「金利を上げる」と言うと、反対する人が結構多い。
昭和の高金利の最後を飾るバブル経験者としては、不思議な感じがする。
昭和の時代は、国債や養老保険や定期預金など元本保証の高金利商品が、いくらでもあった。
さらに、不動産は、買えば必ず儲かった。
株式の運用だって、あまりリスクをとらずに資産を増やすことができたくらいだ。
その上、リタイア後だって、現役時代に蓄えた金融資産と退職金などの運用と年金で、安泰な老後生活を送れた。
古き良き時代。
ところが、現在のように、経済が停滞する中で、ゼロ金利が続く日本では、普通の人が資産運用で利益をあげるのは至難の業となった。
だから、老後だって働き続けるしかないというのに、現役世代は、ゼロ金利が大好き。
確かに、仕事があって、コンスタントに収入がある現役世代にとっては、ゼロ金利は、都合がよいのかもしれない。
人生最大の買物の住宅だって、ローンの負担が少ないから、高額物件だって手が届く。
だから、タワーマンションが売れているのだろう。
金融リテラシーが高い現役世代なら、資金を低い金利で借り入れて、投資に回せば、利益を得ることだって可能。
しかし、そんな現役世代だって、リタイアして、稼ぎが無くなり、年金や預金頼みになると、ゼロ金利では、年金の不足分を預金から取り崩すだけの生活になってしまう。
リタイアした高齢者には、簡単に金を貸してくれないから、自己資金が無ければ、投資なんて難しい。
金融リテラシーではなく、元手の問題。
だから、元手を増やすために、老後も働き続けるしかなくなる。
昔は、働かないと退屈過ぎてボケるなどと言う人が多かった。
退職年齢が早過ぎたせいだろう。
しかし、現在の高齢者には、そもそも仕事を選り好みできる余裕などない。
仕事があったとしても、賃金は安く労働環境は厳しい。
もし、65歳以上の高齢者にも、妥当な賃金で、現役のときのように普通に働ける仕事があれば、年金の繰り下げ受給者の割合が1%台などと言うことはないはずだ。
「高齢者は、好きで働いているのだから、働けるだけで満足だろう」などと勝手に判断され、劣悪な環境で、我慢を強いられて働くようなことが、あってはならない。
蓄えのない高齢者が、いつまでも低賃金、劣悪環境で働き続け、心身を病むなどということが罷り通るこの国。
このままでは、高齢労働者が、かえって、労働環境の破壊者となってしまう。
想像するだけでもぞっとするが、それが現実となりつつある。