ぶらり旅スローライフを楽しむ

牛めしの松屋が「弁当専門店」に手を出す事情 コロナ禍で外食大手が中食事業に本格参入

2021/09/14 06:00


牛めしの松屋が「弁当専門店」に手を出す事情
(東洋経済オンライン)

日本の空の玄関口「羽田空港」からほど近いエリアにある、京浜急行電鉄の糀谷(こうじや)駅。駅前には商店街が広がり、下町風情が漂う住宅街だ。そんな糀谷駅の中央口から1分ほど歩くと、「松弁KITCHEN」と書かれた青い看板が見えてくる。

松弁キッチンは、牛めしの「松屋」やとんかつの「松のや」などを運営する松屋フーズホールディングス(HD)が手がける弁当・総菜専門の新業態。オープン初日となった9月6日は、小雨が降りしきる中ではあったものの、近隣に住む主婦や年配の人たちが物珍しそうに店内の様子をうかがっていた。

1店舗に3業態が同居

松弁キッチン糀谷店は、松屋と松のやの2ブランドが同居した「複合店」に併設されており、両ブランドの「コラボ商品」を展開していることに大きな特徴がある。

糀谷店の場合、松屋定番のおかず「牛焼肉」「カルビ」「厚切り豚」「牛皿」の4種類、松のやで人気のおかず「ロースかつ」「唐揚げ」「ささみかつ」の3種類、計12種の組み合わせを「オリジナル弁当」(500円、税込み以下同)で販売。松屋の牛めし並(380円)、松のやのロースカツ定食弁当(590円)など、通常店で販売している弁当メニューも取り扱う。



1号店の糀谷店では、松屋と松のや両方のおかずを使用した弁当を提供している(記者撮影)

松屋フーズHDは店舗売り上げの最大化を狙い、1店舗に2業態が同居する複合店戦略に力を入れている。2019年11月に1号店を投入して以後、店舗数は徐々に増加。足元の2021年8月時点では、全店の1割弱にあたる約90店にまで拡大している。

当面、松弁キッチンはこうした複合店に併設するケースが基本となるため、1店舗で3業態が同居することとなる。糀谷店のような「松屋×松のや」業態に併設するパターンだけでなく、カレー専門業態の「マイカリー食堂」と松屋の複合店に併設するパターンも視野に入れる。

主な展開エリアはテイクアウト需要が見込め、夜間人口も多い郊外や住宅街。もともと松屋は都心店が多いため、コロナ禍でも、比較的客足の落ち込みが少なかった郊外エリアの強化という観点からも松弁キッチンが担う役割は小さくない。

今後は既存店の改装による増設と、新規出店両方のパターンで推進していく。具体的な店舗数の計画は未定としながらも「(松弁キッチンが併設できるような)候補店舗・立地はかなりあがっており、可能性があればいっきに拡大することもありうる」(松屋フーズ販売企画部の浜野隼氏)。

「男性客」以外も取り込む

「持ち帰り需要の訴求」という狙いだけでなく、松弁キッチンには中長期を見据えたさまざまな狙いがある。

1つ目は、将来的な単店での出店だ。松弁キッチンは約3坪と小規模であるため、駅ナカや商業施設などこれまで松屋フーズが出せなかったような立地に出店できる可能性を秘める。



今後は「松屋×マイカリー食堂」などの複合店に松弁キッチンを併設するパターンも(記者撮影)

だが、いきなり単店で出しても、ブランド力が足りず店舗網を広げるハードルは高い。そのため、知名度がすでに確立されている松屋や松のやなどのブランドに併設することで認知度をあげた後、将来的には単店での展開もにらむ。

2つ目が新規顧客の囲い込みだ。「男性の個人客」が多いイメージの牛丼業界だが、顧客層を広げるために大手3社はさまざまな策を打つ。

先を行くのが、最大手のすき家だ。従来ファミリー客でも気軽に利用できるように、テーブル席が多く、子供向けメニューも充実している。吉野家も、ソファやテーブル席を充実させたカフェのような内装の店舗への改装を進めるほか、ポケモンとコラボした商品「ポケ盛」を投入するなど、女性や家族客などの取り込みに力を入れる。

松屋も同様に店舗の改装や、ライスを生野菜に変更できる「ロカボチェンジ」などの施策を打つものの、ファミリー客や女性客を対象とした施策が競合に比べて遅れているというのが実情だ。

弁当専門店である松弁キッチンには、松屋が得意とする20〜40代の男性客だけでなく、女性、高齢者、ファミリーといった幅広い客層を見込む。「松弁キッチンで、松屋と松のや両方のメニューが混在する『オリジナル弁当』を注文してもらい、そのおいしさを知ってもらえれば、今度は店舗の方に足を運んでもらえる」(浜野氏)。

外食企業の中食参入が相次ぐ

時間短縮営業や休業要請の長期化により、外食業界が苦戦を強いられる一方、弁当・総菜専門店市場は底堅く推移している。

市場全体の売上高は、コロナ影響のなかった2019年の月次と比較しても、2021年5月は4%増、同6月は1%減、同7月は1%増だった(市場調査会社エヌピーディー・ジャパン調べ)。販売チャネルの多角化という観点からも、中食への本格参入を果たす外食企業は増加の一途をたどる。

定食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスは、2021年2月末に同社初の総菜小売業態「大戸屋 おかず処」を投入。西武池袋本店やそごう横浜店への催事での出店を皮切りに、さまざまな立地で実験を続けている。

「てんや」「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングスもフローズンミール「ロイヤルデリ」の売り上げ拡充をもくろむ。てんややロイヤルホストでの店頭販売に加え、自社のネット通販、百貨店での展開に力を入れる。2020年度に3億円ほどだった、ロイヤルデリの売り上げを、約3年で40億〜50億円にまで引き上げる構えだ。

コロナ感染拡大当初の2020年前半は「巣ごもり需要は一過性のもの」と切り捨てる企業も多かったが、コロナ禍が想定以上に長引くなか、本格的に中食での事業化を見据える外食企業は後を絶たない。内食・中食・外食の垣根が低くなるなか、胃袋をつかむ闘いは熾烈化を増すばかりだ。

著者:中尾 謙介


ブログ村ランキングに参加しています
バナーをクリックして応援お願いします
PVアクセスランキング にほんブログ村


おすすめのサイト


☟一日一回クリックして応援お願いします☟

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「気になるNEWS」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事