チェコ・フィルハーモニー管弦楽団日本公演(2019)
[指揮]セミヨン・ビシュコフ
[ヴァイオリン]樫本大進
スメタナ:交響詩「わが祖国」より「ヴルタヴァ(モルダウ)」
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
ソリスト アンコール曲
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 「悲愴」 op.74
日本人の心に響くしみじみとした音色を備えているチェコ・フィルが、日本人が大好きなドヴォルザーク、スメタナに加え、チャイコフスキーの名曲を携えて来日しました。指揮者は2018年のシーズンから首席指揮者に就任したロシア出身のセミヨン・ビシュコフさん。
1990年代はパリ管弦楽団、2000年代はケルン放送交響楽団の首席を務めた世界的指揮者です。2015年から「チャイコフスキープロジェクト」と銘打って、交響曲とピアノ協奏曲全曲と管弦楽曲数曲を演奏、録音していて今年完成したところです。
今回の来日は全8公演で、プログラムはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(ソリスト:樫本大進)、交響曲第5、6番、マンフレッド交響曲(NHK音楽祭)、スメタナの「わが祖国」(10/28 チェコ建国記念日に東京、翌日大分)、ドヴォルザークの「新世界より」。
ここ数回の来日公演と同じく名曲コンサートの装いですがその中心がチャイコフスキーなのがいつもと違うところです。
この日会場は縦横に補助席が用意される超満員でした。
ビシュコフさんは数年前から首席客演指揮者に就任していたので、オーケストラとの息はぴったりのようで、ステージ上で見せる楽団員とのやり取りも、自然な穏やかさに包まれていて、関係がとても良いことが分かりました。
ヴルタヴァとピアノ協奏曲でのオーケストラの配置は、チェロが右手前、コントラバス8人はステージ後ろで、打楽器はその右。
第一ヴァイオリン16人の後方にはかつての名コンサートマスターのコトゥメルさんが、チェロの後方には同じくホストさんが凄い存在感を発して大きな音で演奏されていて(チェコ・フィルではチェロ奏者もコンサートマスターを務めることがよくある)、懐かしくも頼もしい雰囲気に、演奏前から嬉しい気分になりました。
「ヴルタヴァ」
ロシア出身のビシュコフさん指揮によるチェコの名曲はチェコ・フィルのいつもの響きとテンポで非常に安定感があり、いつも以上にオーケストラが歌っているように聴こえました。
「ヴァイオリン協奏曲」
ベルリン・フィルのコンサートマスターを務める樫本さんの演奏は本当に上品でありながら、地にがっしりと足をつけた安定感があって、瞬間的に心を引き込まれる。会場全体もこの日でいちばん集中力が高くなっていて、ソロ演奏の音がホールに響き渡り消えていく様子は、息を飲むというか、息をするのも忘れかける程、神々しさを感じました。
ビシュコフさんとチェコ・フィルの演奏はヴルタヴァと同じく安定感と同時に歌を感じさせました。
「悲愴」
第1ヴァイオリンが左、第2ヴァイオリンが右の対向配置になり、この日なんとなく感じていた歌が、よりしっかりと立体的に伝わって来ました。演奏は極めてオーソドックスだったと思うのですが、ビシュコフさんの発するロシア風の歌わせ方が、チェコ・フィル伝統の瑞々しくもしみじみ響く弦楽器の奏者に細やかに伝わり、音となり、大音量の合奏部でもうるさくならず、新たな発見を与えてくれるようでした。
大迫力で凄い完成度だった第3楽章終了後残念ながら拍手が少々起こってしまいましたが緊張感が緩むことはなく、ビシュコフさんが「死への抵抗」と説明する第4楽章は左右別れたヴァイオリンから最後部コントラバスまで、歌が響き、うねり、感動的なクライマックスを作り上げました。チェロ、コントラバスの音が静かにホールの空気に消えた後、ビシュコフさんが姿勢を元に戻すまでの約10秒、本当に心地よい静粛、無音の時間が続き、この日の感動をより深くしたと思います。
この雰囲気の中ではアンコール曲は不要。楽団員さんたちのスマートな身のこなしも印象に残るコンサートでした。
(2019.10.27 大阪 ザ・シンフォニーホール)
[指揮]セミヨン・ビシュコフ
[ヴァイオリン]樫本大進
スメタナ:交響詩「わが祖国」より「ヴルタヴァ(モルダウ)」
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
ソリスト アンコール曲
チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 「悲愴」 op.74
日本人の心に響くしみじみとした音色を備えているチェコ・フィルが、日本人が大好きなドヴォルザーク、スメタナに加え、チャイコフスキーの名曲を携えて来日しました。指揮者は2018年のシーズンから首席指揮者に就任したロシア出身のセミヨン・ビシュコフさん。
1990年代はパリ管弦楽団、2000年代はケルン放送交響楽団の首席を務めた世界的指揮者です。2015年から「チャイコフスキープロジェクト」と銘打って、交響曲とピアノ協奏曲全曲と管弦楽曲数曲を演奏、録音していて今年完成したところです。
今回の来日は全8公演で、プログラムはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(ソリスト:樫本大進)、交響曲第5、6番、マンフレッド交響曲(NHK音楽祭)、スメタナの「わが祖国」(10/28 チェコ建国記念日に東京、翌日大分)、ドヴォルザークの「新世界より」。
ここ数回の来日公演と同じく名曲コンサートの装いですがその中心がチャイコフスキーなのがいつもと違うところです。
この日会場は縦横に補助席が用意される超満員でした。
ビシュコフさんは数年前から首席客演指揮者に就任していたので、オーケストラとの息はぴったりのようで、ステージ上で見せる楽団員とのやり取りも、自然な穏やかさに包まれていて、関係がとても良いことが分かりました。
ヴルタヴァとピアノ協奏曲でのオーケストラの配置は、チェロが右手前、コントラバス8人はステージ後ろで、打楽器はその右。
第一ヴァイオリン16人の後方にはかつての名コンサートマスターのコトゥメルさんが、チェロの後方には同じくホストさんが凄い存在感を発して大きな音で演奏されていて(チェコ・フィルではチェロ奏者もコンサートマスターを務めることがよくある)、懐かしくも頼もしい雰囲気に、演奏前から嬉しい気分になりました。
「ヴルタヴァ」
ロシア出身のビシュコフさん指揮によるチェコの名曲はチェコ・フィルのいつもの響きとテンポで非常に安定感があり、いつも以上にオーケストラが歌っているように聴こえました。
「ヴァイオリン協奏曲」
ベルリン・フィルのコンサートマスターを務める樫本さんの演奏は本当に上品でありながら、地にがっしりと足をつけた安定感があって、瞬間的に心を引き込まれる。会場全体もこの日でいちばん集中力が高くなっていて、ソロ演奏の音がホールに響き渡り消えていく様子は、息を飲むというか、息をするのも忘れかける程、神々しさを感じました。
ビシュコフさんとチェコ・フィルの演奏はヴルタヴァと同じく安定感と同時に歌を感じさせました。
「悲愴」
第1ヴァイオリンが左、第2ヴァイオリンが右の対向配置になり、この日なんとなく感じていた歌が、よりしっかりと立体的に伝わって来ました。演奏は極めてオーソドックスだったと思うのですが、ビシュコフさんの発するロシア風の歌わせ方が、チェコ・フィル伝統の瑞々しくもしみじみ響く弦楽器の奏者に細やかに伝わり、音となり、大音量の合奏部でもうるさくならず、新たな発見を与えてくれるようでした。
大迫力で凄い完成度だった第3楽章終了後残念ながら拍手が少々起こってしまいましたが緊張感が緩むことはなく、ビシュコフさんが「死への抵抗」と説明する第4楽章は左右別れたヴァイオリンから最後部コントラバスまで、歌が響き、うねり、感動的なクライマックスを作り上げました。チェロ、コントラバスの音が静かにホールの空気に消えた後、ビシュコフさんが姿勢を元に戻すまでの約10秒、本当に心地よい静粛、無音の時間が続き、この日の感動をより深くしたと思います。
この雰囲気の中ではアンコール曲は不要。楽団員さんたちのスマートな身のこなしも印象に残るコンサートでした。
(2019.10.27 大阪 ザ・シンフォニーホール)