厨房の 冬菜茹でて 睫毛濡れ <殿>
教会の 人なき聖夜 紙の星 <殿>
玻璃の星 駅の聖樹に きらめきて <殿>
しぐれ坂 のぼり尽くして 茶房の灯 <殿>
凍て玻璃に 妖精描く 葉紋かな <殿>
マスクして 目<もく>す瞳は 饒舌に <殿>
バニラ香に 欠伸止めたり 石蕗の花 <殿>
凍て風や 首筋かすめ 富士の嶺 <殿>
鎌倉の 迎えし星に 襟立てる <殿>
山小屋の 釘打つ音に 山眠る <殿>
姫といふ 山茶花濡れて 艶やかに <殿>
乃木坂の 陽だまり眩し 冬紅葉 <殿>
西伯利亜の 蒼き土産か 龍の玉 <殿>
眩しさは ジュラ紀の色か 銀杏舞う <殿>
玄冬や 荒ぶる灘の 劔崎 <殿>
陽だまりに 心奪われ 日向ぼこ <殿>
朴の葉の 栞<しおり>砕けし 冬はじめ <殿>
天破り 神に奉ずか 百舌の贄 <殿>