驚きと感動!博物館ガイド&レヴュー(企画展と特別展篇)

国内の博物館の特別展と企画展のレビュー

江戸東京博物館 「ペリー&ハリス展」

2008-05-27 22:44:21 | 企画展・特別展レビュー
 江戸東京博物館で特別展「ペリー&ハリス」が開催されています。黒船を率いた米海軍提督ペリーと初代駐日米国総領事ハリスが、日本の新しい時代の扉をノックした時の様子を、多様な資料を用いながら紹介しています。

 展示されている資料に、ペリー艦隊が最初に浦賀に来航したときに、浦賀奉行所の与力中島三郎助応対した様子を記した報告書の写しがあります。 
 アメリカ側は幕府高官にしか会わないといわれたが、それでは来航の趣旨がわからないと説得し船の副官と面会する。さらに役職を偽りアメリカ側に告げ、翌日にはもう一人の与力も役職を偽り応接に当たったそうだ。ペリーの遠征記にはそんな中島をずうずうしく、せかせかし粗野ででしゃばりだと評価したそうです。
 また、日米和親条約締結のときに自分たちが理解できない英語の条約文へのサインを拒否した林大学頭のエピソードは、新しい時代が幕を開ける瞬間の緊迫感が伝わってきます。


 一方で興味深かったのが、この時代の情報の入手方法とその情報の処理の仕方です。
 展示されている資料に阿蘭陀風説書があります。これは鎖国中にオランダ船から海外情報を入手して江戸に伝えたものです。資料には1794年のヨーロッパの情勢を伝えています。
 さらに日本人が描いたペリーの肖像画や瓦版が多く展示されていました。これらの絵は誇張や製作者の想像をふんだんに使われ表現されています。例えば目が釣りあがって鼻が突きで真っ赤な唇をした天狗の顔を持ったペリーや極端にたれ目で迫力のないコミカルなペリーなどがありそもそも本人に似せて表現しようとは思ってはいないかのようです。当時の日本人がどのようにペリーらのことを受け止めていたのかを表しています。
 このように当時の情報は人づてに伝わるので、それを受け取った人が信じるか信じないか、あるいは情報を受け取ってからどのような想像を加えるのかはその人しだいなので、人と人との関係は現在とは考えられないほど濃密なものとなっていたのでしょう。

 その他の見所はペリーと同行して来日していた画家の風景画です。当時の日本の姿が写実的でなおかつ美しく表現されています。

 展示を見れば見るほど調べたくなるような出来事に出会います。異国船打ち払い令を発布した理由や、後に函館で死ぬことになる中島三郎助の人生はどのようなものだったのか知りたくなりました。


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