現代中国考察

現代の中国に独自の考察を加える。(エキサイトからの引っ越しです)

それぞれの事情 その3 ~ロシアの場合~

2015-06-27 22:14:58 | 日記
ロシアを語る際に忘れてはならないことが数点あります。

まず、横長の国であること、そのため東端と西端の時差が10時間あります。

次に世界最大の国土面積を誇っていますが、人口は1.4億人、日本より少し多い程度、中国の10分の1に過ぎません。

その人口も所謂「欧州ロシア」に偏っていて、「アジアロシア」の人口密度は希薄です。

しかもその国土の相当部分が使い物にならず、仮に価値が見い出せたとしても、それを活用する術をロシア国民は知りません。

こんな国を統治するには余程の政治的腕力が必要なのは言うまでも無く、加えてアジアと欧州に跨っているにもかかわらず、欧州諸国からは色眼鏡で見られ、アジアには嫌われています。


特徴的なのは、軍管区が実質的な行政単位にある一方、政治の実権を握ってきたのは新興財閥、エリツィン時代に国有資産をただ同然で払い下げて貰い、それで大儲けしている成金連中です。

その新興財閥を一掃し、軍管区を己の支配下に置こうとしているのがプーチン大統領です。


何処の国でも課題は、財閥が官僚と軍部が結託して国家と国土を食い物にしていること、例えば韓国では、財閥と官僚と労組が癒着し、それらの受け皿として公企業(公益法人や特殊法人)が多数存在し、更には財閥から官僚機構に「天上がり」する例が絶えません。

或いは中国では中国共産党が中核となり、地方党本部(=地方党幹部)が行政(地方政府)のみならず国有企業や銀行を牛耳っています。

ロシアでは新興財閥を中心に、行政も軍も官僚も回っていますから、これらを仕留めるには相当な力量が必要となります。

しかもこの「既得権益複合体」は国境を越えて手を結び、例えば中国の共産党地方本部は韓国系財閥やロシア新興財閥と昵懇の間柄にあります。


要は国家を食い物にしてでも我が世の春を謳歌する連中を認めるかどうかと言うことで、プーチン大統領はそれを容認しない立場にいます。

ところが、その志を共有出来る人物が国内外を問わず乏しく、ましてや国家単位で腹を割って話し合える存在はほぼ皆無です。

ところが東の果てにその条件を満たす人物と国がありました、森喜朗元総理大臣と日本国です。

プーチン大統領は森元総理を無条件に信頼しています、胡錦濤「長老」が福田康夫元総理を遇する様に。

そして日本が信用に足る国であることも理解していますが、手を結ぶには幾つもの障害が待ち構えているのも事実です。

国内的要因に限って言えば、未だ全ての軍管区を掌握し切れていないこと、具体的には北方領土を管轄する極東軍管区が新興財閥側の手にあります。

ウラジオストックを経済特区にするとの発言は信用しても差し支えありませんが、北方領土を経済特区にしたらと言う提案は反プーチン勢力側の発言です。

ウラジオストックはロシア領ですから、経済特区にするかどうかはロシアの裁量ですが、北方領土は日本固有の領土ですから、後者の発言は内政干渉であり、日本側に不快感を与える発言をプーチン大統領が「側近」に許す筈がありません。


プーチン大統領が日本との交渉に乗り出すには、新興財閥を逼塞させ軍管区を掌握する必要がありますが、その期限は今秋、日本の延長国会閉幕までに仕上げねばならない課題です。

この秋以降の日本を巡る政局からは目が離せません。

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