天若日子の妻・下照比売の哭く声、風の【与(むた)】響きて天に到りき。これに天在(あめな)る天若日子の父・天津国玉神、その妻子聞きて、降り来て哭き悲しみて、そこに【喪屋】を作りて、【河雁(かはかり)】を【きさり持】とし、鷺(さぎ)を【掃持(ははきもち)】となし、【そに鳥】を【御食人(みけひと)】となし、雀を【碓女】となし、雉を【哭女】となし、かく行ひ定めて、日八日夜八夜(ひやかよやよ)を【遊びき】
★与(むた)
、、、のままに
、、、と共に
★喪屋
葬儀を行うまで死体を納めておく小屋
★河雁
河のほとりの雁
★きさり持
持傾頭者
葬儀の時、うなだれて死者に供える食物を持つ役目
★掃持(ははきもち)
葬儀の時、ほうきを持つ役目
★そに鳥
かわせみ
★御食人(みけびと)
死者に供える食べ物を作る人
★碓女(うすめ)
米つき女
★鳴女(なきめ)
葬儀の時、号泣慟哭する役目
★遊びき
死者の魂を呼び戻すための歌舞
■天若日子に死なれた妻の下照比売の泣く声は、風の吹くままに響いて高天原まで届いた。すると天上にいる天若日子の父・天津国玉神とその妻子がその声を聞いて、高天原から降りて来て、泣き悲しんで、すぐに喪屋を作り葬儀の儀礼に奉仕する役目として
雁を持傾頭者(きさりもち)とし
鷺を掃持(ははきもち)とし
川蝉を御食人(みけびと)とし
雀を碓女(うすめ)とし
雉を哭女(なきめ)とし
それぞれ、役目を決めて八日八晩の間、死者を弔う歌舞をした