京ことばと生活の知恵

暮らしの中の京ことばは、生活形態や街そのものが大きく変ったことで、多くが消えていったことは否めない。

<<ごきんとはん>> 京都人がこだわる「位取り」の心理

2007年09月22日 | Weblog
             
          
「ごきんと」は御金当の文字をあてた言葉らしおす。

義理堅いお方や礼儀正しい人に向けられる言葉どす。

この言葉も京独特の曖昧模糊なもの言いに使われることがあり、ほめ言葉であ

ったり、場面や声の調子、表情によって、皮肉めいた批判の言葉になったりし

ます。

千年の都であった京都には、多様な人々が小さな盆地にひしめき合い暮らして

きました。

京の象徴といわれる間口の狭い町家という家屋を、さらに格子戸で遮った閉鎖

的な家を、美しい檻(おり)に住んでいると言った方がおいやしたとか?

この閉鎖性も、幾多の戦乱や度重なる権力者の交代を経験した先人たちの知恵

から編み出された様式で、戦禍や火災から身を守り、自らが檻に閉じこもって

身を守り、奥行きの長さで、公道へは声が漏れないように工夫されたようどす。

今日は自分より下位の人でも、明日は上位の人になることも考えられる都で、

どう転んでも無礼のないよう、申し開きができるような習慣や言葉が育ったと

しても不思議やおへん!

勝たないまでも、決して負けないこの町独特のもの言いは、いつ上位に立って

も自らの誇りに傷がつかず、威厳を保っていられる言葉の知恵で、京都人が何

よりこだわる「位取り」の心理です。

「ごきんとはん」は借りを作ったことで自らの立場が弱くならないようにとい

うとことから生まれた言葉のようどす。

「先日お借りしました傘、お返しにあがりました」

「それはそれは、ごきんとはんなことで。おついでで、よろしおしたのに」

また用事も無いのにしょっちゅうやってくる客には「あんたはんも、ごきんと

はんなことで」といわれると、それは皮肉どす。

さりげない日常会話の中にも、互いに対等であろうとする「ごきんとはん」

精神が息づく町。京都へ、一度おこしやしておくれやす。




1 コメント

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こんな事も (金剛鈴治)
2017-09-24 20:29:13
こんにちは、と会釈すると「宜しかったら、お茶でも」の言葉だったので断るのもと思い「それでは」と中に入らせてもらったのですが、一向にお茶等出てきませんので「長いこと、休ませてもらって」有難う御座いました。と出てきて会社に帰り出来事を言うと皆に笑われました。それは愛想やと。
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