二択で「ベイビーブローカー」にしようか。「こちらあみ子」にしようかと迷いましたが正解でした。
これはすごい。一言では表現できない面白さ。中にはホラーだという声もありますが、いえいえ、これは、あみ子という独立国家を持った少女の成長物語です。
家族はごく平凡で、暮らし向きも普通。
確かに継母ではあるけれど、きちんと手順を踏んで結婚し、二人の子ども、兄孝太とあみ子の母として懸命に努める尾野真知子の演技、良かったなあ。
父役は井浦新、もうハマりにハマった役所。妻が死産のショックから立ち直ろうと頑張っている最中に、あみ子の真っ正直な優しさで墓標を作るという行動に傷つき崩れてゆく。その妻を支えきれず、奇異な行動ばかり繰り返すあみ子を叱る事もでき
ず、兄孝太が非行に走るのを止める事もできない。弱いけど全ての重荷を背負っている気の毒なサラリーマン。井浦さんの優しさ、繊細さが滲み出ている。
あみ子はどうみても発達障害なんだけど、
作品では障害という言葉はなく、「困った」というセリフもない。
普通学級にいながら、居場所はなく、唯一優しくしてくれるのりくんをリスペクト。
でも、のりくんは内心迷惑してるのがありありと見える。
発達障害を理解して的なメッセージ性はなく
悲惨な状態、負のスパイラルに陥っていく家族を描きながら、解決の兆しも全く感じられない。
行動が奇異で集団の中で浮いている五月雨不登校のあみ子、病んだ母親、疲弊して無気力な父親、坂道を転がるように突然ヤンキー化する兄。
障害と病、非行、不登校、ゴミ屋敷化し、健全な生活習慣を失った不幸な家族の物語?
いえいえ
結果として、家庭は崩壊。あみこはおばあちゃんちに預けられる。
最後のシーンは希望というか、あみ子なりに飛躍を遂げようとする兆しが見られる。
幸せの形はそれぞれ違う。こころの在り方も。
とても興味深い作品と出会えました。