飲む人たちの安堵に包まれた表情はいいものだ。こういう顔や空気は名古屋の大甚でも、大阪の明治屋でも、大塚の江戸一でも、神田のみますやでも、そしてここでも変わらない。
「にこみ」はさっぱり味噌仕立てで中の上というところ。七味をピリリと効かせるとビールと合う。「さつま揚げ」は自家製の様子で、形が不揃いな物が4つほど熱々で届いた。これはビールとも合うが、日本酒と合わせたい。さっそく熱燗を頼む僕。
出された熱燗は機械の燗付け機を通ったもので、丁寧さはないが、この雰囲気らしくて特に文句もない。銘柄は灘の酒「富久娘」の上撰だ。辛口のやや熱めの燗が体と心を緩めてくれる。
ビール党の後輩をよそに、追加で「たこ刺身」と、目の前でおばさんが炒っている「銀杏」を注文した。このころから店は賑わいを増し、ボトルの焼酎が行き交う。ようやく金曜日の夜がスタートしたのだろうか?さっきまで程よく静だった店が、俄然大衆酒場と化してきた。これは良い雰囲気だ。
「たこ刺身」ははっきり言って最低レベル。まだ身の中心がしゃりっと・・・凍っている。たこを冷凍するなんざいったいどういうつもりかね??やはり刺身に期待すべからず、という直感は正しかった。
今年初物の「銀杏」は、ぷーんと香る銀杏臭がたまらなく香ばしい。身の中もねっとり熱々で、これはやはり秋の味覚だ。文句なしに旨く、酒に合う。今夜の大将格だ。
富久娘の熱燗が2本ほど空になったところで、今夜は切り上げることにした。店を出るときの店内の活気はたいしたもので、本郷にこんな店があったのかと思い知らされる。東京や各地の居酒屋を巡る僕の趣味。まだまだ足元を固めねば・・・勝って兜の尾をしめるか?
何に勝ったというのやら・・・まあそんなこんなでまた少し飲み屋の深みを知らされる夜となったわけでが、最近少しずつ備わってきた食に対する直感。さあ、僕の触手は次はどこへ伸びるのやら。

イザケンの秋

2007-01-17 11:32:22 | Weblog
10月18日 みますや
さて今夜は例の居酒屋研究会の3回目会合だ。例の相棒と淡路町で落ち合ったのが8時過ぎ。秋の東京はすでに夜の空気で肌寒い。合流した我らは早速今日の目的地「みますや」へ向かう。
「みますや」には以前仲の良い協力会社の方と行った事があり、料理の質、酒、店の雰囲気ともに素晴らしかった。その話を羨ましがる相棒を、今夜はここへ連れてきた。
さて店はほぼ満員だが、座敷の1画を勧めてもらい着席。上着を脱ぎつつビールを1本注文した。日露戦争に戦勝した年に創業と言うから、創業101年・・・くらいか。キング曰く、飲み屋として創業した店としては、現存する東京の居酒屋で一番古いらしい。「鍵屋」は元酒屋だし、「おおはし」は元肉屋。威厳を感じつつサッポロビールで乾杯だ。
相棒も店の古さ(美しい古さ)と店内の活気にご満悦の様子で顔がにやけ気味だが、めざとくしっかりと店内に貼られた品書きを物色している。
肴の注文は奴に任せるとして、僕は緊張を溶きながらビールを流し込む。やはりビールは瓶に限る。相棒は「まぐろ刺身」「どぜう丸煮」「名物こはだ」「つぶ貝」を注文。やつの目利きはかなり信用ができる。
研究会も3回目となり、会を重ねるごとに内容充実。略して「イザケン」(居酒屋研究会)は順調にレベルを上げているのだ。
さて「まぐろ刺身」は値段にしては上等。さっぱりしてて、酸味もあって旨い。ここで日本酒に切り替えた我らは、最初の1杯は好きなものをと言う事で、相棒は山形「出羽桜吟醸」僕は地元の酒が飲みたくなったが福岡の酒がなく、仕方なく隣の佐賀県「七田」を注文。これを名物「こはだ」に合わせると唸る以外に表現がない。良く冷えた吟醸酒が、こはだの油と酢の酸味を上品に洗い流してくれる。お互いの酒を飲み合いし、互いの好みを再確認。僕は米の味が甘く香る酒が好きだ。例えば広島の賀茂鶴(名古屋・大甚で飲む)のような、どちらかと言うと甘めの酒が最近好み。相棒はきりりとし、それでいて辛すぎないものが好きな様子だ。
「どぜう丸煮」は小骨も気にならず、臭みも皆無で旨い。この前着た時には感じなかった良さを感じる。これもまた酒と合うが、ピリリと利かせた七味がもう一口ビールを要求する。
「つぶ貝」は予想を反する大きさで、グリグリと歯ごたえがあり美味。殻から出すのが難しいのがつぶ貝の難点だが、まあ我慢我慢。
来月に迫る僕の結婚式の際に、電報を読んでもらう役を相棒に頼んであるので、それについての話や、そこから発展して相棒の結婚観に話は及ぶ。相棒にはもう長く付き合う彼女がいて、その小は僕の妹分であり、元はといえば妹分経由で知り合ったのが今目の前にいる彼なのである。彼とは僕の嫁も仲が良く、おそらく生涯の付き合いになる男だろう。
ここら辺で熱燗(おそらく白鷹?)に変え、結婚話に火がついて酒が加速度に進む。お互い違う人間だけに、いろんな考えがあり、話は時にぶつかりもするが、お互いを理解した上で話ができる良い関係だ。それにしても酒が進む。
追加で「こはだ」をお替りし、「コロッケ」をひとつ取る。がやがや騒がしく、にぎやかな笑い声の耐えない店の中、僕らも更に話は沸き、酒が酒を呼ぶ。
熱々のコロッケにたっぷりソースをかけて頬張りながら酒を飲み、付け合せのキャベツを半ば取り合うかのように奪い合い、またしてもキリリとしたこはだに舌鼓を打ちながら酒を飲み、よく食べ、よく語り、まあよく飲むもんだ。見る見るうちに徳利は軽くなり、酔いが回っていく。
そこから先は残念ながら全ての記憶があるわけではない。僕としたことが店を楽しみ、酒を楽しみながらも、自分の限界点に近いところまで飲みすぎた様子だ。めっきり酒に弱くなったもんだ・・・悲しいかな。
ある程度その後も飲み、店のお姉さんに僕の愛蔵書(「東京居酒屋の四季」Byキングカズ)の「みますや」のページに店の判子を押してもらい、ご満悦で店を出た。いやー満腹満腹。通行手形も頂いて、さあ江戸の関所を越えて、いざ我が家のある埼玉へ。
1時間後目覚めた僕は、家のある駅をふたつほど乗り過ごし、あわてて折り返しの電車に乗り換えて、無事家に着いた。
いわゆる神田から離れた神田司町。「みますや」のあるこの辺りには、小さく古い良さそうな店がたくさんある。少し歩けば、まだ訪問したことは無いが「鶴八」。そして秋葉原の「赤津加」にも足を伸ばせるし、神田駅周辺は名飲み屋の宝庫だ。会社から地下鉄で5分程度。僕の射程距離には古くて良い居酒屋がたくさんある。文京区本郷が僕の会社がある街。本郷までは江戸の内と言われるだけに、古い商店や料理屋が多い。次回は会社の近場を発掘してみよう。