死の練習 前田ふむふむ
所要により月一回
西日暮里に行っている
それ自体は楽しいことなのだが
途中 JR王子駅を通過する
そこには
母が臨終を迎えた病院がある
王子駅に電車が止まるたびに わたしは母を何度も殺している
「王子、王子です」
母の記憶が
きつい痛みとともに 全身の毛穴から
真夏の炎天下の汗のように溢れだす
こうして
わたしは行きと返り
母を二度殺して
わたし自身も二度死んで 二度生まれ変わるのだ
遠く空をいく鳥も
悲痛な声で鳴いている
だが
それはわたしの身勝手な感傷にすぎないだろう
本当は
滑稽だと
抱腹絶倒して笑っているかもしれないではないか