サラリーマン、単身赴任で寺社めぐり。

単身赴任に彩りを。。
寺社に行き尽くして素敵な仏像たちと出会いつつ、食・酒を堪能する旅に出てみました。

【冬】 兵庫・加古川 「太子ゆかりの地へ」

2017年03月12日 | 
大阪駅からJR東海道線(神戸線)に乗り込む。
この線、西は最大「播州赤穂」まで、東は最大「敦賀」まで直通で行ける壮大な路線である。

本日の目的地は、大阪から約五十分の加古川駅にて下車、そこから徒歩約二十五分のところ。
駅から歩きごたえのある距離であるが、晴天にして気温も高め、なかなか気持ちがいい。


天台宗刀田山(とたさん)・鶴林寺。
崇徳天皇二年(五八九)、当時の廃仏派、物部氏の弾圧を怖れ、播磨の地に身を隠していた恵便(えべん)法師のために、聖徳太子が建立した(当初の名は四天王寺聖霊院)とされるが、これは伝承で、詳細は不明とのこと。
ただ、すでに山門の空気から漂う風格からしても、
「重量級の…」
寺院であることは間違いない。


<山門と仁王像>




入山料五百円を支払い、中に足を踏み入れると、見事な伽藍が広がっている。
入ってすぐ左手に見えてくる三重塔(室町、江戸時代に大改修・県指定文化財)は、比較的新しめのものであるが、真正面に構える本堂(室町・国宝)は巨大にして、入母屋造の屋根は、鳥の翼のごとく両端が反り返った形をしている。
この建屋、和様と禅宗様を組み合わせた折衷様建築の代表作ということであるが、そのような知識を持ち合わせていないわたしが見ても、一目でその美しさは理解できる。


<三重塔>

<本堂>



そして、三重塔手前の行者堂(室町・重文)、本堂左手の常行堂(平安・重文)、右手の鐘楼(室町・重文)など、そうそうたるものであるが、秀逸なのは太子堂(平安・国宝)だ。宝形造(四角錘形)ヒノキ皮葺屋の屋根は浅い傾斜を描き、観る者を惹きつけてやまない。

<行者堂>


<常行堂>

<鐘楼>

<太子堂>





また、新薬師堂(江戸)については、出入り自由、本堂の薬師如来が秘仏(六十年に一度の開帳、次回は平成六十九年!!)のため、拝観自由の像を安置したとのこと。

<新薬師堂>



以上、建屋をじっくり観るだけでも、かなりの時間を要するが、この辺で打ち止めとし、宝物館へ移る。
この館の主人公は、なんといっても
〔聖観音立像〕(飛鳥後期=白鳳・重文)
であろう。
像高は八十三センチ、やや細身で腰を少し左にひねった、流れるような立ち姿、優雅な冠をかぶり、まことに美しい。
法隆寺の夢違観音立像になんとなく似ている。
この像、その昔、盗人が溶かして銅を得ようとしたが、像が「アイタタ」と叫んだため、驚き改心して像を返したとの逸話を持ち、よって「アイタタ観音」と呼ばれているそうな。
そして、そんな逸話がピッタリくる
「愛らしい…」
観音像なのである。

兵庫県と言えば神戸、神戸と言えば洒落街という短絡的なイメージしかなかったが、ちょっと足を延ばしただけで、これだけ重厚感のある寺院と出会うことができる。
寺社巡りの選択エリアが増え、嬉しい悲鳴をあげるばかりである。

御朱印は〔醫王殿〕
(醫王とは「医師が病人を救うがごとく、仏法により人々の悩みを癒す」仏・菩薩のこと)



ありがたく頂戴する。

【冬】 兵庫・加古川 「太子ゆかりの地へ」完